(12)神の名前
TUEEEにしないという縛りは、一体何時まで守られるだろうか。
旧礼拝堂まで戻る前に、新しく物置となった部屋に寄ってみた。
大人なら身を屈めて、体格が良ければ更に体を斜めにしないと入れない旧礼拝堂に入れていた物だから、大きな物はここには無い。
ただ、絵を入れておくには丁度良かったのか、絵ばかり何十枚も運び出されている。
絵以外の物となると、それこそ手提げ袋に入れられたまま補完されている謎の物体で、言ってみればがらくただった。
でも、そのがらくたの中にこそ、お宝は埋もれている物である。
「お嬢様? 怪我をしてはいけませんから手袋を――って、こんな可愛いお手々の手袋は無いわね。何か見たい物が有れば私に言って下さいね」
メイド達は丁寧に喋っているつもりでも、結構大雑把だ。そこら辺は侍女のシオンとは流石に違う。
まずは興味の薄い絵から見ていこうと思って、ちょっとした違和感に首を傾げる。
例えば古い本の詰まった書庫なら目が痛くなってくるのに、此処ではそんな感じがしない。変な匂いも余りしない。
絵の木枠を見る。
「……腐って無い」
「ん? ああ、カヌレよ。カヌレは生活魔法が使えるから、時々魔法を掛けていたみたいね」
おー、と後ろに付いて来ていたメイドさんを見上げたら、何故だかにこりと微笑まれた。
絵の隙間から覗いてみれば、大体似た様な絵が多い。
館、館、湖、更に館。
もしかしたら、館で無くて城なのかも知れない。
「多くの絵に先々代のシャーチ様のお名前が入ってましたわ。シャーチ様は絵がお好きでしたのね」
「そうなの? それなら送って上げたら、喜んで下さるかしら?」
そんな事を話しながら、一通り見て回る。
いい絵も有ったけれど、館の中に飾られている絵の方がいい。きっとあれもシャーチお爺様の作品なのだろう。
そしていよいよ本命のお宝。手提げ袋に入っているから中身の分からない本気の福袋。
さてさて、ちらりと見えていたのはどれだったか――
「これ。――うん、これこれ」
「なぁに? 青い硝子瓶?」
「そう、これ何?」
「え~? え? 中身入り!?」
そう、目の端に映って気になっていたのは、アニメでお馴染みだった治癒ポーションの小瓶だ。
アニメの舞台とは別の地域の筈なのに、同じ小瓶なのが謎。本当に治癒ポーションなのかも謎。そして消費期限が切れているのかいないのかも謎だ。
魔物を斃してドロップアイテムが出るのなら、遠く離れた地域で同じ品物が出回る事も納得出来るが、この世界はそうでは無い。
もしかして薬師や錬金術師の職に就いたなら、小瓶の作り方も頭にインプットされたりするのだろうか。
確かめるのは後のお楽しみと思いつつ、兎に角他とは選り分けておく。
他には魔力を帯びている品物も。きっと親魔率百パーセントな私だから、そういうのは見るだけで分かるのだ。
ちょっと直せば使えそうな道具も取り置いて、全部纏めて置いておく。
「プルーフィアのだからね」
そう言うと、メイドさんがにこにこしながらお辞儀した。
任せてしまって大丈夫だろうし、駄目だったとしてもがらくただ。
私は今度こそ、旧礼拝堂へと足を向けたのである。
そして旧礼拝堂。新しい倉庫の様子から分かっていたけれど、既に置かれていた荷物は全て運び出されていて、何人ものメイド達が掃除をしている所だった。
前室を通り抜けて、狭い入り口から旧礼拝堂に入る。
ボーイ達は外から窓に打ち付けられた板を剥がしている。サッと光が差し込んで、板を抱えたボーイと目が合った。
旧礼拝堂は、元々礼拝に使われていただけ有って、丸くてとても雰囲気の有るいい部屋だ。
ちょっと首を傾げてしまうのは、真南の一角だけ壁に凹みが有って、恐らく其処に神像でも祀られていたのだろうという事。
この配置だとララィラーラ様にお祈りする感じになっちゃうけど、太陽神ララィラーラ様にお祈りするなら建物の中じゃ無くてお庭の方がずっといい。
だから、一体誰にお祈りしていたんだろうと、そこがちょっと気になってしまう。
太陽神ララィラーラ様。お祈りをするのは、太陽が一番高く昇った時。
月神ルーナ様。お祈りを捧げるご神体は、丸い鏡を持った女神像。お祈りを捧げるのは月が見えてるその時間。
星々の神リンディラ様。リンディラ様はベールを付けた帽子付き。ドレスには小さな粒々を鏤めて。お祈りを捧げるのは星が見えてるその時間。
大地の神レゾフォス様。粘土を捏ねて造るのは、筋骨隆々の男神。お祈りを捧げるのはいつでもいい。
虚空の神ロシュト様。ロシュト様は名前だけしか出て来なかった。だから何も分からない。でも商売の神シムビス様が授けてくれる虚空庫は、その名の通りロシュト様のお力だとか。何とかお供え物を捧げたい。
この五柱が最上位の神様達。ラリルレロの神様なんて言われていたね。
そしてこの下に数多くの身近な神々が居る。
職能の神エリーン様。十二歳になったら、職能の祝福を授けてくれる女神様。子供を働かせるなんてとんでもないと思っている神様。分厚いメモ帳とペンを手に持っている。
商売の神シムビス様。生産を司る神様でも有って、色んな道具を身に付けている。鑑定や虚空庫の祝福を授けてくれるけれど、虚空庫はロシュト様のお力らしい。
昼の神ラス様と夜の神ルン様。この神様達は両手を繋いだ輪の中にこの世界を入れて、いつでも仲良く世界を中心に踊ってる。それなのにルン様は時折邪神扱いされたりと、誤解の酷い神様達。
生命の神エイラール様と豊穣の神レジム様。動物と植物の生命力を司ってる。エイラール様は女神でレジム様が男神。レジム様は収穫した野菜や果物のお供えでいいけれど、エイラール様にお肉は嫌がられる。ミルクやチーズを供えよう。
鉱物の神グロム様。何故か鶴嘴を持っているから、坑夫の神なのかも知れない。ドボルグ達に崇められるドボルグのような姿の男神。勿論神像は鉱物で。
知識の神ロッシェ様。辞典を片手に持ち歩いて、何時の間にか図書館の中に現れて、助言をしてくれたりする男神。神像を作る時は古木でね。
森の神レラ様と草原の神リーヌ様はちょっと毛色が違うかも。もしかしたら土地神扱いかも知れなくて、此処の魔境には別の神様が居るかも知れない。海や湖にも神様が居ておかしくないのに、その名前が出て来ないから、きっとこの推測は当たってる。
此処までは、ロシュト様を除いて人の姿を取って現れるとも言われている神様達。
そして此処からは属性神と呼ばれている神様達だ。
人の姿を取って現れても、それは人形の燃える炎や渦巻く風であり、高位精霊と間違えられる事も有る。そんな神様達。
魔の神シャフ様。ギラギラとした光の姿で現れるらしい。魔法で言う無属性は純粋な魔だから、魔属性と言っている地域も有るのだとか。
死の神フォス様。灰色の霧や影となって現れるらしい。恐ろしい力を持ってるが、優しい神様だった筈。そこでの生を終えた魂を別の階梯へと誘う神。
火の神ボロム様。火の他にも激しい何かはボロム様の管轄ね。
水の神スイラ様。水の他に感情も司るのは、姿形が環境次第で変わるからかも。
土の神ムドー様。土と言うより、固体がほぼムドー様の領域。
風の神フルム様。風と言うより流れかも。流れる物はフルム様。凪ぎも当然フルム様。
光の神ジラー様と闇の神ロアン様。この二柱はかなり怪しい。ジラー様にしか伝えていない事をロアン様も知っていたりする。ジラー様を裏返しにすればロアン様が出て来るかも。どちらも幻も司っているのもそう思わせる。
雷の神ディーン様。祈りを捧げる事すら命懸け。雷雨の中で頭だって上げたく無い。お供え搬入用の地下道でも掘ればいいの?
他にも居るかも知れないけれど、原作で出て来た神様はこんな所。
王国記では偉大なる神とは言ってたけど、神の名前は出て来なかった。
この国に伝わる聖神ラーオ様は、十二歳の子供達に職能を与えて、治癒や豊穣も司って、罪人に雷で裁きを与える神。
そんな神様、私は知らない。
私はそんな神様、聞いた事なんて無い。
一話三千文字って、実は滅茶短い? 何も書き込め無い様な気が……。




