壁にミミアリ
暗がりの一室。木々に無料で泊まっている蝉さえも、暑さで上手く寝付けないような蒸した深夜二時。
そんな七月の終わりに、扇風機ひとつ回さず、とりもちでも引っ付いたかのように微動だにしない男たちがいるのを、ミミアリは木の上の死角部分から、蝉と共に確認した。
ここは、街から離れたところにある大きな山。その山中に、ぽつんと小屋が建っている場所だ。
この小屋は以前、観光客が少なからずいた頃に造られた観光客のための休憩所である。と言いつつも、小屋自体そこまで大きいものではなく、さらに、室内には簡易的な椅子とテーブル、後は申し訳程度の室内灯と、扇風機しか備え付けられていなかった。
従って、観光客が来なくなった後は、山登りのためにこの小屋を利用する者はいなくなり、その代わり、夜な夜な若いカップルがここを訪れて、愛を確かめるための休憩所として利用されるようになってしまった。
もちろん、役人がその情報を聞きつけて、すぐに立ち入り禁止にしたのだが、費用などの関係で取り壊しは行われなかった。
そして今では、街に蔓延る悪い者たちの密会場所として利用されているのだが、その恐ろしい事実を、一般人はもちろん、役人も知らない。
いや、それとも……
ミミアリは、男たちに動きが起こるまで、ただひたすら待つことになる。
見聞色の覇気でメイウェザーのパンチ避けたい