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第3話 お前の強さ、俺に見せてみろ!

 その三日後、やる気のない実結はシルバードラゴンに引っ張られて、第二エリアの学園の近くに来ていた。

「じゃあ、ここの守護竜を連れてくるから。ペンダントまで解放して、この前よりも大きめの結界を張って待ってて」

 実結はため息をつきつつも頷くと、シルバードラゴンは人の姿に化けて、学園の中に入っていった。

 シルバードラゴンが学園の中に入ってから五分後、結界の中で待っていた実結のもとにシルバードラゴンともう一人、学生の姿をした男がやってきた。金髪に翠の瞳の男で、彼がおそらくゴールドドラゴンだと察せられた。

「―――おい、お前が俺のところに来るなんて珍しいと思ったら、なんだこのガキは」

 ゴールドドラゴンの鋭い眼光に、実結は思わずびくっとする。見た目も態度もまんまヤンキーだ。普通に怖い。

「おととい、夢の中で言ったでしょ? 私と契約してくれた子だよ」

「ああ、そういえば言ってたな……って、まさか、このガキと二重契約しろって言うのか!?」

 ゴールドドラゴンが実結を指さして大声で言う。その顔は心底あり得ないと言った表情だ。

「うん。君の主も、魔力がもう限界だろう? だから、この子と契約して―――」

「ふざけんな! 誰がこんなどこの誰かも分からない奴と契約しなくちゃいけないんだ!」

 シルバードラゴンの言葉を遮り、ゴールドドラゴンは怒鳴る。

「俺が認めたのは、今の主だけだ。あいつが死ぬまで他の奴と契約なんて絶対にしねぇ」

 ゴールドドラゴンの言葉に実結は、彼がただ口が悪いだけのドラゴンではないと分かった。彼は自分が認めた者を一途に大切にしているのだ。そういう性格の者の心は、簡単には変えられないだろう。諦めた方がいい―――。

「ならやっぱり、戦って認めるしかないね」

 契約を諦めようとした実結の思考を遮るように、シルバードラゴンが言った。

「え?」

「あ?」

 実結とゴールドドラゴンの声が重なる。

「君とミユちゃんが戦って、この子が君の契約者にふさわしいと思えば、ミユちゃんの勝ちってことで、いいんじゃない?」

 シルバードラゴンの言葉に、実結は戸惑う。ここでゴールドドラゴンが断る可能性もあるのに、さすがに無理なのではないだろうか。

「分かったよ。ぶつかり合った方が俺の性に合うし、お前の提案に乗ってやるよ」

 ゴールドドラゴンの返事に実結は驚く。思ったよりも物分かりがいいのか。いや、ただ好戦的なだけかもしれない。ドラゴンは元々、好戦的なのが多いし。シルバードラゴンはちょっと変わり者だが。

 ゴールドドラゴンが準備運動をしている間に、シルバードラゴンが実結の傍に来て、耳打ちする。

「……一応アドバイスなんだけど、防御は出来るだけしないで、攻撃は攻撃で相殺した方がいいよ。大丈夫、君の実力なら、彼もきっと認めてくれるから」

 そう言うとシルバードラゴンは、実結に軽く手を振って送り出す。実結はシルバードラゴンの言う通りにすることにした。彼はゴールドドラゴンとの付き合いも長い。きっと誰よりも彼のことが分かっているだろうから。

 実結がゴールドドラゴンの正面に立つと、ゴールドドラゴンは人型からもとのドラゴンの姿に戻る。

〈さあ! お前の強さ、俺に見せてみろ!〉

 そう言い放ち、ゴールドドラゴンは実結に向かって口から炎を吐きだした。

火炎(フラマ)!」

 実結も炎魔法を放ち、ゴールドドラゴンの炎を相殺する。同じ威力の炎がぶつかり合い、熱風と共に炎が空中で消える。

〈そんなもんじゃねえだろ!〉

 そう怒鳴り、ゴールドドラゴンは再び炎を吐きだす。

火炎(フラマ)!」

 そして実結も同じ炎魔法を放って、ゴールドドラゴンの炎を相殺する。だが、同じ威力の魔法で相殺し続ける実結に、ゴールドドラゴンは更にイラつく。

〈どうせあいつの入れ知恵だろうが……勝とうって気力が()えのがムカつくんだよ!〉

 ゴールドドラゴンはそう怒鳴ると、結界ぎりぎりの上空に巨大な火球を放つ。それは一瞬で弾けると、一メートルくらいの大きさの火の玉となって、流星のように降り注いでくる。

連撃(ムータ)()火炎(フラマ)!」

 実結は連射の炎魔法に変えて、降り注いでくる火の玉を一気に相殺させていく。連続で炎が相殺されていく中で、結界の内部は炎を消した影響により煙で視界が悪くなる。

〈―――勝つ気が無え奴は、ここで散れ!〉

 煙で姿を隠していたゴールドドラゴンが、実結の前に突如現れ、前脚の鋭い爪を振るう。

業炎(イグニス)!」

 先程のものより威力の高い炎魔法がゴールドドラゴンの前脚に当たり、ゴールドドラゴンがよろめく。

「もう一度……業炎(イグニス)!」

 よろめいたところに、実結はゴールドドラゴンの体に巨大な火球をぶち当てる。ゴールドドラゴンはそのまま音を立てて地面に落下する。土煙がゴールドドラゴンの姿を隠し、彼がどうなったのかが分からない。

 実結はすぐに魔法を撃てるようにしている。こちらは元々、ゴールドドラゴンを殺そうとは思っていない。彼の性格からして、まだ反撃してくる可能性は高い。警戒しながら土煙が消えるのを待っていると、土で多少汚れているものの、無傷のゴールドドラゴンがそこにいた。するとゴールドドラゴンは、大きな声で笑いだす。

〈はっはっはっ! お前もやれば出来るじゃねえか! 勝つ気がないとか言って、悪かったな!〉

 ゴールドドラゴンから既に敵意は消えていて、もう戦うつもりはないことが分かると、実結はゴールドドラゴンの傍に降り立つ。するとゴールドドラゴンは、実結に向かって、右の前脚を差し出した。

〈お前と契約してやるよ。ほら、さっさと済ませちまえ〉

 実結は頷くと、右手でその前脚に触れながら、契約の呪文を紡ぐ。

「我、白菊実結を主とし、汝と今ここに契約を結ぶ……」

 その直後、目に見えない糸のようなもので、実結とゴールドドラゴンは互いに繋がれたように感じる。

〈よし、終わったな〉

 そう言うとゴールドドラゴンは再び人の姿になった。ドラゴンの姿の時もだいぶ大きかったが、人の姿でも百八十センチ以上はあるだろう。実結はゴールドドラゴンを見上げながら言った。

「これからよろしくお願いします、ゴールドドラゴンさん」

 その呼び方に、ゴールドドラゴンは眉を寄せる。

「それじゃあ長いだろ。俺のことは、“黄金(コガネ)”って呼んでくれ。それに敬語もやめてくれ。他人行儀であまり好きじゃねえんだ」

「……えっと、じゃあ、よろしくね、コガネ」

「おう!」

 実結の言葉にコガネは満足そうに頷く。すると、シルバードラゴンが実結とコガネに近づいてきた。

「ミユちゃん、お疲れ様。ちゃんと契約できたみたいだね」

「はい、なんとかなりました」

 そんな会話をしていると、コガネが割って入ってくる。

「俺には言ってくれないのかよ。まあ、お前はそういう奴だったな」

 そこでコガネはあることに気づき、実結の方を見る。

「まさか、こいつのことも“シルバードラゴンさん”って呼んでるのか!?」

 実結は曖昧に頷く。正直に言って、彼と話す時は二人きりだったので、“あなた”としか呼んだことがないのだが。

 コガネの言葉にシルバードラゴンは大方のことを察する。

「そういえば、呼び方に関しては何も言ってなかったね。じゃあ、これから私のことは白銀(シロガネ)と呼んでもらおうかな」

 シロガネに言われて実結は頷く。

「はい、分かりました。シロガネさん」

「敬語は変わんねえのかよ!」

 そんなコガネのツッコミが、結界の中で響いた。


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