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第27話 もちろん止めます

 人工的な特級(とっきゅう)。疑似特級。人体実験をしてそんなものを手に入れる理由として、実結(みゆ)の頭の中に浮かんだのは、本物の特級への対抗手段だ。

 約三百年前の事件によって、特級は犯罪管理局からは特に危険視されている。それに最近は、彼らの自業自得ではあるが、キラシャの第一犯罪管理局の管理官達は、特級によって全員殺された。だから、特級への対抗策として、疑似特級を作ることは、あり得ない話ではないだろう。

 それを(なつめ)に言うと、彼は頷く。

「それもあるでしょうね。ですが、他に大きな理由があります」

「大きな理由、ですか?」

 実結の言葉に棗は頷き、答える。

「犯罪管理局は、()()()()()()()()()()()を皆殺しにしようとしているのです」

「え……」

 想像していなかった答えに、実結は絶句した。

 この世界に初めて来た時、ルーに魔族について教えてもらった。魔族は大きく分けて、動物の姿をした魔物種と、人型の魔人種が存在していて、人間と契約するのは魔物種がほとんどだ。

 魔人種が人間と契約しない理由として、一つは魔人種の方が人間よりも魔力が高い場合が多く、そもそも契約が出来ない。次に、魔人種のほとんどが人界に行かず、魔界で暮らしているから、人間に会う機会が少ない。そして、魔人種の多くは人間を劣等種と見下していて、契約するような対等な立場になろうと考えていないからだ。

「千年も前の話になりますが、過去には魔族と人間で戦争もあったようです。その時は和睦(わぼく)という形で終結したらしいですが、もしかしたら、和睦は表面上だけのものだったのかもしれませんね……」

 棗は淡々と呟く。だがそこには、微かに呆れと怒りが籠められていた。

「それで、棗さんはどうするんですか?」

 あくまで管理官として、彼らのやっている、やろうとしていることに目をつむるのか。それとも非人道的なことだと、彼らを止めるのか。

 実結としては、止めた方がいいと思っている。

 戦争では戦っている者だけでなく、戦いに参加していない無力な者達も、数多く犠牲になるのが常だ。相手が魔族だとしても、それは変わらないだろう。

 それでも今はまだ、自分は部外者だ。棗にどうこう言える立場ではない。

 実結が返事を待っていると、棗は答えた。

「もちろん止めます。人体実験も、魔族の皆殺しも。僕は戦闘狂ですが、犯罪管理局のやり方は好きになれないので」

 そして棗は続けて言う。

「僕だけでは手に余りそうなので、ミユさんにも止めるのを手伝って頂きたいのですが、よろしいでしょうか」

 実結が大きく頷くと、棗は顔をぱあっと明るくする。

「ありがとうございます! では、もう少し詳しく調べてみるので、今日はこの辺で失礼します」

 棗は軽く頭を下げると、そこから姿を消した。


 魔族の皆殺しを画策していることを知ってから、棗はある疑問を抱いていた。

 犯罪管理局がいくら疑似特級を作ったとしても、魔族の皆殺しなんて不可能ではないだろうか。

 確かに、魔族の。しかも魔人種で人間と敵対している者だったら、ある程度数は絞られるが、それでも目的を達成するのは難しい気がする。だが。


 ―――問題ない。一人だけでも成功すれば、後はこっちのものだ。


 人体実験が失敗した後、こんな声が聞こえたのだ。あの余裕は一体何なのか。

 考えながら犯罪管理局に戻ってきたその時、棗は管理官と誰かが一緒にいることに気づき、慌てて建物の陰に隠れる。

 建物の陰からそっと様子を伺おうとした時、棗は管理官と一緒にいた者の顔を見て瞠目した。

「なんで、ここに……」

 誰にも聞こえない呟きが、風に乗って消えていった。


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