4話 マイウェポン
「おっ!兄ちゃん、いたんだ!昼寝でもしてた?」
ゲームをログアウトしリビングに行くと、寛ぐ弟、二刃がいた。
「いや、ゲームだよ」
「えっ兄ちゃんゲームやってるの⁉︎なんのゲーム?VR?」
「うん、VRだね。災獣のユートピアって言うのやってるよ」
「今話題なやつだよね!学校でよく話題になるよ!紅葉もやりたいって言ってたかな」
「へぇ、紅葉もか」
紅葉と言うのは、二刃と双子の妹だ。今年から高校2年生になる。
高校2年にもなるがまだ落ち着きがなく、子供っぽい二刃とは対照的でとても大人っぽいのが紅葉だ。
まぁ、自分から見れば紅葉もまだ子供っぽい所は、あるけどね。
「そうそう、発売日にお店行ったらもう売り切れてたみたい。予約しとけばよかったって言ってたよ」
「二刃はやらないのか?」
「うーん、来年は大学受験だし生徒会と部活も忙しいからね」
二刃は自分とは違い学校では大変、優秀で生徒会にも参加している。
部活はテニスで成績も良いみたい。
帰宅部でアルバイトに精を出していた自分の高校時代とは大きく違う。
「ただいま」
「噂をすればなんとやらだね!おかえり!」
「ああ、おかえり紅葉」
丁度、紅葉も帰ってきたみたいだ。
「噂をすればって何か私の事を話してたの?」
紅葉は荷物を下ろして、買い物して来たのであろうエコバックに入っていた食品を冷蔵庫に入れながら、話に入ってくる。
「聞いてよ紅葉!兄ちゃんがゲームやってたんだよ!しかも、災獣のユートピア!」
「えっ、それは本当⁉︎」
「本当だよ」
ビックリしてか、慌てた様子で此方を振り返る。
振り返った顔には驚愕の2文字が書いてある様だ。
「予約してたの?」
「いや、大学の先生に貰ったんだよ」
「羨ましい、予約も気づいた時には締め切られてて、家電量販店の抽選にも外れて、僅かな店頭販売も速攻で売り切れて私は諦めたのに...面白い?」
床に手をつきあからさまに落ち込んだ様子。
妹の肩に手をつき慰めて...
「お・も・し・ろ・い・よ」
「何その顔、挑発してんのか!このクソ兄貴!」
今にも血涙しそうな形相なので揶揄うのもこの辺にしておこう。
「絶対、次の増販の時に手に入れてすぐに追い抜いてやるんだから」
「まぁ期待せずに待ってるよ」
「きぃいいいい、その顔めっちゃ腹立つ」
「まぁまぁ、落ち着いて紅葉、兄ちゃんも揶揄うのはその辺にしておきなよ」
その後は母が帰ってくるまで紅葉から質問攻めにあった。
食後、風呂も入り自室に戻る。
早速、ログイン。
ログインした場所は宿屋だ。
「キュイー、キュイー」
「にゃぁ」
そばには、イナバとシロツキが寝ている。
まぁ少し起きるのを待ってみるか。
とりあえず、「メニュー」
プレイヤー情報っと。
名前:ミヅキ
種族:人間族(キメラ亜種)
種族Lv:2
残りSP:24
称号
なし
所持金:2000G
所持スキル数:8
所持アイテム数:8
フレンド数:0
イナバとシロツキの助けもあり角ウサギを5匹討伐し、ギルドに依頼達成の報告をして来た。
討伐の時にレベルが1つ上がりSPを10も貰った。
多いのかはわからんが、まぁこれで新しいスキルを取れそうだな。
所持金が増えているのは、依頼の達成報酬だ。
所持アイテムに関しても角ウサギを討伐した時にモンスターからドロップしたアイテムだ。
で、取得するスキルだが、どうしようか。
取り敢えず今、取得しているスキルは、
残りSP:24
種族スキル
『好奇心』
『合体』
『亜種』
アクティブスキル
『テイム』『料理』『剣術』『水属性魔術』
イナクティブスキル
なし
うーん。ステータスアップ系のスキルにするかな。
いや、ステータスを上げたとしてもたかが知れてるんだよな。
でも後々の事を考えるととっておいて損は無いし。
『水属性魔術』以外の魔術は取ってみても良いが消費SPが29もするから今のSPだと足りない。
そもそも自分の戦闘スタイルが定まってないんだよな。
今の所、自分が敵の正面に立って、イナバとシロツキに攻撃して貰ってる。そうなると自分の防御力を上げて盾役になるな。
ただ自分の切り札は『合体』になる訳で。
イナバやシロツキと『合体』した場合、恐らく速度重視な闘い方になる為、盾を持ってると邪魔になる。
防具も軽めのものが良くなる。
実際に武器とか防具を見てから考えた方がいいかもね。
となると、ちょっと街中を散歩したいんだけど...
「キュュゥイ」「にゃぁあ」
ちょうど良く起きてくれたみたい。
「おはよう。ちょっと散歩しようか」
「キュイ!」
「にゃ」
イナバを頭に乗せ、シロツキを胸元に抱える。
さて、特に目的地もないまま歩き出したんだけどこの街って広いな。
なんとなく適当に1時間ぐらい歩いいて気づいた。この街を丸い円として例えると外側に農家や冒険者、旅商人なんかが多くいる。
簡単に言えば農場や牧場、露店、宿屋なんかが多い感じだ。
少し内側に進むと住民、所謂NPCが多くなり日常で使う様な雑貨屋とか服屋、スーパーみたいな店が多くなる。
更に内側に進むと人通りは少なくなりお金持ちの家や役所っぽい所ばかりになり、良く騎士の格好をしたNPCとすれ違う様になる。
基本的に内側に用があることはないだろうな。せいぜい、ギルドの依頼で行くぐらいだろう。
って事で外側に戻ってきた訳だけど、まだ初日なのに露店を開いてるプレイヤーがちらほらといるな。
露店って簡単に開けるのかな。
特に目的もなくダラダラと歩いていたら一際目につく物を見た。
「あの、これって?」
「いらっしゃい!ああ、これ?素材が余ってたから作ってみたの!武器の性能としてはそこそこだけどね」
その物を置いている露店の女性プレイヤーに話しかけた。
「いやいや、これ武器なんですか?」
「そうだよ」
「えっ?ただの棒なんですけど、、、」
そう、この露店に注目した理由としては自分の身長より長い棒が地面に垂直に立っていたからである。
大体、長さは3mぐらいかな。
それに、棒と言っても先端は少し太くなっていて棍棒みたいな形になっている。
「これは棒だね」
「えっ?」
「うん棒!まぁ、ただの棒だとつまらないから、棍棒とか杖に寄せて先端とかを太めにしたりしてるけどね」
「なっ成る程。因みにこれ使ってどうやって戦うんですか?」
「さあ?槍とか、それこそ棍棒みたいに振り回して使うんじゃない?」
「あーなるほどー」
なーるーほーどー。
「正直、作ってみたくなったから作っただけで使い方とか考えてないんだよね。だから買ってくれた人が好きな様に使えば良いと思うよ。物干し竿として使っても良いし」
自分の微妙な表情に気づいて教えてくれる。
「ちなみに幾らですか?」
「おっ買ってくれるの?」
「いや、値段によっては買わないです」
「そうだな〜正直、売れると思ってなかったし素材も大した物使ってないから、1500Gで良いよ!」
「そうですか。因みに一応、武器ですよね?性能とかって教えてもらえるんですか?」
「えっ⁉︎良いけど。てか、『鑑定』のスキルとってないの?それで武器の性能は見れるよ!」
「便利ですね。でも、今『鑑定』取るとその武器が使用できなくなるのでまた今度とってみます」
そんな便利なスキルがあったのか知らなかった。
短剣を買った時もNPCの店で買ったから普通に教えてくれたから、そういう物だと思ってた。
「騙されたりするから、武器とか防具は自分で鑑定する事をオススメするよ。この武器の性能は攻撃力と重量が5、魔攻が8、耐久値が40かな」
ふむ。攻撃力とは単純に物理攻撃に付加される値みたいな物で、この値が大きければ大きい程、敵に与えるダメージが大きくなる。
重量は単なる重さで値が大きければ重くなり動く速さも遅くなる。
魔攻って言うのが、攻撃力が物理攻撃の時に付加されるのに対して、魔攻は魔法で攻撃した際に付加される値だ。
耐久値は1番、数字としては大きいけど、この数値は敵に攻撃したり攻撃を受け止めたりすると数値が下がる。
耐久値が0になると武器が壊れて消えてしまうので、0にならない様に鍛冶屋とかに行って修理してもらう必要がある。
まぁスキルを取れば自分でも修復できるんだけど、序盤はみんなお店に頼るんじゃないかな。
今持っている短剣の性能は攻撃力が3、重量が1、魔攻が0、耐久値が元は50だったけど今は45になっている。
武器は装備すれば『鑑定』しなくても性能の確認が出来るから、やっぱり『鑑定』は後回しでも良いかな。
「随分と悩んでるけどどうする?買うの?買わないの?」
うーん、性能だけ見ると短剣とは比べものにならないくらい良いんだけど、値段が高いんだよな。
よし!
「買った!」
「毎度ありー」
単純に性能だけで言えば他の使いやすそうな武器で同じくらいの値段の物がいっぱいあったけど、この武器を使ってる人は見かけなかったし面白そうだったから買ってみた。
後悔はない!
「ねぇねぇ、良かったらフレンド交換しない?」
「フレンド交換?」
「そう!交換しておけば相手にメッセージ送れる様になるんだよ」
へぇー、便利な機能だな。
「もし、その武器を気に入ってくれたら、素材とか持ち込んでくれたら、それで同じ形の武器作ってあげるよ」
「えっ⁉︎良いの」
「良いよ!良いよ!私も気分で作っただけの武器の使い易さとか知りたいし」
気分で作ったのか。
まぁ良いやフレンド交換しておいて損は無いだろう。
てな訳で早速フレンド交換を行なった。
「私はネルっって言うの。よろしくね」
「ミヅキだ。よろしく」
その後はネルと別れて夜の草原にやってきた。
早速、武器の使い勝手を試してみたくなったからだ。
スキルは『棒術』を取得した。
まぁ取得しないと武器が使えないからね。
シロツキに敵がいる位置を教えてもらながら進む。
早速いた。
どうやら夜は角ウサギは巣穴に篭っている様で代わりに犬が闊歩していた。
見た感じ犬の方が強そうだな。一旦、イナバとシロツキには待機してもらう。
3mもある棒だからか振り回しづらいな。
それに棒自体が軽量である分、棒がしなる。その分、早く動かせるんだけどね。
よし早速、横薙ぎで先制攻撃や!
「キャン!!」
当たった!怯んでる隙に脳天に振り下ろし攻撃。
「キャゥン」
たった2発で犬を倒すことができた。
幸先いいな。
短剣よりリーチがある分、攻撃を当てやすいし距離がある分、安心できる。
あっ、そう言えばああ言う攻撃もできるんじゃ無いかな。
閃いた。
「シロツキ、次の敵を見つけてくれるかな」
「にゃあ」
「ありがとう」
シロツキの後をついて行くとさっきよりも大きめな犬がいた。
イナバとシロツキには見学しててもらう。
少し離れたところから助走をつけて、棒の先端を地面に突き刺す。
そのままの勢いでジャンプしてポールのしなりを生かして宙に浮かぶ!
そう、棒高跳びをすれば、、、
「うぐ」ズサー。
棒が上手く地面に刺さらず棒が滑り自分も滑る。
滑った棒が偶々、犬に当たり弾き飛ばすことに成功はしたが、その後犬からの猛反撃を喰らった。
イナバとシロツキが助けてくれなかったらまたしに戻ってた。
いけると思ったけどいきなり実戦は無謀だった。
棒高跳びとか一回もやった事無いんだから練習が必要なのは当たり前だ。
てな訳で練習パート。
その後、ログアウトするまでひたすら平原で練習していた。