39話 『錬金術』中級
イベントまで残り3日。
今日は第5の街でお買い物だ。
買い物の目的は『錬金術』に関する本を探す事。
昨日、臨時収入があって今何が欲しいかとなると『錬金術』の本であった。
一応、昨日買った『錬金術』初級の本は既に読んでしまった。
読むと言ってもどんな物がどんな素材で錬金できるかを読んだだけになるが。
御目当てのインクの他にも、ごく一般的なHPポーションや糸、筆、ナイフなどなど小物の錬金なんかが一杯書いてあったが、今の所いらないなって物ばかりだった。
それを読んでると無性に何か次の物を錬金したくなって、本を漁りに古書店に来たのである。
こう言った所に掘り出し物があったりするんだよね。
興味を惹きそうな本が無いか一つ一つ端から確認していく。
「うーん」
小説、料理本、生体図鑑、植物図鑑、歴史書などなど一杯あるが『錬金術』に関する本は見当たらないな。
「何を探してるんだい?」
奥のカウンターの方に座っていたお婆さんが、話しかけて来た。
折角だし『錬金術』の本が無いか聞いてみるか。
「『錬金術』に関する本はありますか?」
「『錬金術』の本は、ここに置いちゃいないよ。初級の本なら普通の本屋でも置いているだろうが、それ以外となると錬金術士ギルドに行くしかないね。まぁ錬金術士ギルドでも閲覧だけで、販売とかはやってないみたいだよ」
売ってないのか。じゃあ、あの本は結構レアだったのかもしれんな。
「ありがとうございます。また来ます」
「あいよ」
お婆さんに挨拶して出る。
錬金術士ギルドによって見ようかと思う。
買えないにしても、情報は手に入りそうだし。
途中いろんな人に錬金術師ギルドの場所を聞いてなんとかたどり着いた。
中に入ると従術士ギルドと同じ様なロビー。
ただ、中は従術士ギルドより賑わいがある様で、数人が雑談をしていたり、掲示板に張り出されているチラシを読んでいる人がいたりする。
従術士ギルドってひょっとして不人気なのか?
ああ、そう言えばギルドに所属する時にそれっぽい事言われた気がするな。
入り口で突っ立っていても邪魔になるだけなので、ロビーの中央にある受付へ向かう。
受付では綺麗いなお姉さんが書類の整理をしていた。
ギルドの受付って綺麗な人しか出来ないのか。
「錬金術士ギルドへようこそ。今回はどう言った御用向きでしょうか?」
ぼーっと考え事をしていたら、お姉さんの方がから話しかけて来た。
「あー、『錬金術』の本があると聞いて来たのですが」
「『錬金術』の本ですか。確かにありますし貸出も行なっております」
お?貸出もあるなら、そんなに気にしなくても問題ないか?
受付のお姉さんは難しい顔をして話を続ける。
「ただ、『錬金術』の悪用は国連で制限されております。その為、『錬金術』の本に関しても錬金術士ギルドに所属している人に対してしか貸出はしておりません」
国連?初めて聞いたかも。
そうなると、自分は『錬金術』を学ぶことができないってことか。
「『錬金術』を学ぶ人が少ないのはこう言った自由度の低さのせいですね。いかが致しますか?」
「自分、従術士ギルドに所属しているのですが、一緒に所属する事は可能ですか?」
「可能ではありますが、条件があります。まずレベルが40以上であること」
うっ40か。今のレベルが28だからめっちゃ先だな。
クラン対抗戦後に4しか上がっていない。
確かに結構、レベル上げをさぼってはいたが、それでもBOSSクラスを何体か倒した。
12レベル上げるのは、暫く先になりそうだ。
「次に職業ギルドのランクが5以上である事です」
職業ギルドのランクか。
確か個人用ポータルを買うのにランクが3以上必要でそこ迄は頑張ったのだがそれ以降、従術士ギルドに行ってないしなあ。
従術士ギルドのランクを上げる条件は、『テイム』している従獣の数とBOSS討伐数とかだった気がする。
ダンジョンのBOSSも含めるのかな?
案外、ランク5なら簡単そうだな。
「最後に先の二つの条件を達成した上で、所属している職業ギルドから依頼される特殊クエストをクリアする事です」
特殊クエストだと?厄介そう。
まぁレベルが全然たりてないから、先の事になるだろうけど。
「じゃあ、今の自分では『錬金術』の本を読む事は出来ないのでしょうか?」
「中級の『錬金術』の本であれば、持ち出し不可という条件で読む事は可能です。上級ともなると閲覧不可ですが、上級の錬金術士に直接、師事頂くといった方法も可能です。寧ろ多くの錬金術士がその方法で『錬金術』を学んでおります」
中級は読めるのか。上級になると誰かに教えてもらうしか無いと。
「ちなみにここ、錬金術士ギルドでも定期的に勉強会を開いております。内容によっては上級の『錬金術』を教えている事もあるので、参加してみるのも良いかと思います。勉強会に関してはあちらの掲示板に貼っております為、ご確認ください」
ああ、ギルドに入って来た時に気になったあの掲示板か。
勉強会か。従術士ギルドには無いシステムだな。
「とりあえず、中級の『錬金術』の本を読んでも良いですか?」
「承知いたいました。用意するので、少々お待ちください」
そう言ってお姉さんは立ち上がると受付の裏にある部屋に入っていった。
中級の本を読んだら掲示板を見てみてどうするか考えようかな。
「お待たせいたしました。こちらが中級の『錬金術』の本です。帰り際にまたここに持って来てください。本を持ったままだと、ギルドからは出られない様になっております」
「わかりました」
そう言って自分は受け取った本を持って、ロビーに点在する椅子に座る。
椅子の前には小さなテーブルがあり、アイテム欄からハチミツ味のポーションを取り出しおく。
本当はコーヒーとか飲みながら本を読めれば優雅なんだろうが、残念ながらコーヒーは買っていない。
早速、中級の本を読み始める。
最初はポーション。ハイポーションについて書かれている。
初級の最後の方のページにもハイポーションについては書かれていたが、中級のハイポーションは作り方が違う。
勿論、作り方だけでなく、HPの回復量、MPの回復量が作成時の配分によって変えられる為、自由度が高い。
その分、工程はほんの少しだけ複雑になっている。
次は糸。初級にも糸の記載はあった。
中級に記載があった糸は魔糸と呼ばれる魔力を纏った糸で、この糸で作った装備は魔術の攻撃力と魔術に対する防御力が上がる。
面白そう。時間があれば作ってみようかな。
次は種子。なんでもこの種子を育てると銀の果実がなる木が出来る。
まさに『錬金術』って感じだな。
次は鉄のインゴット。鉄以外の植物から鉄の成分とか抜き出してインゴットを作り出す。
1番、『錬金術』の基礎になるのかな。
次は成長薬。植物の成長を促進する薬。
これは正直、使わないかな。
次は魔硝子。魔力を含んだガラス。
これに関しては、何に使うのかわからない。
次は動力石。ゴーレム、自動人形、機械の動力源となる石。
魔石がモンスターの心臓なら動力石は機械の心臓っていったところかな。
でも自動人形が気になるな。
自動人形の作り方とかはどっかに記載されてたりするのかな。
次は魔導書。魔術が書かれた書物。
本自体が魔力をおびており、書かれた魔術を開くだけで発動できる。
これはめっちゃ欲しい。何としてでも作りたいが、必要なアイテムがなぁ。
宝石、魔石、革、紙。
必要なアイテム数は少なめだが、魔石が手に入らなすぎる。
魔石って『錬金術』で作れたりしないのかな?
作れそうな気もするけど、それ用の錬金陣が書けない。
錬金陣って規則性とかあるのか?
じっくりと、中級に書かれている錬金陣や初級に書かれた錬金陣を眺める。
どれも共通して書かれているのは大きな丸。
その丸の中に文字や線、図形、記号なんかが複雑に。ただ、なんらかの規則的に書かれている気がする。
このゲームの開発者が、正直ここまでこだわって作っているとは思えないのだが、そうと割り切れない程、この世界は精巧に作られている。
一旦、この錬金陣にもなんらかの規則があると仮定して考えよう。
1番わかりやすいのは同じハイポーションでありながら、錬金方法も効果も違うダンジョンで手に入れた本と比べる事なのだが...
こっちのハイポーションには錬金陣があるのにあっちのダンジョンで見つけた方の本は錬金陣を必要としていない。
あっちは『錬金術』のスキルで使える分解や合成すら使っていない。調合や調薬に近いな。
そう言えば露天商にあのハイポーション売った時に古い製法で作ったとか言ってたよな。
とすると、この初級や中級に書かれているハイポーションの作り方は新しい製法。
もし仮に古い製法と言うのが、分解や合成、錬金陣を使わないやり方とするなら、手作業の部分は分解や合成、錬金陣に置き換わるって事か?
ちょっと飛躍しすぎか?
いや、あくまで仮定として考えてみよう。
初級のハイポーションの錬金陣。
中級のハイポーションの錬金陣。
古い製法で作るハイポーションの工程。
それぞれを比較してみる。
まず、どの製法も使用しているアイテムは同じ。
若干、必要なアイテム数が違ったりしているが基本同じ。
次に初級と中級の工程だが違いはさほど無い。
工程は簡単。
1、アイテムを用意する。
2、錬金陣にアイテムを並べる。
3、錬金陣に魔力を流す。
以上、3行程しか初級には書かれていない。
随分と楽ちん。なんせアイテムを集めて錬金陣を書くと言う準備だけで殆ど何もしない。
中級は1と2の間に『錬金術』の分解を使って薬草を乾燥した薬草と薬液と言うのに分解している。
この時に使用した薬草の枚数や分解後に作られた薬液の使用量によって、作成されるハイポーションの効果が変わると記載されている。
対して古い製法だと
1、薬草を5枚すり潰す。
2、すり潰した薬草を大釜
3、すり潰したときに出た液体を別の容器に入れる
4、大釜に水を1リットル注ぐ。
5、カムラ竹を1センチ、木綿キノコを1株大釜に入れる。
6、色が黒くなるまで加熱する。
7、黒くなったら火を止める。
8、薬草から出た液体を垂らす。
9、ハチミツも入れて木の棒でかき混ぜる。
細かく工程を分けたが初級や中級に書かれている工程とは比較にならないほど手間暇かかっている。
初級の場合、1〜9の工程を錬金陣でまかなってるって事になるな。
中級の場合、1〜3の工程を『錬金術』の分解で行い残りの工程を錬金陣で行っている。
初級と中級の錬金陣を比較した時に1番外側に位置している円の1つ内側の円が違っている。
まず初級だとこの円の線上に小さな円が書かれており、そこに薬草を置く必要がある。
中級にはその円が無い代わりに更に1つ内側の円に乾燥した薬草を置き1番、中央に書かれてい円に薬液を置く。
古い製法と比較すると簡単だが、恐らく外側から中央に近づくにつれて工程が進んでいるのだろう。
練金陣に書かれている1つの円を1つの工程として考えて、その円上にある更に小さな円に素材を置く。
そして、その円上に書かれた文字や記号が何をするのかを表しているのだろう。
正直、この文字と記号の意味は実際にやってみないとわからないな。
「ん?」
ふと気づくと既に2、3時間ほど時間が経過しており錬金術ギルドの外が暗くなっていた。
ギルド内にいた人も少なくなっているし。
まぁ、今日はここまでわかったって事で一旦終わろうかな。
単純に高度な『錬金術』になればなる程、錬金陣が必要になるだけって思ってたけど、そう言うわけではなく錬金陣でいくつかの工程を省略している。
高度な『錬金術』になればなる程、工程が複雑になり、より手間がかかるから錬金陣で省略している。って事だろうな。
裏を返せば錬金陣が無くても手間暇かければ錬金ができるって事にもなるんだろう。
結局、魔石を錬金する方法はわからなかったが、少し『錬金術』の理解を深める事は出来た。
案外、動力石の錬金工程を解きあかせれば、魔石の錬金も出来そうな気がするし。
『錬金術』中級の本を返して、錬金術ギルドを後にする。
マイホームへ向かいログアウトする。
今日は本を読んだだけで終わってしまった。
明日は何しよう?




