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23話 クラン対抗戦(クロユリ/サイト)

■クロユリ

ふぅ、この体勢も疲れてきた。


ミヅキさんが敵の幹部を倒しに向かった後、直ぐに新たな敵が現れた。


「ねぇねぇ、ダイテツ?」

「なんじゃヌイヌイよ」

「あそこの子、地面に手をついてるけど、もしかしてあれがスキル発動の条件だったりするかな?」

「うむ、確かにのぉ。明らかにあの手を中心に魔法陣の様なものが浮かびあがっとるし、普通はわざわざ戦場で手を地面につけておく必要は無いじゃろうな」


何故か脚立に登ってこちらを観察する2人のプレイヤーがいた。

勿論、彼方から見えてると言う事は私たちからも見えているって事なのだが。


「僕、良いこと思いついたよ!あの子の頭上から攻撃すれば良いんだよ」

「名案じゃな!では早速、準備をしよう」

不穏な事を言って脚立から降り消えていった。


頭上?と思い上を向くが雲ひとつない青空が広がるだけ、それでどうやって頭上から攻撃しようと言うのか?


弓矢かな?仮に弓矢だったとして近くに控えるゾンビが盾になってくれる。


私の近くには通常のスケルトンとは違うスケルトンナイトとスケルトンマジシャンが2体ずつ控えており、他にもグール2体が控えている。


他にもミヅキさんが離れる際に召喚してくれた大きな鷲のルフとトナカイのオリーブ、サユリちゃんとその従獣達がいる為、仮に20体のゾンビ達からなる壁を突破したとしても、大丈夫。


それに、ゾンビ達の壁の向こうでは今もなお剣戟の音が聞こえる通り、スケルトン20体とスケルトンビースト15体がいる。


最初よりだいぶ数は減っているが、まだ合計で30体近くはいるから大丈夫。

敵プレイヤーの数も減ってる気がするし。


「安心してクロユリちゃん。私が守ってあげるから!」

「うん」

サユリちゃんとはゲーム内の墓地で、スケルトン用の骨を拾っていた時に出会った。


それ以来、サユリちゃんとハヤトくんと一緒に色んなクエストに行ったりした。


クランの現状を知った時に協力したいと言ってくれた。


今も私を護ろうと一生懸命になってくれる。


ミヅキさんも最初の方は怖かった。

あまり喋らないし、美人って性格悪いイメージがあったから。

でも、ミヅキさんの従獣テスカに一緒に乗せてもらった時も気遣ってくれたし、偶に頭を撫でてくれる。


闘ってる時は強くてカッコいい。

女性に言うには失礼かもだけど、まるでお兄ちゃんの様な存在だ。


「準備できましたー」

「戦場で武器を作るとはなかなかに骨が折れるわい」

どうやら、物思いに耽ってる間、敵側の準備が整った様だ。


再び2人のプレイヤーが脚立に登っているのが見える。

いったい何をして来るのだろう。


「皆んな準備はいいかい?砲弾装填!発射準備よーし!発射!」

ボンッ!


大砲の音とともに砲弾がこっちに落ちて来るのが見える。

あまりの出来事にビックリして硬直してしまった。


まさか大砲を持って来るなんて。


「クワァア」

「およ?なんだあの大きい鷲?ええ⁉︎あの鷲、今風属性の魔術使って砲弾を吹き飛ばしたよ⁉︎」

「魔術が使えるモンスターとは初めて見るのぉ」


砲撃が私達に直撃する事はなくゾンビ達の壁の外側で爆発音が鳴り響いた。

ミヅキさんの従獣が助けてくれた。


「ありがとう!ルフちゃん」

サユリちゃんが元気いっぱいミヅキさんの従獣をヨシヨシしている。

私も手を地面から離せればヨシヨシしたのに...


「むぅ、なんなのさ。あの鳥!モンスターの癖に魔術を使うなんて卑怯だよ」

「ヌイヌイよ。そこまで気にせんでもええじゃろう。あれは元々プレイヤーを狙ったものではないのじゃから」


プレイヤーを狙ったものじゃない?

どう言う事?だとしたら何を狙ったのか?

1番考えられるのは...


「第2弾、装填!反射準備よーし!」

ヌイヌイとか言うプレイヤーの幼い気の抜ける様な号令が良く聞こえる。


「次はゾンビの壁手前に落とすよ!うてー」

ボンッ!!

「サユリちゃん!不味い。外にいたスケルトン達が一気に減ってる」

「どう言う事?クロユリちゃん?」


バンッ!!

次の砲弾はゾンビ達の手前に着弾する。


「多分、あの弾の中には聖水が入っているんだと思う。聖水はアンデットの天敵」

気付くの遅かった...既に正面のゾンビ達が聖水を浴びて悶え苦しんで、消えていった。


「聖水なんてアイテムがあるんだ...ピンチじゃん!どうしようクロユリちゃん」

ゾンビ達に攻撃を加えていたプレイヤー達は砲弾の爆風で一緒に飛ばされていたが、飛ばされただけで大した影響はないだろう。


空いた壁を埋める為に近くのスケルトンを出しても、また聖水が飛んでくれば意味ないし。


「クワァ」

「ルフちゃんどうしたの?」

ルフが突然、翼を広げ空に舞い上がる。

飛んでいった先はなんと...


「うげ⁉︎なんかこっちに来てる気がするんだけど」

「同感じゃな。ここは危ない。退避するとしようかのぉ」

急いで脚立を降りる2人のプレイヤー。


ルフはそのまま脚立に攻撃する。

その後、近くにあった砲台を掴み宙に舞い上がると、砲台を放り投げ、壊してみせた。


「ああー!せっかく作ったのになんて事してくれるんだ!」

「むぅ、なかなかにやりおるわい」

そんな光景を呆然と眺めていると、ゾンビ達の壁が空いた場所から、続々とプレイヤーが侵入してきていた。


「グモウ」

オリーブが自慢の角で敵を蹴散らしてくれた。


「クロユリちゃんには手を出させない」

サユリちゃんとその従獣達も頑張ってくれている。


私も近くに控えていたスケルトンナイトとスケルトンマジシャン、グールに指示を出す。


「うーん、しょうがない。手で余った砲弾を投げようか。聖水もまだ余ってるしね。にししし」

「そうじょのぉ。そうじゃのぉ。聖水がこっちにある以上、いくら抵抗した所でたかが知れとるわい」

そう言って、砲弾を近くにいたプレイヤーにも配り投げ始める敵プレイヤー達。


皆んな頑張って私を護ってくれてるけど、時間の問題な気がする。


敵プレイヤーは見渡す限りまだ10人前後はいるし、私のアンデットは聖水がある限り役立たずになってしまった。


「きゃっ」

「あっサユリちゃん!」

そこには敵の攻撃をもろに喰らい倒れているサユリちゃん。


「へっこいつ倒せば、周りの面倒なモンスターも減るだろなああ!!」

敵プレイヤーは手に持った剣を振り下ろそうとしていた。


「がっ」

「たく、油断するなよ!サユリ!」

剣を振り下ろそうとしていたプレイヤーの後ろには、ハヤトくんが立っていた。


「ハヤト!ありがとう助けてくれて!」

「へっ、心配かけさせやがって」


「ファッファッファ、青春じゃのう」

「間に合った様だね。にしても.........うちのクランの可憐な花達を痛めつけてくれた件、責任取ってもらうよ」


遊撃班のムネトさん達が救援に駆けつけてくれた。

助かった...


「ええー何あいつら?後から来ていい顔しちゃってさ」

「どうしたものかのぉ。ここは退避した方が吉じゃろうか」

「逃がすわけないだろう!」

ハヤトくんが剣を手にあのおかしな2人組に攻撃をする。


「うげっ」

「ぬぉお」

戦闘には慣れていないのだろう。簡単にやられた。

あっさりと消えていく2人のプレイヤーを見て、私はまたも呆然としてしまった。


「弱っ......」



■サイト

「ご主人様、お疲れですか?ひょっとして雑魚なのですか?」

「ご主人様、サボりはいけませんよ。皆さん頑張っているのですから」


「サイト!そんな相手にへばってるんじゃないでしょうね?」

「サイト様...」

周りから眷属達の声が聞こえる。


「はぁ、はぁ、はぁ...」

「はぁ、はぁ、はぁ...、テメェなかなかにやるじゃねぇか」

なんなんだコイツは?

いったい僕はコイツと何時間一対一をやっているんだ?


クラン対抗戦が始まってずっとコイツとこの場所で戦っている。


僕と相手を中心に円形のフィールドが出来上がっている。

その円を描く様に僕の背後にいるのが眷属達。

僕の正面、相手側の背後に立って応援する敵プレイヤー達。


いったい僕達は何をやっているんだ?

クラン対抗戦じゃないのか?


何故、周りの眷属や敵プレイヤーは観戦してるんだ?

意味がわからない。


意味がわからないが、こんな勝負はどちらかのHPが無くなれば終わる。HPなんてすぐに無くなるはず。


なのに、終わってない。

どちらかのHPが切れそうになるとセコンド...いや背後にいる味方が回復させてくれるのだ。


だから終わらない。

はぁーしんどい。


このしんどさを増進させているのが数分前に現れた奴ら。


「サイトさん!そこでアッパーですよ!避けて避けて!!!」

僕の背後には猫耳のプレイヤー。


「アニキ!!!まだまだ行けるっすよ!!!」

相手側の背後には犬耳のプレイヤー。


一番、熱心な応援をしている2人。

テメェらなんでこんなとこで油売ってやがんだよ!!!

テメェらも闘えや!!!


「はっはっは。俺をここまで楽しませてくれたやつは久々だ!!!」

「...はぁ、はぁ…どっどうも...」


「よし、次の一撃で決めてやる!!!歯ぁああ食いしばれやああぁ!!!」

何度目の最後の一撃だろう...


もう、負けようかな?誰も文句言わないよね。

「おおおおお!!!」

こちらに拳を振りかぶり接近して来る敵プレイヤー。


そう言えばコイツの名前も知らないや...

確か周りにはジョウトウとかって呼ばれて.........


ドスン!!!!!


尋常じゃない衝撃とともに、目の前にいきなり黒い鬼が現れた。

見る限り何かに吹き飛ばされてきたのだろう。


「ギヒ。ガアアア!!!」

黒い鬼は起き上がると走り去っていった。


そして、その場には黒い鬼に押し潰されて、消えたジョウトウと、呆気に取られるプレイヤー達が残されていた。


そんな中でただ1人僕だけは何かわからないが。ようやくこの闘いが終わったのだという達成感に満ち溢れていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 見事な事故だと誉めるが、どこも可笑しくないな
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