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21話 クラン対抗戦(VS幹部)

■ミヅキ


はぁ、はぁ、はぁ

ああああーもう!!!

鬱陶しい!!!


ちょこまか、ちょこまかと。


現状、自分を中心に半径4、5mぐらいのフィールドが形成されていた。

と言うのも自分達、奇襲班の作戦が第2フェーズに移行していたからである。


敵の混乱も落ち着いてきた今、自分達に求められているのはなるべく敵を惹きつける時間を稼ぐ事。

勿論、敵を減らせるならそれに越した事は無いがあまり減らしすぎて逃げられても追いかけるのに困るから、深追いはせずに自分を中心に4、5mの距離にクロユリちゃんのスケルトンやゾンビを壁の様に配置してもらっている。


ただ、その壁を突き破ってくるプレイヤーが数名いる為、そう言ったプレイヤーは自分とサユリちゃんで片付けている。


実はゾンビやスケルトンを出している間、クロユリちゃんは地面に手をついておく必要があるのだ。

要するに、戦闘が一切出来ない。


逆にゾンビやスケルトンの継戦能力は凄まじい。

正直、一度ゾンビとスケルトンに陣形を取られるとどんなプレイヤーであろうとそこを抜けるのは至難の業だろう。


なのに...なのに...


「このイヌッコロがぁあ!!!」

ブォン!


手に持った白凪を振るうが当たらない。

あの犬獣人野郎がゾンビ達の壁を入ったり出たりを繰り返しているのだ。


つくづく目障りである。

「おっ落ち着いてください。ミヅキさん。まだ一発も喰らっていませんし、さっきの声でクロユリちゃんがビックリしてます」

「ああ、ごめんなさい。にしてもあの犬獣人は何?なんで視界の隅をチョロチョロしてるの?」

「あっあははは、そうですね。あの方は神楽騎士団の幹部の方で恐らく、こちらの隙を伺ってるんだと思います」

クロユリちゃんも地面に手をつきながらうなづいている。


へぇー、あんなのが幹部なのか。

案外、敵クランも数だけで個々が弱いのか?

いや、そうでもないか。さっきからゾンビ達の壁の外で戦っているサイトと恐らく敵の幹部(確かジョウトウとかって呼ばれてたかな)は、ここに来てずっと闘っている。


幼女を引き連れている悪魔とはいえ、サイトの実力はクラン内でも上位に入るし、全プレイヤーの中でもそこそこ強い方だと思う。

そんなサイトとずっと闘っていられるのだから、敵の幹部さんもそこそこ強いんだろう。


だから、舐めてかかるとっっっ!

「でや!チッ」

白凪を横に払うがまたしても外れる。


こんだけ、躱されるって事は素早さに自信があんのか?


あんまり、この状況長引かせたくないなぁ〜

精神衛生上もだけど、不安要素はなるべく早く取り除きたい。


「はっ!!!ここだぁ!!!」

「ちょちょちょ待った!待った!俺だよ俺!」

シロツキのスキル『気配察知』が急速に接近する物体を感知する。それに合わせて白凪を振るうが、イヌッコロではない。


「ん?誰だ?」

「カンダさんですよ!同じクランの」

「ああ〜ナンパ野郎ですか。いや、でもナンパ野郎に化けた変態かもしれない」

確かにいたなそん奴。そういえば自分がこのクラン対抗戦に巻き込まれたのもコイツがしつこくナンパしてきたからだったはず。


「ええー!酷い言われよう...いたっ!」

「大丈夫。こいつはカンダ。攻撃を喰らうと術が解ける。変身系の鉄則」

成る程。さすがクロユリちゃん。

手を地面につきながら足でナンパ野郎の脛を的確に蹴り抜いた。


「にしても、皆さん大丈夫そうすか?遠くから見ると敵に囲まれててヤバそうに見えたすけど」

「いや、大丈夫じゃない...あっそういえば、ナンパ野郎は足速かったですよね?」

「なんか、嫌な予感がする」


「ちょこまか、ちょこまかと鬱陶しい犬を叩き出してくれないですか?」

「恐らく敵幹部の犬獣人だと思うのですが、ゾンビさん達の包囲を掻い潜って、嫌がらせしてくるんです。私達だと速さで追いつけなくて、ミヅキさんもクロユリちゃんの側を離れる訳には行けませんし。お願いできませんか?」


「ふっ可愛い女性からのお願いとあらば喜んで!オラ!出てこいイヌッコロ!俺が相手じゃい」

そんなんで出て来るわけないだろう。

単細胞すぎるだろう。


「んだと!この野郎!俺様に喧嘩売ってんのか!」

出て来た...あっちも単細胞だったか。

なんか、今まであんなのと張り合ってたかと思うと、どうでも良くよくなって来た。


「おうおうおうおう!俺は獣人の中でも一番足が速えチーターの獣人だぞ!犬風情が勝てると思ってんのかぁあん?」

「犬じゃねぇ狼犬だゴラァ!テメェこそ猫風情が調子ぶっこいてんじゃねぇぞゴラァ!!」

残念だけど狼犬も犬なんだよ。犬って入ってるじゃん。


「おう、テメェ言うじゃねぇか!拳で決着つけてやる!表出ろや!」

「やってやろうじゃねぇか!」

睨み合いながらゾンビ達の輪から出て行く2人。


ナンパ野郎はあえて敵に調子を合わせて挑発しているのか、素でそうしているのかどっちなのだろうか。


呆然としちゃうサユリちゃん。

自分はそんな中、虎視眈々と隙を狙ってた敵プレイヤーどもを白凪で沈めて行く。


これで心落ち着く。

厄介な相手もいなくなったし、このままクランが勝つまで待ってればガッポリ稼げぇるでぇ〜


「お?なんだあれ?」

ふと空を見上げると大きく黒い物体が見える。

それは徐々に徐々に大きくなり...

「ヤバい!ぶつかる」

咄嗟にクロユリちゃんと黒い物体の間に入り白凪を縦に地面にぶっさす。白凪で受け止める。


もしかしたら、白凪がぶっ壊れるかもだけど、ごめんネルさん。


ハティもクロユリちゃんに覆い被さりつつ、自分の背中を支えてくれる。

クロユリちゃんがやられるのが一番やばい。


「グッ」


尋常じゃない衝撃とともにHPとMPがめっちゃ減った。

白凪も折れずになんとか持ち堪えた。


「ふぅ、一体なにが...あ、ヒノワ⁉︎」

「ガゥゥ...」

飛んできたのは、光になって消えつつあるヒノワであった。

ヒノワは自分が『テイム』している中だと2番目にデカイ黒い熊だ。少なくとも普通の人間よりデカい。

そんなヒノワが飛んでくるってよっぽどだと思うんだけど。


「ミヅキさんが『テイム』していたヒノワちゃんですよね?」

「そうですね...うん?テスカ!」

サユリちゃんと話しているとテスカがゾンビの壁をジャンプしてやって来た。


「グルゥ」

見るからにボロボロなテスカ。

申し訳なさそうな顔をしている。

ヒノワとテスカは一緒に行動していたからヒノワがやられたのは自分の責任だとでも思ってるのかな?


「ふふ、大丈夫だよ。仇は自分がとっておくから先に休んで置いてね。あと、ホームで拗ねてるだろうヒノワの面倒見てて」

少しテスカを撫でて送還する。


それと、『合体』も解除する。

「ふぅ、やっぱり2体同時『合体』は疲れるね。イナバとシロツキもありがとう」

「キュイ!」「ニャア!」

ヘトヘトであろう2匹も送還させる。


ステータス上はHPとかMPはまだ大丈夫だとしても、見えない体力みたいな所は確実に減ってる。


かく言う自分も体力減ってるんだけど...


空いたパーティー枠で新たに『テイム』していた2匹を召喚する。


「出番だよルフ!オリーブ!」

第1の街近くで『テイム』した白い鷲のルフと、第2の街近くで『テイム』したトナカイのオリーブだ。


何故、鷹ではなく鷲なのかと言うと...自分も分からん。

ステータス上の種族表記がそうなっているのだ。


オッサン事、ミタカさんが『テイム』しているピーちゃんやキーちゃんとは圧倒的に大きさが違う。

何故か、第1の街近くにいるのにデカいのだ。


基本、他のゲームの第1の街って小さな小動物がいっぱいいるイメージだったんだけど。


「わぁ大きいですね。この鷲さん。それにこっちのトナカイさんもツノが大きい」

「......手を地面から離していいなら触りたいぐらい」


「ルフ、オリーブは此処でサユリちゃんとクロユリちゃんの護衛をお願い。ハティは疲れてると思うけど、もうひと頑張りで、一緒に暴れようか」


実は既にチラチラと見え始めているのだ。

恐らくヒノワを吹き飛ばした張本人が。


なんせデカい!周りより頭一つ飛び抜けている。

あの不人気種族の巨人族だろう。まぁ魚人族ほど不人気では無いが。


はぁ。しかも普通の巨人族より明らかにデカい。

ディアナさんが3メートルぐらいだったから今、見えてるプレイヤーは4メートルくらいかな。


そんな奴がこのゾンビの壁に突撃してみろ一瞬で瓦解するぞ。


てなわけでアレの相手しないといけないわけだけど


残り召喚できるのは、2体。

まだ元気で残っているのは白蛇のビャクと薄汚いおっさんから買った卵から孵った1体と、新たに第3の街のダンジョンで『テイム』した1体のみ。


ビャクは魔術を防いでくれるが、あの巨人が魔術を使うとは思えない。

卵から孵った方は戦闘向きじゃ無いし、もう一体は言うこと聞いてくれない。


何故『テイム』出来たのか不思議なくらいだ。

まぁ言うこと聞いてくれないそいつに頼るしか無いか。


「じゃあ、ハティ。『合体』」

「ガアウ」


自分の白い髪が灰色になり狼の耳と尻尾が生えて来た感覚がわかる。

よし、準備体操を行って。


散々、練習して今では自然に出来てしまう様になった棒高跳びを行う。


ゾンビの壁を抜けると、そこには敵プレイヤーが蠢いていた。

結構、減らしたつもりだったけど多すぎ。

近づいて来る敵プレイヤー達。


テメェらには興味ねぇんだよ。

「ガァアアアアアアアアア!!!」

ハティのスキル『咆哮』で前方にいる敵プレイヤーを麻痺させる。


その隙に、敵プレイヤーの間を抜け、此方にノソノソとどでかい斧を引き摺りながらやって来る巨人に向かう。


「うあ?だれ君?」

「ネムイさん!ネムイさん!コイツですよ!ここ襲撃して来たの!」

「ああ、そうなの?はぁああ〜凄く眠いからさっさと終わらせるね」

「え⁉︎ちょっ、ネムイさん⁉︎うわぁ」


あぶっ!

問答無用ってこの事なのかなぁ。

何もなしに攻撃して来たんだけど。


てか、隣にいた仲間の人も巻き込まれて光となって消えてったんだけど。


これは、考えてる暇とか無いか。

つけていた指輪を外しアイテム欄に入れる。あわせて一つの真っ黒な宝石が埋め込まれた指輪を取り出し装備する。


はぁ、出来ればギリギリまで使いたくなかったんだけど。

「ゴウキ、力を貸してくれ」

「ギヒ」


目の前には3メートルぐらいの真っ黒な鬼。

そう、第3の街にあるダンジョンで出会い、いきなり死に戻り刺せられたオーガだ。


あの後、どうせ偶々、遭遇しただけだろうと、何度かダンジョンに挑戦してみたのだが、何故かダンジョンの3層目に入るとコイツと出会うのだ。


だからあえてデスペナ中でも強引にダンジョンに突入してひたすら『テイム』を試してみた。


普通、そこで『テイム』出来るかと思うがまる1日使っても『テイム』出来ず、それなら全力で逃げようと思い装備とか『合体』を使って素早さを限界まで上げて、逃げても追いつかれる。


ここまで来たら倒すしかねぇって事で、万全の準備をした。

正直、クラン対抗戦の事なんて忘れて仲間を集めて戦いギリギリまでHPを削りきった。

するとゴウキが跪いて忠誠の証をとって来たので『テイム』した。


なのに...それなのにコイツ言う事聞かないのである。


「おい!ゴウキ、まずは少し距離を置くぞ」

「ギィ...」

イラッ!無視しやがった。


「んん?なにこいつ。やっちゃって良いかな」

敵プレイヤーが手に持った斧を振り回す。


「ギヒ!」

自分は一目散に逃げたが、ゴウキは手に持った斧で真っ向から受け止める気だ。


はぁ相変わらず戦闘狂だな。

自分の事は認めてくれてるみたいだが、ゴウキはどうも誰かの言う事を聞くのを嫌う様で、召喚しても敵に突っ込んで暴れて終わる。


勝手に暴れるお陰でゴウキ以外の仲間と共闘させたりが出来ない。


試しに『合体』しようとも思ったが拒絶されて失敗した。その時は『合体』って拒絶できるって事に驚いたが、『合体』も出来ないとなると、本当に敵地で好き勝手暴れさせるぐらいしか出来なくなる。


ガン!!!

ガン!!!

ガン!!!


斧で撃ち合う尋常じゃない音が鳴り響く。

はぁ化け物同士の戦いだな。


正直、あの戦いに巻き込まれるのは勘弁。

少し周りの雑魚を掃除しておくか。

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