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98. S 、一つ目

『雲の花』を探しに山に向かって進む。何だかんだと結構、あっさり目的地までついた。花が咲いている山頂までの道は[迷い道]と呼ばれ、道順を違えると先には進めないと聞いている。


と、マリア嬢がドンドンと先に進んでしまう。


「ちょ、ちょっと待って!! 目印も何もなく進んでしまっては、間違えたときに同じ事を繰り返してしまうかも知れません。目印を……」


「……頭に、ここの地図が……」


「地図が??」


「……」


何かに導かれるように進んでいく。仕方がないので急いで馬を繋ぎ、途中から居眠りをしていたファジールを起こし、ダンを懐にしまって追いかける。


驚いたことに、マリア嬢の案内通りに進むと、盗賊どもが隠したのか、宝箱を幾つか発見した。我々が中身を確認する間にもマリア嬢は進んでしまうので慌てて追いかける。


どこをどう通ったのか、いつの間にか頂上の花畑に居た。さあ、摘もうと言うところで、ゥガァァァーー!! という声を聞く。ボロボロになった服を着た、5・6歳の子供と同じ位大きさの人形と、恐ろしく綺麗な顔だちの魔人が4体。魔物を守るように我々の前に立ちはだかっている。


付き添う魔人の数で、魔物の強さが分かるとフィルに聞いたことがあるが、討伐に加わったことがない私には、4体が多いのかどうかがわからない。が、今まで会った魔物は魔人が付いて居ないものが圧倒的に多かったことからすると、かなり強いのかもしれない……


「私が魔物を倒します。魔人をお願いします!」


言うなり、魔人を無視して魔物に向かっていくマリア嬢。


「えー!! ズルい!! 僕も魔物がいいのにぃ!!」


戦闘用のブーツを履いて、向かってくる魔人を蹴り倒してマリア嬢を追うファジール。


残されたのは、魔物を守りに行く魔人2体と、蹴られて悶える魔人が1体、私に狙いを定めて向かって来るものが一体。


勇者と印持ち人獣は専用の道具を使い、その道具を媒体に神力をのせ攻撃、魔法も、人獣の場合は魔素ではなく神力を使う。故に魔族に多大なダメージを与える事が出きる。しかし、私には印がない。普段は微々たる神力を魔法にあてがって使うのだが、それで魔人が倒せるのか……


何もしなければただやられてしまうので、取りあえずできる限りの神力を使い、得意の風魔法で向かってくる魔人に攻撃する。


刃物で切られたように、赤い線がいくつも魔人の体に付くが、向かってくる事を止める事は出来なかった。仕方がないので護身用で買った短剣を構えた所で、私の首に魔人の手がかかる。


ギュッっと喉が締まる感覚。窒息よりも、力任せに首の骨を折られそうな勢い……急速に意識が無くなる感覚に襲われるも、手にした短剣を魔人に突き刺す。一瞬、締まった喉が緩められた。


と、セス兄!! の声と衝撃。ファジールが気づいて魔人を横蹴りで吹っ飛ばしたらしい。魔人といっしょに私も倒れ込み、ゲホゲホとむせる。


「ごめん、セス兄様! 魔人を先に倒しちゃうね……。」


そういうと、マリア嬢と競うように魔物と戦っていたファジールが、魔人を次々と倒していく。私はヒューヒューという呼吸をどうにか整え、マリア嬢の闘いをみる。今までの魔物と違い苦戦しているように見える。


ガキンッ! ガン!! と音からするに、柔らかそうな見た目とは違い、かなり硬い魔物のようだ。


「マ"・マ"リ"ア"じょう。」


声が出ない……セス兄様! と魔人を倒し終えたファジールが近付いてくる。なので、ファジールに剣での物理攻撃ではなく、魔法で攻撃するように伝えてもらう。


「ま、魔法?」


威力的には問題無いので、タイミングと方向さえ間違えなければなんとかなるだろう。と、踏んでいたが……躊躇いながら放った火属性の初級魔法で、ボロボロの人形はぶっ飛んだ。


そこで私の意識は一旦途切れる。


◇◇◇◇


目が覚めた時は馬車の中。ガダッと大きく揺れて頭を床にぶつけた時。


「ファジールくん、大丈夫ですか? 変わりましょうか??」


「だ、大丈夫だよ!! 暗いから見にくいけど、御者位僕にも出来る。だから、セス兄様みてて!!」


ボンヤリする頭で理解できたのは、ファジールが初めて馬車を操ってる事。喋ろうと息を吸った瞬間、また激しくむせた。


隣に居たマリア嬢が驚き、背中をさする。ファジールはセス兄様! と叫び馬車を急停止させる。大丈夫? 大丈夫?? と心配そうに見る2人に手を上げて大丈夫だとアピールする。差し出された水をなんとか飲み込み、落ち着いたところで2人に話を聞いた。


今は、『空色の湧水』を採りに移動中で、そろそろ日が暮れて視界が悪くなってきたので、どこかで夜営すること。


人形のような魔物を倒した後、調べたら南の国に出没するキラードールとよく似ている魔物だったそう。ただ、図鑑でみたその魔物の特徴とは違うところが多かった事と、そもそも、シープスのテッセル様の言っていた頂上に巣くう魔物と違った事等を聞いた。


今回、勇者と印持ちが居たから勝てたものの、テッセル様が言ってたように、印がない人獣や戦闘訓練を受けた獣人では太刀打ちできないレベルの魔物が出てきて居るようだ。


思わず首を触る。


「痛みますか?」


マリア嬢に聞かれる。痛くはない。苦しかったり、違和感も特には無いが、息を吸いづらく感じるのは心の問題か……?


「漁師をしていた頃に、怪我をした人なんかにおまじないをすると良くなったって言ってくれる人が多かったので、セレネス様にもおまじないをしたんですけど……」


「あ、ありがとうございます。」


……ってか、それ、普通に回復魔法だと思う……。使える人は少ないと聞いたことがあるが、さすが勇者。そこら辺はちゃんと使えるんだな……と感心しながら馬車に揺られ、夜営場所に向かった。

読んで頂き、ありがとうございました。

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