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97. K の見送り

ハルさんとプロデューサーは、マリア達のと通信が終わるとまた資料を確認し始める。どうやら、国別、攻略対象者別、などで分類し、仕訳をしながら確認しているようだ。見た感じ、半分くらいは見終わっているようである。


時間を見れば午前5時。徹夜でゲームをやったのなんて、いつぶりだろうか……


マリア達を宿に一泊させ、取りあえず頼まれた3つのアイテムを探しに行く。話を聞く限り、特に順番があるわけでも無さそうなので、近場から攻めてみる。


まずは『雲の花』。 帝国を囲む山脈の一部、シープス領内の南に位置する切り立った山の上に自生する花。根に毒を中和する効果、葉に腸を整える効果、花の部分には猛毒と部分によって効能が違う。という設定らしい。


先ほど、ハルさんが思い出したように攻略本のゲラ刷りを持ってきてくれた。


前半、マリア(主人公)がすべての国、全ての領土を回って、攻略対象を必要人数揃えたところから、乙女ゲームモードが本格的に発動するらしい。が、今のところ5箇所回って、対象者は本来2人いなければいけない筈だが、一人しか居ない。このまま進めてホントに良いのだろうか……


まあ、こちらから干渉出来ないので、どうにもならないのは確かなんだが……


パラパラと攻略本を見ながらこれから向かうダンジョンに進む。


迷路のようなダンジョンで幾つかの分岐を、順番通りに進まないと先に行けないらしい。ここは攻略本様々で、あっさり花の群生地までたどり着く。と、ここのボスだろうか、何やら配色の悪い魔物と魔人が数体登場した。すぐさま攻略本で弱点を探す。


……載ってない? あれ? 見てるページが違う?? 目次で攻略対象のイベントから、ダンジョンで出てくる魔物を探してみるも、やはりここのボスとは違う魔物が画面に出ている。


「あの、これ、攻略本と出てきてるのが違うんですけど??」


えー!! どこー?? と2人が画面と攻略本を見比べる。


「何……? この魔物……」


「中盤に出てくるキラードールに似てるけど……」


索引でキラードールを探す。物語では、北→東→南→西→帝国の順で回ってくる筈で、この魔物は南の国に分布しているとある。そして、攻略本には赤いドレスを着た女の子の人形だが、画面に居るのは、肌が草色で作られ、金髪も、ドレスもボロボロの人形だ。


「この場所に出てくる魔物ってことは、ここのボスっていう扱いですよね?」


「そうだよねぇ。……本来のボスキャラはどこに行ったのかなぁ。」


「……後で、ここのボスについて、別のデバッガーの子達に確認してみます。」


「うん、そうしてぇー。」


「で、倒しちゃって良いですか??」


「そうね、倒さないとお花取れないし。やっちゃえ、やっちゃえ!!」


相変わらず軽いノリで物語の行く末が決まる。オートモードで戦闘をして、魔人を倒し、ボスもそのままあっさり倒せると思いきや、物理攻撃に強いらしく、HPが減っていかない。仕方ないのでマリアの魔法をコマンドを検索。


……何故に下位の攻撃魔法しかないのだ……?? 取りあえず、通常のキラードールの弱点の火属性で攻撃してみる。


………………一発で仕留めました。基礎中の基礎、ファイアーボールでしたけど?? 中ボス倒せる程の威力があるの??


まあ、倒せたので、花を摘んでダンジョンから出る。次は『空色の湧水』を採るために泉に向かう。


シープスの領地からだと、西に位置する辰の領との境辺りに、空が落ちてきたと評される程、蒼く澄んだ泉がある。ここはいかにも現代風の精霊との話しと、ボスを倒おし、助けたシープスのディアンを連れてくるように伝言を預かってあっさり終了した。最後の『雨色の小瓶』の場所に移動しようとすれば、ハルさんに名前を呼ばれ振り替える。


「カズヤさん、私は平良のご両親に会いに一度病院に行きます。カズヤさんもイチカさんの転院の手続き何かがあるんですよね? まだ少し早いですが、どうされますか?」


時計を見れば7時を回った所。就業時間前に顔を出すつもりのようだ。一華の転院は10時から。正直、だいぶ早いが、お袋達は今日、仕事なので、転院の手続きは俺がやることになっている。仕事後に転院先の病院の方に顔を出すと言っていた。ならば、支度がてら早めに行った方がいいか……。


「御一緒させてください。」


「わかった。じゃあ、玄関先に車回してくるから、奥ちゃん(プロデューサー)案内よろしくねぇ!!」


あの人も徹夜だろうに、元気だな……などと思いながらセーブするために街へ一旦戻る。教会に行き、セーブをしようとすれば、セーブの文字にカーソルを合わせても反応しない。思わずあれ? と声が出る。


「どうしたの?」


「あ、セーブが……」


と言えば、このゲームに関してはセーブが出来ないのだという。……雷なんかでデーターがトんだらどうなるのだろう……。


心配は尽きないが、一華の体も心配だ。一華を送ったら戻りますと、奥山プロデューサーに挨拶をし、ハル社長の車で病院まで行く。ハルさんはそのまま岡本さんのご家族の許へ、俺は一華の病室に向かう。


部屋に入れば、検温中だったのか若い看護師が俺を見て凄く嬉しそうに話しかけてきた。


「妹さん、体温や脈拍、あと血圧も正常です。なので予定通り転院出来ると思います。身の回りの物、忘れ物の無いように確認お願いします。あと……これ!」


折り畳まれた小さなメモを押し付けられるように渡され、では!! と、器具をガチャガチャと鳴らしながら足早に部屋を出ていく。


一華が入院してから何枚目か……。好意はありがたいが、正直興味はない。一応、彼女のプライドとプライバシーに配慮して、後で細かくちぎって捨てよう。


一華の荷物を整理する。と、スマホがブルブルと震える。電池が残っていたことに驚き、見るともなしに画面を見れば、一華が倒れたことを聞いたのであろう、大輔からのラインと着信があったことが表示されている。


……脱落者(新婚)の癖に、なぜ未練たらしく連絡を寄越すのか……。


一華と共に転院先に行き、手続きを終えるとトンボ帰りする。


大輔を昼に呼び出す。全て知っている事を告げ、一華より、嫁の事を考えてやれと最後通告を言い渡す。己と同様に小さい頃から愛おしんできた、もう一人の兄の、後悔と未練を背負った背中を笑を堪えながら見送った。

読んで頂き、ありがとうございました。

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