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96. T 、初体験

ヒィィィィ!!!!


思ってたのと違う……いや、狙いどおりの結果にはなっているが、威力がおかしい!!


ーーーー少し時間を遡る


ノリアス、フィル、リベルと旅に出た。時間短縮の為、目的地まで街道を使わずに森を突っ切っている。


時たま、この森で生まれたであろう魔物にかち合い、3人が難なく討伐して先に進む。リベルが鞭と併用して魔法を使うのを見て、あれ、そういえば、俺も魔法使えるんじゃね?? と、思ったのが発端。


フィルと話しながら何気なく放った魔法は水属性の氷魔法。イメージとしては、少し先にある木を魔物に見立てて、軽く凍らす程度。だったのだが……俺が放った魔法は想像の範囲を越えた威力を発揮した。


自分を中心として、前方に扇状の氷の広場が出来上がっている。


うわぁー……これ、夏は涼しくて良いねぇ~。じゃ、ねぇよ。なんでだよ! ランクFじゃ無いのかよ!? Fが使う初級魔法でこの威力じゃあ怖くてこれ以上なんて使えねぇよ!!


聞けば、ランクは関係なく、使ったことが無いからFなだけであって、適性とセンスが合えば、使うだけどんどん上がって行くものらしい。


そりゃそうだ! すっかり忘れていたが、ゲーム内でも特定の魔法を使い続けたり、レベルが上がったりの条件を満たせば、上級魔法を覚えるんだった……主人公も旅をして、モンスターを倒しながら成長するんだもんな……。


思考にふけっていたら、いつの間にか移動していた。馬がピタッと動きを止めたことに気づいて顔を上げる。


うおっ! でっけぇー犬!! いや、魔物か……。でも、あーゆー犬を枕にして寝るのって小さい頃憧れたわぁー……あれ? こいつってここで出てくる魔物じゃないよね? 中盤に出てくる通常の魔物だよね?? 魔人を連れてるけどそんなに強いの??


と、驚いたことに喋り始めた。以前勧誘に来た魔物より片言ではあるが、やっぱりノリアスを勧誘する。が、けんもほろろにお断りされている。ヘルウルフは座ったまま、両サイドの魔人は立ち上がり、宣言した。


「……イヤ……ナラバ、マオウフタリイラナイ。ハイジョスル!!」


ん? 待って、今なんつった??


「今、2人いらないって言った?」


フィルが何故だか焦ったように俺を庇いながら剣を構える。


「タイラ! 呑気に話してる場合じゃ無いでしょ!!」


ノリアスに言われて周りを見れば、アラすごい、大きいものから小さいものまで、魔物が揃ってこちらに睨みを効かせて囲っていた。


「でも、2人って何? 魔王はノリアスだけじゃないの??」


ちょっと驚いたが、次にまた言語能力がある魔物が来るとは限らない。ここはきちんと聞かなければ!!


「……マオウ、コウホウマレタ。オマエ、イヤナラ、ウマレタヤツマオウ。ソダテル……」


コウホ……候補か。生まれた? 育てる?? いや、魔王はノリアスだろ? この子が魔物の国に君臨して、初めて皆に認識される魔王になるんでしょ? 違うの?? ノリアス以外の魔王なんて設定知らないよ??


そもそも、ノリアス(魔王)が生まれたから、対抗する|マリア(勇者)を拐って餌にしようとして、間違えてローナを連れていったんだろ?? 後から新しい魔王が生まれたら、このゲームの前提が総崩れですけど!? そんな事あり得るの??


魔物とのやり取りで幾つか分かったが、我慢の限界か、我々を魔物が襲う。


先ほどの経験から、水分が豊富な森で水属性は危険。森の中だから火属性もムリ。あと、使える魔法は……パニックになりながらも、俺が思いついた魔法は雷属性。


感電をメインに魔物にだけ効力が発揮されますように!! と祈りを込めて放つ。……轟音と共に期待以上の効果をもたらした。


結果、雷が直撃したであろう1番でかい魔物は、落雷の瞬間に起こった火花が原因で丸焦げ、ソイツの近くにいたヤツも飛び火で大火傷、後はキチンと感電したようでバタバタ倒れた。かと思うと、刺身にされたばかりの魚のように、ビクビクと痙攣している。


轟音による耳鳴り、辺りに漂う肉の焦げた臭い、死んだ魔物が魔素に戻り、否応なしにこの場で一番強いノリアスに吸収されて行く場面も、ひどくキモチガワルイ……


急いでフィルに馬から下ろしてもらい、皆から少し距離を取って吐いた。胃の中のもん、多分全部出るくらいに吐いた。


口元を懐紙でぬぐい、ごめん。と皆の許に戻る。


リベルが、先ほどの現場とは少し離れたところで待っていてくれて、水を渡された。


「大丈夫ですか? 」


「あ、ありがとぅ……」


口をすすいでから一口飲むと少し落ち着く。


「魔法は使いなれないと魔力酔いする人がいると聞いたことがあります。今日、初めてお使いになったのなら……」


「違うっ!!」


ビクッとリベルが体を震わせ硬直する。おれ自身も予期せぬ大声で驚いた。


「ごめん。驚かせて……でも、違うんだ。魔力酔いとかじゃなくて……」


先ほど倒した魔物達を見る。


「倒さなきゃいけないことは分かってるんだけどね……生き物を……しかも、人型とか動物とかを倒すのは思った以上にクルね……。」


「……確かに。魔物とはいえ容姿が人だったり可愛い動物だったりすると揺らぐことはありますが……我々が揺らぐことで、対抗策を持ち得ない弱き者達が怪我をする方が私は嫌です。なので、魔物は魔物と割りきって闘います!!」


そうか、ここの人達はそれが通常。甘いことばかり言っていられない。しかも、そんな世界をつくったのは紛れもない俺たち。


ただのゲーム、ただの電気信号、ただの点の集合体。言ってしまえばそれだけだが、ここには、この世界が全ての人達がいて、生きて生活している。………うーーーーん。かつてない程の罪悪感。


あぁ、俺、今夜寝れるかな……気分がどうしようもなく落ち込んでいた時、ガスン!! と周りの全てが消えた。光も、音も、匂いも何もない真っ暗な場所。で、猛烈な眠気に襲われる。


いや、そこまでして寝かさなくても……ふざけた事を考えたが、


『あれ?』『どうしたのー?』『あの、セーブが…』


あぁ、そうか。……これはたぶん、中断セー………ZZZ………


誰かがゲームを再開するまで、俺は眠ったままだった。

読んで頂き、ありがとうございました。

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