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91. S 出発!

宿に一拍した次の日、神様よりご神託を頂いたと、朝食の時にマリアが言う。そしてファジールに向き直ると、


「ファジール様、神様から依頼がありまして、コトリ? を飛ばして欲しいと……」


言俐(コトリ)を? 誰に? なんて??」


「えっと……リベル様達に『了解、セレネス様達に合流したら教会にお祈りに行くように』と……」


「えー、なにが了解なのー?」


「多分ですが、昨日のセレネス様に届いたコトリ対する返事かと……」


「セス兄さまが訳わからん! って言ってたやつ?? 神様には分かったって事? えー、なんかこわーい……」


「神様がいつも見守って下さってる証拠ですよ、コトリ、お願いしますね。」


ファジールは素直にハーイと返事をすると、忘れないうちにと言俐を飛ばそうとする。


「ファジール、ついでに我々のこれからの予定も伝えておいてくれ。」


言俐を作り始めて居たファジールは頷いて了承した。


それぞれが支度を終えると、いざ、出発。森に入ってすぐ、魔物と遭遇する。だいたいがマリア嬢の、勇者の剣での薙ぎ払いと、ファジールの蹴りで終了する。私はダンを保護しながら馬車で待機だ。


「マリアさんて、魔法、あんまり使わないけど、勇者だけが使える魔法とかあるんでしょ? やっぱり広範囲で一気にカタがつく感じの魔法なの?」


ファジールが興味津々といった感じで聞く。私もまほうが使える端くれとしては気になるところである。


「? 魔法は生活魔法しか使えませんよ?」


「「え?」」


「え?」


いや、バリー殿の鑑定で、魔法はほとんど、A判定以上だったではないか?? 使えないって……


「あー、マリアちゃん、無自覚に使ってるタイプだったか……そうか、アカデミーとか行ってないもんね。えっとねー、マリアちゃんの場合、攻撃魔法を生活魔法として使ってる、みないな?」


胸元で寝ていたはずのダンが突然話し始める。


「バ、バリー殿。突然話すのは止めてください。」


「お? なんだ、俺、セレネスの上着で寝てるの?? やだー!! マリアちゃ~ん」


起きたと思えば、私の胸ポケットから飛び出し、マリア嬢の許へトテトテと向かっていくハムスターに、ため息混じりに話しかける。


「バリー殿、どういう事ですか?」


「んー、魔法ってね、覚え方は2通り。教えて貰うか、自分で編み出すか。教えて貰うのは理屈が分かれば殆どの人が使える。アカデミーで生活魔法と、攻撃魔法の基礎を教わるだろ? だからセネレスとファジールは使える。けど、マリアちゃんは元は庶民だからね、アカデミーには行っていない。」


「えー! そうなのー??」


「あ! 失念してました……そうか、ならば……え? では生活してる中で自ら編み出したと? 攻撃魔法を??」


「攻撃魔法? って、火の玉が飛んで行ったりするやつですか? 私、そういったものは使えませんけど……」


「釜戸で火を使う時に、火力の調整をしたことない?? あとは漁師として魚を捕る時に、潜って銛なんかを使ってただろう? 他の人より捕れだかが良かったりしなかった??」


「火力は料理によって調節してましたけど……魚も、村では私が1番上手でした。何故か、魚が寄ってくるので捕りやすかったってのもありますけど……」


あー、そういうことか……


「普通の生活魔法は、釜戸に火をつけるだけで火力調節は薪で行います。魚も、水と風、あとは光属性の魔法なんかの合わせ技でしょうか……」


「え? そうなんですか??」


「集まってくるのは光魔法でカリスマ性を発揮したからでしょう。水魔法で海水を制御し、風魔法をブーストとして使った銛ならば魚達も逃げようが無いでしょうからね……」


そうだったんだ……と驚くマリア嬢を横目に、バリー殿との会話に戻る。


「基本を教えれば普通に使えますよね?」


「そうだね。2人ともこの旅中に教えて上げて! ランクはかなり上級だから、使えば使う程強力な魔法を覚えられる筈だし。」


「まっかせてぇー!!」


早速、ファジールが張り切ってマリア嬢に教え始める。が、勉強嫌いで、訓練も逃げ回っていた奴が上手く教えられる訳もなく、結局私が御者をしながら魔法について教える。


へぇー!! そうなの!? など、ファジールの反応が気になるところだが、さすがランク上位、マリア嬢はすぐ攻撃魔法の基礎を習得した。


休憩がてら、川縁の見晴らしの良い場所で昼食をとる。


「向こう岸の木にさ、基礎の攻撃魔法打ってみてよ! 届けば基礎は合格!!」


「分かりました、頑張ります!!」


何故か上から目線のファジールの言葉に素直に頷くマリア嬢。掌を向こう岸の木に向かわせ、目線も目標物に合わせると、気合いの入った声でファイアボール!! と唱えると、私が造り出す玉より少し小さな火の玉が、私の3倍くらいの早さで木に向かっていった。


火の玉は進むほどに大きくなり、木に到達するときにはリンゴサイズだったものが、カボチャ程の大きさになっていた。スピードがあったからか、ドーンッと手前の木にぶつかった音のあと、ドン、……ドン………と森の奥に向かっていく音が聞こえる。


昼食後、川を渡り様子を見に行く。1番に当たった木は倒れた後に燃えて炭になっていた。その先は焦げた草を辿り奥へすすむ。穴の空いた木、横を抉られ倒れた木を何本かやり過ごし、最終的に崖にクモの巣状のヒビと焦げ痕を確認した。


「あの、合格は頂けますか?」


「う、うん。合格!!」


「マリア嬢、魔法はここぞというときだけ使いましょうね。」


ハイ!! っと嬉しそうにするマリア嬢を横目にバリー殿を見れば、何事も無かったようにマリア嬢のストールに絡まって寝るダンが目に入った。


この子にこのまま、勇者レベルの魔法を使わせるべきかどうか、後でダンを通してバリー殿に確認しようと心に誓った。


読んで頂き、ありがとうございました。

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