89. K の誓い
幌馬車を従えて、主人公マリアを操る。森の中を進みシープスの街を目指す。
俺の知るRPGでは魔物と戦闘になった場合、特殊な個体以外、ほぼ100%魔物は攻撃してくる。……はずなのだが、このゲーム、マリアが近づくと魔物が逃げる、固まる、様子を見る。ばかりでやったりやられたりの応酬が無い。オートにしておけば、1ターン、長くて2ターンで終わる。
ぶっちゃけ手応えはまるでない。ただただ木を避け、人工物を探す。と、街への入り口を発見。そのまま街に入る。早速、武器屋の看板をみつけ向かおうとするが、何故かコントロールが利かない。
と、触っても居ないのにキャラクター達がどんどんと大きな邸に向かっていく。どうやら強制イベントかなにかのようだ。
邸に着くと、これまた勝手に扉が空き、玄関にいる人物に話しかける。自己紹介が始まり、鍾乳洞での討伐のお礼、そして奴隷商の話になる。しかし、これといって目ぼしい情報はないようだ。
そして、話しはシープスの長男ディアンの話になった。どうやら魔物の毒で動けないらしい。……あれ? もしや……
「あの、すみません。今、シープス領に着いたら強制イベントみたいなのが始まりまして……」
「シープスって……。あぁ、ディアンのイベントね。対象者が魔物の毒で動けないから、毒に効く薬を作る材料を採りにいくの。因みに、チョイスゲームはレールゲーム」
「レールゲーム??」
「4×4マスに、それぞれ違ったレールが書かれた15枚のパネルが嵌め込まれててね、スライドさせて道を繋げて行くゲームね。あれ? スライドゲームって言うんだっけ??」
「どちらかは分かりませんけど、なかなか難しそうですね……」
思わず苦笑いで返す。そうよねー、とプロデューサーも笑いながら、
「私は苦手。中央の4人のチョイスゲームは結構難しいものが多いのよね……。」
「あー、確かにねぇ。中央は頭を使うものが多いよね。」
「まあ、ミニゲームは乙ゲーを攻略目的にしない限り、出来なくても物語には直接影響無いので、適当にやっちゃって下さい。」
そうそう。とハルさんとプロデューサーは言い、シープスの商人と、申のダスキートについて、またボツ資料探しに戻った。
適当ね……と、ゲームを再開する。
中では、主人公がテッセルに希少な『雲の花』と、『空色の湧水』、『雨色の小瓶』をとって来るように依頼された。うん、これはRPGっぽい。
早速、コマンドから地図を選択。見てみればザックリとしたした地図に✕印が3つ付いている。取りあえず、今日は装備と雑貨を揃えつつ、武器屋のシウボに話を聞こう。と邸を出た瞬間、ピロンッと電子音が聞こえる。思わずスマホを取り出す。も何も無し。
当たり前だ。俺のスマホの音の設定はあれではない。とスマホから画面に視線を移す。と、うっすら画面に映るハルさんとプロデューサー……
「ぅおっ! 無言で後ろに立つの止めて下さい……」
クレームを入れるも、2人は画面に釘付けだ。
「開いて……」
「何をですか?」
「コトリのメールを開いて!!」
「画面の右上にある奴、開いて貰って良いかな?」
心なしか2人とも興奮しているように見える。言われた通りにメールのマークを選択。
「タイラ、入りました~!!」
ふざけた一文がテロップに表示された。
「やっぱり……」
「中に入ったって事だよねぇ……」
「………………」
イタズラ?? じゃ、無いのか?? って、このゲーム発売前だからネットには繋いで無いのか……。
じゃあ、本当に岡本さん? ゲーム内からメールを寄越したってこと?
「ど、どういう事ですか?? 岡本さんからのメールって事ですか?」
「そうだけど、タイラ自身からのメールじゃないの。この機能が使えるのが、人獣の印もちだけだって言ってたから、印もちの誰かと合流したのね。」
「タイラも黒目黒髪だから心配したけど、殺されなくてよかったよ……」
相変わらず、適応力凄いな……
「こちらからの連絡手段は?」
「うーん、誰から来たコトリか分からないからなぁ。」
「分かれば連絡とれるって事ですか?」
「そうだねぇ、マリアが布団に入るか、セスがマリアと一緒に教会に行ってお祈りするか……」
「それで連絡がとれるんですか?」
「そうすれば、我々とマリア達が話が出来る。マリア達の所にはファジールが居るから、出す相手さえ分かれば平良とも交信出来ると思う。」
「じゃあ、マリアを宿の布団に連れていってみます。」
武器屋に行くのは諦め、街の宿屋に向かう。ベッドの横に立つと、画面にコマンドの選択画面が表示された。 通信しますか? 勿論はいを選ぶ。
「どうすれば?」
「今まで平良が話していたんですけど……。とりあえず、私が話します。」
と、プロデューサーがヘッドホンを装着した。
「マリア……マリア、聞こえる?」
「その声は……プロデューサー神さま?」
「そう。ごめんなさいね、突然。えっと……今日は魔物の討伐、お疲れ様。」
「い、いえ! 見ていて下さったんですね!! ありがとうございます。」
「え、あ、うん。……それで、ちょっと聞きたいのだけれど……今日、コトリで平良が入ったって伝言が来たでしょ? あれ、誰からか解る??」
「言俐ですか? あぁ、お屋敷を出た時にセレネス様が言ってた……。あれは、リベル様からだったようですよ。意味が分からない。と仰ってましたが……」
リベル!? それってイチカが初めに会った兄弟の一人だったよな……?
「リベル!? あぁ、よかったぁー……じゃあ、タイラはあの2人と一緒に居るのね!!」
「あ、あの……プロデューサー神様……?」
「あ、ごめんごめん。悪いけど、ファジールにコトリを飛ばすようにお願いして。『了解! セレネス達と合流したら、祈りに来なさい』って……そう言えば伝わるから!」
よかった、よかった。とハルさんも呟いて、資料探しに戻る。え? もういいの!? プロデューサーも、神様としての話というより、久々に会った親戚同士の近況報告みたいな雑談になってますけど!?
結局、岡本さんについては、こちらで神様役をやっていたとは言わず、一華同様、こちらの世界から入り込んでしまったので保護をしてくれ、と伝えたそうだ。
この2人、適応力高すぎて逆に不安になる……俺はもう少し慎重に進めようと心に誓った。
読んで頂き、ありがとうございました。




