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84. T 失敗する

「リベル……もう、その辺にしてやれ……。」


物凄く不憫な奴を見るような目で俺を見る。


ん? リベル?? ガバッと顔を上げ目の前の鬼の形相の綺麗な顔をまじまじと見る。そして、これまた綺麗な顔をした男をみる。似ている……


「……フィルソン? ウリーボさん家のリベルとフィルソン!!」


突然名前を呼ばれた2人は、警戒を強め、リベルは俺から距離を取るように飛び退き、フィルソンはギラギラ光る刀を此方に向ける。


何故か俺と一緒に来たノリアスは、2人の後ろに庇われるように隠されている。


「あ……」


自分が仕出かした間違いに気づく。


「ち、違う! いや、あの、なんと言うか……ふ、2人は有名人だから!! 北の城下町で宿やってる3つ子でしょ?」


「「……」」


「北の宿? ねぇ、もしかして"チョ……チョ……なんとか"って宿?? セレネスって人とマリアって人知ってる?」


良い感じにノリアスが話に割って入ってくる。宿の名前忘れちゃってるけど……。フィルソンは俺から目を離さないが、リベルがノリアスに向き直り話を聞く。


ノリアスは、母の遺言で2人に会いに城下町に行く途中だとザックリ説明。その話は納得したのか警戒は少し和らぐも、俺への当たりはまだ強い。


「確かに、宿の3つ子としては有名かもしれないが、何故ウリーボだと知っている? その事は一部の者にしか知らせていない。」


「だ、誰から聞いたっけかなぁー……あー、思い出したらキチンとお知らせします。」


鬼から般若の顔に変化していたリベルだが、フゥ……っと1つ息をつくと、フィルソンとなにやらこそこそと話、


「分かった。取りあえずノリアスの同行者として一緒に城下町まで行くわよ。」


良かった……ノリアスは2人と同行するって感じになってたから、この森の中、付いてくるなと一人で置いていかれたらどうしようかと思った。


と、ん? なぜ俺は両手を縛られてる?? 無言でフィルソンにかつがれ馬に乗せられる。そして、後ろから抱え込むようにしてフィルソンが馬の手綱を握った。


俺は、どちらかと言えばモヤシ体型なので重くは無いだろうが、大の男が2人も乗って馬は大丈夫なのだろうか?そして、フィルソン……なんか、俺でごめんな……もっと可愛い女の子とかだったら抱えがいもあるだろうに……


宿まで戻るよ。と片付けを終え、何処かに言俐(コトリ)を飛ばしたリベルがノリアスを抱えて馬に乗ると、城下町に向けて歩きだした。


人獣2人が居るからか、魔物に襲われることも、ノリアスが勧誘に来られることもなく城下町を囲う塀が見えてくる。もっぱらリベルとノリアスが話しているのを黙って聞いていたフィルソンだったが、途中、2人には聞こえない程度の声でポソリと質問された。


「お前達は我々に害を為すつもりはあるのか?」


がっちりホールドされて、身動きが儘ならない俺は、顔をブンブンと左右に振る。


「全く、全然! 欠片も無いです!!」


声は小さいが、ハッキリ言いきる。


そうか。とこれ以上はなにも言わずに馬を進め、宿に着いた。


なんだろう……外郭の城門をくぐってここまで来る間、TVで見た事のある観光地に来たときに、あ、見たことあるー! って、思うのと似た気分になる。普通に家としての建造物が並んでいるのを見ると、ゲーム内だと忘れそうである。


食堂の方はオープンしているらしく、楽しそうに食事をするお客の声が聞こえてくる。


裏から宿に入り、客室に案内され、タオルと着替えを渡された。どうやらノリアスと2人で風呂に入れと言うことらしい。ありがたく借りて風呂に向かう。


ノリアスが壁に書かれた謎の文字を読み、難なく浴槽にお湯を貯めた。


「おぉ! すげぇ!! なに今の? もう一回やって!!」


「……なに、その反応?? 魔法なんて見慣れてるでしょ? って言うか、なんか変な事に反応するよね。まるで初めて見たみたいに……そういえば、僕の事ばっかり話して、タイラの話聞いてない気がする……」


「そ、そうかな……? と、取りあえず風呂に入っちゃおう! 多分、さっきの2人にも話さなきゃいけないだろうから、出てからゆっくり話すよ。」


「……約束だからね!!」


そういうと2人でゆっくり湯に浸かり、最後に湯をこぼしながら体を洗う。シャワーがないのでどうしようかと悩めば、ノリアスがキャッキャと楽しそうに、桶で掛けたようにザバザバとお湯を頭の上から魔法で降らす。


俺はと言えば、アップアップしながら体と髪に付いた泡を落とすと、ノリアスの頭を洗ってやる。ノリアスは嬉しそうに大人しく洗われると、自分も魔法でお湯をかぶり流していた。


風呂を出て、イチカが通ったであろう廊下に出る。と、驚いたことに、品の良いお爺さんがドアの横に立っていた。此方でございます。と有無を言わさないオーラを発し、俺たちを馬車に誘導した。


裏口から馬車に乗り込み、目的地も告げられずに連れて行かれたのは、どでかい城。ここは? とお爺さんに聞けば、北の国ノースキーの城、だと言う。そのまま城の門を通り、お爺さんに案内されるがまま付いていくと、城の中のシンプルな一室に通された。


中には誰も居ない。少々お待ちを。と言うと、メイドさん達がお茶やジュースを用意してくれたので、ノリアスと顔を見合わせながら頂いた。


紅茶とか、ペットボトルでしか飲んだことがないが、凄く良い香りで、美味しいものだと初めて知ったわ。思わず2回もおかわりをしちゃいました。

読んで頂き、ありがとうございました。

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