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80. I 待ち合わせ

オラウータンのオラウは両手を上げ、無抵抗を示したまま話を続ける。


「私は、研究者でソコソコの地位に居ます。殺されてしまえば、私がしている研究がストップすることは間違いないので、切り捨てられる事は無いと思います。人質としては最適でしょう。ここを出た後、正面を通って出ていって下さい。唯一、確実に罠が無い通りです。他は見張りが立っている場所以外は罠だらけですので……罠にかかればもう、逃げられないと思って下さい。」


「わかった。」


ハスキスさんが返事をし、バセットさんは杭を耳の横に構えている。私はただただ、成り行きを見守り、正面を通れというオラウの言葉にコクコクと頷いていた。


そっと部屋を出る。休憩中だったのか、椅子に座り、タバコを吸っていた見張りのおじさん……あ、お兄さんだった……が、咥えていたタバコをポロッと床に落とし、半分腰を浮かせた状態でこちらを見る。


「オ、オラウさん!!」


「騒ぐな!!」


ハスキスさんがドスの効いた声で一喝すると、萎縮したようにそのままストンと椅子に座った。椅子がガタガタと音を立てている。


見開いた目に映り込むように、バセットさんが杭をオラウに向けているのを強調し、誰にも言うなと一言残して先へ進む。


階段を登ると、見張りの人達の休憩所があったが、夜中だからかイビキが幾つか聞こえるだけで、人が出てくる気配はない。


オラウの案内に従いつつも、周りを警戒して進む。意外にもあっさり建物から出られた。オラウは本気で私達を逃がす気らしい。


「オイ! お前達何をしている?」


声がする方へ顔を向けると、男が怪訝そうに我々を見て、


「オラウさん!!」


オラウに杭が向けられているのを見ると、氷の弓矢を瞬時に作り、こちらに向かい構える。バセットさんは慌てるようすもなくオラウさんを盾にするようにその男の前に立つ。


「我々はここを出たいだけだ。この男も、無事に敷地を出たら解放しよう。仲間を呼んだり、抵抗したりしなければ殺生する気はない。」


男はオラウを見つめる。オラウが黙って頷くのを見ると、氷の弓矢を消す。案外、このオラウータンは人望があるのかも知れない。なんて思っていたら、ガバッとハスキスさんに抱き上げられた。というか、肩に米俵のように担がれた。グェッと声が出たが、大きくは無かったので周りには聞こえなかったようだ。


私は担がれたまま、バセットさんは、オラウを盾にしたまま、ジリジリと門に向かって進む。


門まで来る間に何人かの見張りに見つかったが、オラウに気づくと皆手を引いた。本人が言っていたように、人質としては絶大な効果があったようだ。


「明後日の夜、鐘が4つから2つ鳴るまで、グッドル領のドギルマンと言う酒場で待つ。」


囁くようにオラウにいうと、トンッとオラウを前に押し出し、全力で走り出した……。私はと言えば、ひたすらの苦行……担がれたまま、なす術もなくハスキスさんが止まるまで耐えました。下ろされた時には乗り物酔いのようにフラフラでした……。


「具合が悪いなら、自分に回復(ヒール)掛けたらいいんじゃないの?」


バセットさんの提案によりかけてみました! 胃の辺りを抑えてヒール! ちょっと格好つけて言ってみました。ホワッと温かくなるような感じと、軽い脱力感。でも、気持ち悪さは無くなった!! 魔法って素晴らしい!!


「感動してるところ悪いが、どうやらここは戌のグッドル領と丑のスタイン領の境辺りだ。グッドル領の街までは徒歩だと丸1日かかる……取りあえず一番近い村で馬車か馬を買おう。」


月明かりだけを頼りに、2人からはぐれないように歩く。追手があるかも知れない為、街道ではなく森の中を歩く。しょっちゅう躓くし、木の枝などで怪我をする。もう少し鍛えておけば良かった……こちらに来てから切実に思う。


どれくらい歩いたのか、小さな村にたどり着いた。真夜中なので当然ながら明かりの付いている家はない。が、村で一番大きそうな家の扉を叩く。


中から不機嫌そうなおじさんが顔を出した。村長さんだそうだ。とりあえず一晩の宿を頼むと断られたが、ハスキスさんの印を見せたところ態度が急変し、泊めて

貰える事になった。


魔法で沸かすお風呂に入り、軽く摘まめるものを出してくれた主人にお礼をいい、3人並んで布団に入る。疲れていたのか私はそこから記憶が無い。


◇◇◇◇


「イチカ、そろそろ起きろ。」


バセットさんの声で起こされる。昨日の疲労が抜けてない上に、筋肉痛が酷い。うー……っとゾンビのような動きで起き上がり、ソロリソロリと洗面台に向かう。どうした? と、ポンと肩を叩くハスキスさんに筋肉痛であることを伝えたものの、キョトンとされた。


「キンニクツウ?」


心底不思議そうに私を見る。人獣さん達は筋肉痛になることが無いのかしら??


とにかく、体が痛い事を伝えるとまたヒールを使えばいいと言われる。そりゃそうだ! とばかりに使えばあっさり痛みが消える。ほんと便利。魔法万歳!!


朝食を頂くと、バセットさんとハスキスさんが村長と何やら真剣に話している。どうやら奴隷商のアジトの話と、これからそれを伝えに領主の所まで行くことを伝えて馬を借りるらしい。


始めは難色を示したそうだが、どうにか馬を2頭借り、ここからは馬に乗って移動となる。私はバセットさんの前に乗せられ、お尻の痛みと戦いながら目的地に向かう。


着いたのは夕の鐘4つ頃。この世界は1日20時間、なので地球でいうと午後の4時か5時辺りか……。因に、1ヶ月は20日、一年は20ヶ月だそうだ。四季は無いそうだが国によって気候が違うらしい。


まず、グッドル領の領主に会って中央では禁止されている奴隷についての説明と、連絡を頼まなければいけない。が、貴族はアポもない人間とそうそう会うことは無いそう……


邸宅の前まで来ると、当然ながら門番に止められる。なので伝達を頼む。と燕尾服を着た初老の男性が出てきた。バセットさんを見て、フムと頷き、ハスキスさんを見て驚愕の表情を浮かべ、印を見せると なんと!! と叫んだ。


私は……チラッと見られただけで、特に何を言われるわけでもなく、お入り下さい。と応接室のような部屋に通された。


どうやら第一関門、突破出来たようである。

~メモ~ この世界の時間② まとめ


1時間→100分

1日 →20時間

1ヶ月→20日間

1年 →20ヶ月


1年を通してそう気候は変わらない。


読んで頂き、ありがとうございました。

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