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74. K とHとP

帝国に向かう前に、アイテムの補充等をしようと、近くのフレミッシュ領の街に立ち寄る。そこで宿屋に向かい一泊してHPやMPを最大まで回復させる。


朝になり、もう一度街を全て回った後、フレミッシュ邸に立ち寄る。すると、何故かファジールが着いていくと言い始めた。しかも、イチカを婚約者にすると喚いているようだ。


絶対連れていかん!! 拒否だ! 断固拒否!! と言うことで、仲間にしますか? のコマンドの イイエ を選択し続けているのだが、ハイ を選択するまで物語が進まないらしい。忌々しい。


と、1人では無かったことを思いだし、周りを見ればハルさんが苦笑いをしながらこちらを見ていた。


「んん、岡本さん、まだ起きないですかね?」


強制的に話題をかえる。


「あぁ、流石にそろそろ起こさないとねぇ。カズヤさんに任せっきりって訳にもいかないですしねぇ。」


「あぁ、本当に。こんな時間!? ごめんなさい、資料に見いっちゃって……平良、平良! そろそろ起きて!! 大分やすめたでしょ?」


プロデューサーが、彼の肩辺りをパシパシと叩きながら起こす。も、全く起きる気配がない。ハルさんがため息をつきながら、


「平良、流石に起きないと!」


少し大きめの声で起こそうとする。が、やはり無反応。


「平良? おい! 平良! ……平良??」


「起きないんですか?」


「嘘でしょ? 呼吸は?」


見れば背中が微かに上下している。


「しているようですね。」


二人がこちらを見る。


「……医者じゃないのでハッキリとは言えないですけど、一華とおなじような症状に見えます……。」


三人が一斉にゲームを映し出すモニターを見る。


「入っちゃったんですかねぇ…………?」


「ですかね……? 確認はどうすれば良いんでしょう??」


「ちょっと!! 2人とも何でそんなに落ち着いてるんですか!? どうしましょう……? 救急車! 救急車呼びましょう!!」


「少し、落ち着きましょうか……仮に、一華と同じならばすぐにどうこうは無いはずです。一華も現状、こちらではただ寝てるだけですから。岡本さんが同様の症状だとして、問題は栄養摂取とトイレ問題です。」


実際、一華は寝ているので食事も取らないし、トイレも行けない。今は点滴で栄養を流し入れて、トイレは管を着けている。素人では到底真似できない。


「そうだよねぇ、部屋で寝かせてるだけだと、肉体が使い物にならなくなるほうが早そうだよねぇ……。」


「「「………………」」」


「救急車を呼んで、イチカさんが入院してる病院に入れさせて貰えることが出来るかねぇ……?」


ハルさんはもう一度岡本さんに声をかける。突っ伏している状態から体を起こさせて揺さぶって見る。プロデューサーも何を思ったか、頬っぺたに氷を当てて、反応しないわぁー……などとやっている。


15分位色々やったが、やはり起きないので救急車を呼ぶ。妹が同じ様な症状で倒れて見て貰っている、と救急隊の方に話せば、同じ病院に確認を取り、そこに運んで貰った。付き添いにはプロデューサーが着いていくと言う。


「親御さんに連絡して、手続きだけしたら戻って来るので、ゲーム進めてて頂けますか?」


ハルさんに言う。


「そうだね、出来るところまでやってみるよ。カズヤさん、今日はありがとう。もし、イチカさ「待ってください、僕にもう少しやらせて貰えませんか?」…………良いのかい?」


お疲れ様でしたオーラを感じてあわてて食い下がる。プレイヤーであった岡本さんが出来なくなった今、プレイするのは社長であるハルさんとプロデューサーのみ。日中は仕事もあるだろうし、ゲームに割ける時間がそんなにある訳じゃないだろう。夜、交代でやったとして、クリア迄どれくらいかかる??


「許可を頂けるのであれば、2人がこちらの世界に戻って来るまでやらせて頂きたい。」


「僕たちは助かるからいいけど……カズヤさんだって仕事があるでしょ? そんなに休めないって言ってなかった??」


「……有休はたっぷり有ります。グチグチ言われるようなら、引き継ぎだけして辞めてきても構いません! どうかやらせて下さい。」


一華を戻さなければ!! 半信半疑だったことも忘れ、ゲームの世界から一華を救出することが目標になった。


◇◇◇◇


ゲームを再開する。同行することになったファジールの支度も終わらせ、森へ出る。と、移動が馬車になっていた。いつ調達したのだろう……?まあ、ゲームの進行にあまり関係ない無さそうなので放っておくが、ゲームの中の世界でもキャラクターがそれぞれ遺志を持ち生活をしているのだろうか……??


ファジールが一華を婚約者にすると言っていたのだから、少なくともこのキャラクターはプログラムの発言ではなく、この世界に入り込んだ一華に好感を持ったから出た発言なのだろう。


…………意地でも連れ戻してやる! 無理ならどうにか俺もこの世界に入ってやる。俺の目が届かない場所で、俺以外と幸せになるなんて絶対許さない!!

ポンっと肩に重みを感じた。ハルさんが覗き込むように俺を見ていた。


「大丈夫ですか? 気が逸るのは分かりますが、無理せずに休み休み進めてて下さい。休むのであれば仮眠室に案内しますよ。」


「……大丈夫です。ここ最近は特に忙しかった訳では無いので、ビール一杯呑んだ程度じゃ寝落ちはしません。」


「そう、じゃあ頼みます。僕は、さっき出てきた(さる)のダスキートについて調べます。プロデューサー曰く、没案にダスキートと戌の確執について書かれた資料を見た記憶があるそうなので……」


「分かりました。分岐があればまたお知らせします。」


ハルさんは後ろで資料を探し始める。


これまで、一華を守るために、優しく品行方正な王子を演じてきた。が、今回は王子の仮面で人を操ったところで解決は出来ない。とにかく慎重に、何一つ見落とすこと無く物語を進めなければ……


気合いを新たにまたゲームに向かった。

読んで頂き、ありがとうございました。

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