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73. F 旅立ちの準備をする

自分達の宿に戻り、部屋で休んだ次の日の朝、俺達の代わりに宿をやっている者が起こしに来た。


「フィル坊ちゃま、おはようございます。朝から申し訳ございませんが、ムーと言う男がどうしても坊ちゃまに謝らなければいけないことがあると、朝から裏口に来ておるのですが……どうなさいますか? 追い返してよろしいですか?」


「……おはよう、いや、俺が出よう。少し待つように言ってくれ。」


「畏まりました。」


宿に、俺付きの従者が派遣されてるのを忘れてた……。宿で暮らすようになって、離れてから結構経つが、相変わらず坊っちゃん呼びが抜けていないらしい。


顔を洗い、宿で普段来ていた庶民の服を着る。あまり待たせてもいけないと裏口に向かえば、何故かリベルの前で両膝を就いて項垂れるムーが居た。従者はそれを見てオロオロしている。


扉が開く音で気づいた3人がそれぞれ違った表情で俺を迎える。


「フィルソンさん、あの、すみませんでした!!」


開口一番、ムーが半泣きで謝ってくる。なんの事かは分からんが、あまりにも必死なので、


「よく分からんが、反省してくれているなら別にいい。」


「もう! 何のことか分からないのに簡単に返事をしないの! 何で謝ってるのかくらい聞きなさいよ!」


リベルに怒られて、ムーの話を聞く。先日買った髪飾りの話らしい。拾ったものをさも自分で作った様に売り付けた事で、リベルのみならず、セスにも何か言われたらしい。


昨日の午後の御用聞きの時に、俺達が帰ってくることを聞いて、あの日支払った代金を持って、朝から来たそうだ。正直、あの騒動の理由がハッキリしたし、多分、言わなきゃいけない事はリベルが言っているだろう。2度とするな、明日からまたよろしく頼む、と金もそのままに帰らせた。


リベルは何故か、ムーが付き合っている花屋の娘が気に入らないようでブチブチ言っていたが、旅の準備をし始めてそれも治まった。


「魔覇刀、砥に行かなくて平気かい?」


「そうだな。手入れはしているが、魔王の話が出てきた以上、清めの儀式はしておいたほうが良いだろう。」


「行くなら一緒に行くよ。儀式の最中の見張り位は出来るからね。」


代々、亥の印持ちに受け継がれる魔覇刀は、北の国が守る御神泉の底の石と水を使って、清め、研ぐ事でより切れ味が増すと言い伝えられている。


前回の大戦で、亥は後方支援の外郭の魔物討伐を任され、その時に清めの儀式が行われてからは一度も儀式が行われていない。


「そうだな、頼む。イチカの所に行く前に、装備なんかも見直して行こう。」


「バリーもセス達も、イチカを追うって言ってたわよね。無事に合流出来ると良いんだけど……」


「支度が出来次第、出発して言俐(コトリ)を飛ばしながら進むしかないな……。ダンを連れてるならバリーを通して連絡もつくだろうしな。」


そこから朝食をとり、それぞれ旅支度をしてから宿の弁当を受け取り、買い物をしてから御神泉に向かう。


馬で鐘4つ分位進んだ所に、結界で覆われた泉がある。


かなりの深さがある泉だが、透明度が高く底が綺麗に見える。条件によっては鏡のようにもなり、昔は姿だけでなく、心の中まで映すという伝説があり、真実の鏡もこの泉から出来たものだと言われている。


俺は早速服を脱ぐと泉に向かって祈りを捧げ、泉に潜り底にある石を1つ拾って浮かび上がる。不思議なことに、泉の底にある石は全て研ぎ石になっているそうだ。


ここで日が陰り始めたので、リベルが用意してくれていたテントに行く。二人で弁当を食べ、この日はそのまま眠りに着いた。


次の日、日の光がテントに届く頃に起き出すと、早速2人で研ぎ始める。


俺が研いでリベルが泉の水をかける。シャッ、シャッと音を響かせながら夢中で研ぐ。どのくらいそうしただろうか。刃がキラキラと光を放ち始める。


「どうだろう?」


「うーん、良いと思う。」


ふうっと息をつくと丁寧に水気を拭き取り、鞘にしまう。


片付けをしてる内にリベルが食事の用意をしていてくれた。祈りを捧げて、さぁ食べよう! と言うときに、結界を張ってある筈の場所で聞く筈のない声が聞こえる。


「…………火が……………………人……居る………」


「…………………………………」


「…………なの!?」


段々声が近づくのに従い、何故か聞こえる声が小さくなっていく。我々に隠れてこちらを覗きたいらしい。


だが、あそこまで大きな声で喋っていたものを今頃小さくしても、近くに人が居るのはバレバレである。しかも、行動が雑過ぎて、泉の周りの木がガサガサ揺れるものだから、動物達が警戒しまくりで何処にいるかさえも分かってしまう。


「どうするべきかな…………?」


「どうも何も、あれは隠れてるつもりなのかしら? 歩く度に小枝を踏むポキッって音も聞こえてるわよ……」


リベルが言うとおり、周りの状況把握も出来てないようだ。と呆れていると、グゥゥゥゥーーーと盛大なる自己主張が聞こえた。


「あ、ヤバッ!! 聞こえたかな? …………大丈夫そう。気付いてないみたい。普通に2人で話してる!」


頑張ってるのは認めるが、丸聞こえである。その"普通に話してる"内容をキチンと聞いたほうがいいと思うぞ!! と、仕方ない、こちらから行くかと腰を上げようとすると、


「はぁー、タイラ。もう隠れてても意味ないから……。ほら、立って! 敵じゃないって示さないと殺される可能性だってあるんだからね!!」


……2人居るとは思っていたが、まさか子どもが出てくるとは思わなかった。刀を持った小さな子どもは足下に刀を置くと、手が届かないところまで下がってこちらを見上げている。


もう1人も、驚いたことに黒髪黒目のくたびれたような男がヨロヨロと両手の平を頭の上に掲げて出てくる。普通に話していたので、天創人かどうかの判断がつかないが、オーラはイチカと似たような色をしているので一応様子をみる。


「お兄さん達、僕達は敵じゃないので少し話を聞いて欲しい!」


子供が話すと、横の男がブンブンと首を上下に振る。良く分からないが、子供には飯を食わしてやろうと話を聞くことを承諾し、食べ物を分けてやる。


しばらくすると、子供にやった食料は何故か男の胃袋に全て納まっていた。


昨日の朝の、リベルによるムーへの説教と同じ場面が繰り返される。我が姉ながら嫁入り前の娘がしてはいけないであろう形相だろうと思う。


俺はと言えば、膝をつき、項垂れながら説教を受ける男を、青い顔で見守る子供を宥める事に必死だった。

~メモ~ のこ世界の時間


後に出てきますが……1日、20時間


朝 夕

5時→鐘が1つ 12時→6つ

6時→6つ 14時→4つ

8時→4つ 16時→2つ

10時→2つ


16時以降はうるさいので鳴らない。


という設定です。


読んで頂き、ありがとうございました。

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