67. T とKと
……静かだな。サワサワと風が葉っぱを揺する音が聞こえる。
うん。おかしい。俺は会議室で仮眠中のはず。サワサワサワーなんて心地いい風を感じるのも、葉が擦れる音がするのもおかしいっつーの!!
ガバッと起き上がり、自分の太ももに目を落とす。夢? 夢だよねぇ。あれー?太ももの下が土にみえる……。頬っぺたもつねれば痛い。
「おじさん、何してるの?」
声を聞き顔を上げれば、抜き身のままの刀を肩にかけて、鞘を引き摺りながら先程の超絶可愛い男の子がこちらを見ている。
「……何をしてるんだろうねぇ。」
「よく分からないけど、ここに寝てると魔物に襲われるよ? あと、おじさん髪の毛も目も黒くて印が無いから、人族や獣人にも襲われるかもね。人獣になんて見つかれば問答無用で選別されて、使えなきゃ殺されちゃうよ!」
人族、獣人、人獣……オマケにノースキー王国。うん、間違いない……ゲームの中。え、俺も現実逃避したってこと!?
「……おじさん?」
「あ、あぁ。心配してくれてありがとう。取りあえずおじさん、迷子みたいなんだ。良かったらここが北の森の何処か教えてくれないかい??」
テンパりすぎてどうしていいか分からない。取りあえず、現状把握とばかりに男の子に聞けば、男の子は何故か不貞腐れた様な顔をして、
「おじさんも迷子なの?」
「ん?? も? もってことは、君は迷子なのかい??」
「うん。……なんだ、おじさんも迷子なのか。起きるまで待ってて損した!」
男の子はさっさと歩きだそうとする。
「待って待って!! 君も迷子なら1人で行かせるわけには行かないよ。お父さんとお母さんとどこではぐれたか覚えてない?」
男の子は大きくため息をつくと、父親はおらず、母親は殺されたから遺言を実行しようと家を出てきたと話してくれた。
5才位にみえるけど、人族では無いのだろうか?? 物凄く流暢に話すし、理路整然と説明してくれる。実際は結構年がいってるのか??
「何処に行くつもりなの? おじいさんとか、おばあさんのお家?」
「ううん、人を訪ねて城下町まで行く。」
「城下町??」
「うん。『チョトツ……』なんだっけかな?? まあ、宿まで行ってセレネスとマリアって人に会うつもりだった……。でも、全然たどり着けなくて、もう2日も森の中にいる。」
おおっと、幸運?? 知ってる名前が出てきた!!
「ね、ねぇ。城下町? おじさんも一緒に行きたいんだけど、どうかな??」
「……場所は分かるの? おじさんも迷子なんだよね??」
そうだった……。ゲームじゃないからすぐに色々出来ないじゃん。
「そ、そうだよね。マップとかがあれば何とかなるんだけど……」
〈ヴゥン〉という音と共に……ハイ、目の前に何か出てきました。……マップだよね。アイコン出てるし……。ただ、埋めていくタイプかぁー。じゃあ歩き回らなきゃ目的地は見つからないな……。でも、幸いなことに、東西南北は分かるようになった。
記憶をたどり、ノースキー周辺を思い出す。そういえば……
「君は何処から来たの? ウリーボ領? フレミッシュ領?? それとも、他の貴族が治めてる領地かな?」
「たぶん、ウリーボ領の森の中。」
えーと……ならば、マップで言えば左斜め下に行けば城下町があるはず……と、男の子を誘って歩き始めた。
「そういえば、名乗ってなかったね。俺は平良、岡本平良って言います。」
「……ノリアス。」
男の子は何故かとても嬉しそうに名乗り、トコトコと俺の前を歩き、振り返りながら話す。持っていた刀は長く、腰に挿すと引き擦るので肩に担いでいる。邪魔そうなので、持とうか? と聞いたが、大丈夫と断られてしまった。
そのまま日が陰るまで南南西に向かって2人で歩き続けた。
◇◇◇◇
「ありがとうございました。だいぶ流れはつかめました。」
ハルさんとプロデューサーにお礼をいい、机に突っ伏す岡本さんに声をかける。も、全然動かない。
「あー、さっきお酒飲みました??」
「はい。ビール一杯だけですけど……」
「じゃあ多分、朝まで起きないかな。夕べも殆ど寝てないし……」
「平良はお酒弱くは無いんだけどねぇ……体調によって抜けるタイミングが大分変わる子だから……」
いやいや、起きて貰わないとゲームが進まない……。どうするのかと思えば、
「カズヤさん、ゲームは出来ます? 出来るならやって貰えると助かります。」
プロデューサーの意見にハルさんがうんうんと頷いている。
発売前と聞いたが、部外者がプレイしていいのだろうか??とも思ったが、岡本さんを起こす気はないようだ。
「分かりました。じゃあ、岡本さんが起きるまで進めさせて貰いますね。……えーと、猫族を探すのと、フレミッシュ領の勇者の証を取りに行くんでしたよね。」
確認をとりながら始める。猫族のアジトのある町の住民に話を聞くも有益な情報は出てこない。
町を出て森の中に入れば、マリア・セレネス・ファジールの順で並んでいることになっていた。
「このままご神木に向かって良いですか??」
「そうですね、地図もあるし、鍵であるファジールも居ますから行っちゃいましょうか。」
そう言われ、ご神木に到着すると、そこには東の国王、フレミッシュ公を筆頭とした護衛達、人獣の宰相のトラット公、それに猫族が数人。
片っ端から話を聞く。どうやら猫族は勇者の証やファジール、イチカ等を盾にとり、神力を分けてもらい完全な人獣になりたかったらしい。が、勇者の証がある場所を見つけたものの、鍵が見つからずにウロウロしている所を御用となったそうだ。
東の国のゴタゴタは取りあえず後回し。猫族に話を聞いてみる。
『取引のある奴隷商は、西の国、申の公爵のところの、廃嫡された長男、ダスキートだ。』
猫族の話を後ろで読んでいた二人がダスキート!? と慌てて資料を調べ始めたのを横目に話を進める。
『買い付けた奴隷は、一旦帝国内に集められて、その後、港から船に乗せられ西に連れていかれる。その後、オークション会場で競りにかけられるはずだ。』
……世界地図を開いてみる。のこ世界は西の国と呼ばれる島を三日月型の大陸が覆っている様な形の世界らしい。
それ以外にも島らしきものもあるが、行ったことが無いからか、北と東の国以外は少し暗くなっている。
「この先、帝国か西の国だそうですけどどうします?」
「まだ連れていかれてない事を祈って帝国ですかね……」
「分かりました。」
僕は指示通り大陸の中央を牛耳る帝国セクトリアに向かう事にした。
読んで頂き、ありがとうございました。




