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66. K の内情

一華と家族になったのは、小学生になる少し前。


一華の父親と、俺の母親の再婚によって義兄弟になった。再婚前から、ちょくちょく一緒に遊びに行っていたので仲はよかったのだが、今日から一緒に暮らすぞ! ってなった日に、


「おにいちゃんは、いちかのほんとのおにいちゃんになったから、きょうからずっといっしょね!!」


とニコニコしながら言われた瞬間から、俺は一華の兄になった。


一華は、父親似のクリクリとした大きな目と、写真の母親に似た小ぶりの鼻とぷっくりした唇が愛らしい、本当に可愛い子供だった。


俺は兄らしく、一華の側でずっと守る事を誓い、いつも一緒にいた。


しばらくすると、両親が新規開発地区の建て売り一軒家を購入し、引っ越しをした。


同じ日、同じ時間帯に引っ越しをしていたのが隣の家族。後に家族ぐるみの付き合いが始まる佐東(さとう)一家。


この日から一華がお兄ちゃんと呼ぶ人間が1人増えた。俺と同じ年の大輔(だいすけ)だ。


大輔も一華を本当の妹のように可愛がり、俺と一緒に一華を守る誓いをたてた。


イチカが小学生になると、マセタ年下どもが、一華の気を引こうと、つまらない嫌がらせをするようになった。


俺と大輔は裏からそんなバカな年下どもを先輩として()()して一華を守るようになった。そうこうするうち、一華にちかずく男どもは減ったと……言うよりいなくなったようだ。


一華が中学、俺達が高校生になると、さすがに近くで守ってやることが難しくなった。幸いなことに、俺も大輔もそこそこ整った顔立ちなので女の子達にはモテた。なので、大輔と共に一華を使って俺達に近づく女どもを逆に利用し、一華を男達から守った。そして、一華を一段下げて扱う事で、女共につまらない嫉妬心を起こさせず、庇護する対象として扱うように誘導した。


そんな事を繰り返した為、一華が高校を卒業する頃には、俺達は女関係にだらしないクズだという印象が出来上がっていた。それでも、ずっと、ずーっと守ってきたのに……一年前のお盆休みに大輔と一華が手を繋ぎ幸せそうに歩く姿を目撃した。


大輔は高校卒業と同時に隣県へ引っ越した。サッカー選手としてJ1昇格を目指すチームに入ったらしい。普段は練習に加え、子供達に教えたりもしているらしい。正直、地元から離れたと思って油断していた。あの2人が付き合うなどと微塵も思ってなかった。何故なら、アイツもお兄ちゃんと呼ばれていたから……。


許せなかった。血が繋がっていないのも、お兄ちゃんと呼ばれることも一緒なのに、一華の横で笑っているのが、なぜ俺じゃないんだ!! そう思った。


2人の関係を知ってからすぐ、行動を起こした。アイツに酒を飲ませ、近況を根掘り葉掘り聞き出し、ストーカーチックな女が居て困っていること、そろそろ身を固める為に選手ではなく、社員としてチームに関わること等を聞き出した。そして、その相手が一華だと言うことも……。


俺は大輔のストーカーを探した。どうやら大輔には一部の熱狂的なファンが居るらしく、ストーカー紛いの事をする人間が1人や2人では無いことを知った。その中から一華に似た雰囲気の女に近づき、アイツの好みだと、一華と同じ髪型、化粧の仕方、香水から、シャンプー、リンスなど、何から何まで同じになるように教えてやった。


2か月後、大輔が帰って来た時に、俺も彼女が欲しいから付き合えと無理やり合コンに誘った。勿論、例のストーカーも。そして、飲ませて、飲ませて、飲ませてから、潰れた所でストーカーと共にタクシーに乗せてやった。どうやらストーカーはその後、いい仕事をしたらしい。


3か月後に子供が出来たと大輔の許にやって来た。事情を知った大輔の両親は責任を取れと、ストーカーと結婚することを進め、安定期に入ったらすぐ結婚式をと慌てて支度を始めた。


極秘に付き合っていた一華とは破局したらしい。あんな奴の事で泣き腫らす一華が少し憎たらしいと思ったので、脳内お花畑の両親が無神経に結婚式に誘うのを黙って見ていた。


何だかんだと、一華に近づく努力を惜しまないストーカーの中で着々と子は育ち、その事実を受け止め、罪の無い子供の為にと覚悟を決めた大輔を見た一華は、やっと現実を見たらしい。式の最中も、二次会でも一度も新婦を見なかった。


帰ってから慰めてやろうと気にしていたのだが、気づいたら会場から居なくなっていた。


そして、この事態だ。正直、この岡本と言う男の話を信じてる訳ではない。が、スマホのムービーを見せられ、キャラクターがあの目で主人公を見上げた場面を見た時、一華に間違いないないと思った。少なくともモデルにはなってるだろうと。


ならば、何処かにあの目を向けられた奴がいる筈だ。俺の一番好きな、少しいじけながらなんでそんな事するの? と訴えるような視線。ただの知り合いには絶対見せない視線を見た奴を突き止めるために荒唐無稽な話に乗ってここまで来たんだ。


取りあえず、ここの情報を少しでも引き出そうと、上司と紹介されたハルさんとプロデューサーに色々聞こうと思う。

岡本は徹夜明けで呑んだとかで先程からフラフラしている。少し寝て貰って、起きたところで話を聞こう。


何がなんでも、アイツのあの目を向けられたであろう奴を突き止めてやる。

読んで頂き、ありがとうございました。

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