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64. T 、罰ゲーム

「お待たせしました。誘っておきながら遅れてしまって……」


「いえ、俺も今来たところなんで……」


駅近くのチェーン店の居酒屋の半個室。まだ早い時間だからかお客もまばらでどちらかといえば静か。


「ご注文お決まりになりましたらボタンでお呼びください~!」


と、アルバイトであろう女の子がメニューを置いて個室から出ていく。

ドリンクとアルコールのメニューを眺め、見た感じ、ワインとかオシャレなカクテルとか似合いそう……などと思っていたら


「とりあえずは生かな。」


案外、オヤジ臭い一言。いや、俺と同じ年なんだからそりゃそうか。とカズヤさんに同調して同じものを頼み、摘まみも幾つか頼んでみる。


当たり障りのない話をしつつ、ビールと摘まみが揃ったところで、カズヤさんから話を振ってきた。


「さっき、病室での一華の話なんだけど……なんでああ思ったのか、詳しく話して貰ってもいいですか?」


早速核心ですか……。旨く話せると良いけど……。


「怒らないで聴いて欲しいんですけど……」


と、前置きして一昨日からの一連の出来事を順を追って話す。案の定、話を聞いているカズヤさんはみるみる般若に代わっていく。うわー、怖いよー……と内心思いつつも、取りあえずスマホにコピーしたムービーも見せてみる。


「………………」


イチカをと名乗る女性が出てくると、酷く驚いた顔をして食い入るように見たあと、黙ってスマホを返してくれた。その顔は困惑と疑いをない交ぜにしたイケメンが台無しになるような微妙な表情だった。


「幾つか質問させて下さい。」


「はい、何なりと。って言ってもこの事象に対してはあんまりよく分かって無いので全て答えられるかは分かりませんけど……」


「いや、聞きたいのは貴方(あなた)について。まず、岡本さんのご出身は?」


「へ?」


予想外の質問に、間の抜けた声が出る。


「出身? 俺の?? え、ここ。ここです。ここが地元で、大学で一旦県外に出ましたけど、その後はまた戻ってきました。」


「何処の大学ですか?」


「関西の……」


「あぁ、ならば良いです。」


ならば良いですとはどういう事か?


「妹さんや仲のいい女性は居ますか? 親戚なども含めて。」


「いや、姉は居ますが妹は居ませんね。この年になると親戚付き合いも親のみですし、仲のいい女性に関しては……悲しいかな、ここ何年かマッタクおりません。」


「……失礼しました。」


いや、憐れまないで……


「最後に、会社にS県出身者やO女子大、あと、サッカーのJチームの大ファンの人なんかが近くに居ますか?」


「最後の質問多いですね……。出身はどうでしょう? でも、帰省したってときのお土産でそこの県のものがあったことは無いな……。あと、専門の学校に行ってた人間が多いので、女の子達もO女子大の子は居なかったと思います。あと、サッカーより野球ファンの方が多いですね。俺はスポーツなんかは全くなんで……なのでJチーム? の話も何もしないので、居たとしても分かりませんね。」


「ありがとうございます。すみません、色々聞いてしまって……。」


ほんと、今の質問、ゲームと関係あります??


「……結論から言えば、取りあえず岡本さんのお話しを信じる方向で……」


「え? ホントに??」


いや、信じて貰えるなら有難いけれども……さっきの質問だけで?? アッサリしすぎてない??


「実は、私も会社でSEをしてまして……」


「そうなんですか!?」


「はい、なのでこのムービーやゲームのプログラムなんかも、専門では無いにしろ作成に時間もお金もかかることは分かります。それに……先程の見せていただいたムービー。黒子はたしかに一華にも同じ位置にあります。それより……驚いたのですが、髪飾りをむしり取られて恨めしそうに見上げる目!! 小さい頃から、僕がからかったりするとよくあの目で睨まれました……。」


おお、さすが身内。俺達では分からない違いを早速発見!!


「それにしても……現実逃避のスキルね。こんなことがあるんですね。病院での岡本さんの質問も、繋がりました。フフ、でも、岡本さんも、その上司の方も、先程のプロデューサーさんも仮説のたて方が凄いですね。」


「いや、もう、何せ組んだ覚えもないものですしね。イタズラにしては時間もお金もかかるような事ですから……」


「確かに。イタズラの範疇では無いでしょうね。……ところで、私も実際にそのゲームを見せていただくことは出来ないでしょうか?」


おっ! 意外と協力的!!


「勿論です!! 正直、この仮説だと、イチカさんは現実逃避したくなるような事があってこの世界に逃げ込んだ訳ですから、我々が話したところで、こちらの世界に戻る気になるか心配だったんですよ。」


「戻る方法は分かっているのですか??」


「残念ながらまだです……プレイしてるうちに見つかればいいのですが……」


「……よし、今からゲームをしに行きましょう!!」


「へ?」


本日、2度目の間が抜けた返事。


「いやいや、今日はもう……」


「わがままなのは分かってます! でも、明日には転院してしまいますし、私もそう長く仕事を休んでいられません。岡本さんの上司の方に連絡をとって頂いて、どうにかならないでしょうか? お願いします!」


えー、出来れば今日は帰りたいなぁー……断って!! と心のなかで祈りつつ、ハルさんに聞いてみる。と、あっさりオッケーが出た。マジかよ……。


しかも、ハルさんも自宅に居るらしいのに、戻って来るって話になった。いや、元気だな……。


今日は寝てない上に、1杯とはいえアルコールを飲んだからね!! 徹夜は無理だからね!! と、心のなかで文句を言いつつ、大人しくカズヤさんと会社へ向かいました。

読んで頂き、ありがとうございました。

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