60. S 、国家機密を知る
フレミッシュ公爵に戻ってきた。まだ、ファジールは見つかってないようだ。
取りあえず、証のある御神木まで行ったことと、そこで拾った証明書を見せる。これは……とフレミッシュ公爵が話してくれた。
東の国の秘密。
帝国が出来、4人の神獣で国をそれぞれ興した時に、人獣は各国3種まで、1種を帝国に渡すと協定を組んだ。
今、公爵から聞いた話しは初代の東の神獣が協定に反し、4種目の動物に神力を与えたことの暴露だ。遠い昔の話しとはいえ、国家機密に当たるのではないだろうか??
何故か聞いたこちらがハラハしてしまう。と、ここでバリー殿が口を挟んできた。
「突然の発言失礼致します。カピクールのバリーです。フレミッシュ公、お久しぶりでございます。」
フレミッシュ公爵は驚いて、私の肩に居るハムスターを見る。
「おや、ずいぶん久しぶりだね、バリー様。ずいぶん小さくなって……」
ずいぶん小さくなって……って感想は始めて聞いたな……。
「猫族が人獣になれなかった理由は東の国には伝わって無いのですか?」
「あぁ、公式な記録どころか、口伝も手記も何も残って居ないようだ。当事者の一人のはずのトラット公爵家も知らないようだから、知りたければ猫族を捕まえるしかないんだろうな……。」
「捕まえて聞いたりはしないのですか?」
興味本意で聞いてみる。
「どんな理由であれ、彼らの辿ったであろう不遇は消えないだろうからな……。助力を求められれば応じるが、こちらから何かするつもりはない。但し、今回、ファジールが戻らぬのが猫族のせいだと決まれば、容赦なく叩かせて貰う。」
うん、寝た獅子は起こさないに限るね。元は卯だけど……
「ま、何にせよ、王族と正式な人獣以外は入れない事になってる場所に入った猫族とイチカ? は、一度、東の裁きを受ける事になるだろうから捕まえなくちゃね。」
「「イチカもですか??」」
「そうだね、北の国に捕まる前にね!」
あぁ、流石慈悲深いと噂の卯の公爵。見つけて保護して下さる気らしい。私もマリア嬢も黙って頭を下げた。
バタバタと格式高いお屋敷には似つかわしくない足音が響く。
身だしなみを気にしているのか、一拍置いてから扉のノック音が響く。
「入れ。」
入ってきたのは、見習いフットマンだった。入ってくるなり恭しく頭を下げると、我々を少し気にする素振りを見せる。
「構わぬ、そのまま話せ。」
「はい。ファジール様が猫族のごろつきに拐われたとの情報を入手致しました。」
「で?」
「奴等の拠点が森ではなく街にあるようですので、衛兵を使う許可を頂きたく……。」
「許可する。私の名前で命を出せ。見つけた者には賞金を出そう。手配は任せる。」
「畏まりました。」
フットマンはまた頭を下げると部屋を出ていった。
「我々も探しに行きます。ファジール君が居なければ証を頂けないですからね。」
「君たちが協力してくれるならありがたい。よろしく頼む。」
屋敷を出ると、まず宿を取った。部屋に入りバリー殿に話しかける。
「人探しといえば、バリー殿。眷属の話を聞いてませんか?」
「あー、それがねぇ……。残念ながらこの街では俺は役立たずだと思う。」
「何でです?」
「猫がね、苦手なんだよ。」
「そうなんですか? どんな嫌み貴族でもサラッとかわすバリー殿にしては珍しいですね。」
「俺ってそんな評価なの!? ってかね、さっきフレミッシュ公が言ってたでしょ? 猫が寅に変わったって。あれね、うちのご先祖様が関わってるらしくてね……子族は猫族に恨まれてる、いや、呪われてる? 感じ。だから普通の猫が近寄るだけで本能が警鐘を鳴らして、その場から離れちゃう。 」
あ、もしかして……
「イチカを見失ったのも、猫族が来て見張りが居なくなったせい??」
「そう。一斉に逃げ出して怖くて戻れなかったってさ。」
「……それは責められませんね。何せバリーさんも嫌そうですから。」
「そうだな。出来れば猫族と関わるのはごめん被りたい。」
「わかりました。そのかわり、一つ協力して下さい。」
私たちはバリー殿ことダンを小さなかごに入れ、逃げ出さない様にすると、町中を歩き回った。バリー殿が行きたいと言う方とは逆に進み、ある雑貨店へたどり着く。
プルプルと小刻みに震えているバリー殿が可愛そうなので、ここで解放し、先に宿で待っていて貰う。
我々は客を装い中に入る。普通なら居るはずの店番もおらず、店内はシンッと静かだ。
失礼! と一応声をかけてから店中を見て回る。と、階段の裏に隠されるように付けられたボタンを見つけた。迷うこと無くボタンを押せば、地下への階段が現れる。
中は以外に広くキレイだった。牢が2つあり、一つに人の気配がある。牢の扉を開けば何とビックリ、開いている。中の人に目を凝らせば
「セス兄さま!!」
聞き覚えがある声が近づいてくる。オイ、待て。自分の体格を考えろ!! と言いたくなるようなタックルを喰らう。
内心、ぐふぅ と言いつつ、ファジールに声をかける。
「怪我はないか? お前が居なくなって、屋敷中の者が探していたぞ!!」
「セス兄さま! 僕と一緒に捕まっていた女の子が奴隷市場に売られちゃった!! 助けてあげて!」
私のお説教などそっちのけで、その子を助けろと騒ぐ。そう言えば、イチカが猫族と一緒にいるはず……
この後、ファジールの言う女の子と、イチカの特徴をすり合わせ、やはり連れ去られたのはイチカの事かと愕然とするのだった。
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