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58. S 迷子

フレミッシュ公爵とマリア嬢と共に公爵邸に来てすぐ、長男のファジールが居なくなったと屋敷の者が公爵に告げる。


ファジールは茶会等の出席者の中で、一番年下で引っ込み思案。いつも姉のホードル嬢にくっついていて、剣術やかくれんぼなど、男同士の遊びに混ざる事は殆ど無く、かといって女同士のお喋りにも混じれず、涙目になっているところを何度か声をかけて連れ出した事がある。

なので、同年代の中では姉のホードルを抜けば一番懐かれてるんじゃないかと思う。


普段は屋敷から殆ど出ないそうなのだが、今日に限って一人でふらふらと出掛けたらしく、昼を過ぎても帰って来ないので屋敷の手の空く人達皆で探し回っているらしい。


「ふぅ、ファジーも何故このような時に……」

「お忙しそうですので、われわれは証を受け取り次第、宿をとりに一旦、街に戻ります。出立は明日にする予定なので、それまでは我々もファジール君を一緒に探しますよ。」

「いや、それが……」


公爵は言いにくそうに我々に告げた。


「我々東の国は、勇者の鎧の胴をお預かりしている。」

「はい、存じております。」

「……(トラ)のトラット公爵家が保管場所の地図を、我々、()のフレミッシュ公爵家が保管場所の鍵を保管している。」

「……? はい、それも先程ご説明頂きました。トラット公爵には地図を頂いたので、あと、鍵を頂ければ我々だけで行って参ります。」


そう言うと、フレミッシュ公爵は困り果てた顔で、


「鍵はファジールだ。」

「はいー?」


詳しく聞けば、地図が示す場所は、東の国の御神木がある場所。その御神木に虚があり、その中を異空間と繋げて保管しているらしい。

その異空間を繋げる鍵となるのがファジールなんだそうだ。


「証を渡したいのは山々だが、ファジールが居ないことにはどうにもならない。申し訳ないが、ふたりも捜索してくれ。」

「「……御意。」」


マリア嬢と共に森にはいる。メイドや執事、コック服を着た者まで探索に加わっている。メイド等は顔を涙でグシャグシャにして可愛そうな程だ。


我々は一応、人族では入れない御神木の方まで足を伸ばして探索することにした。


◇◇◇◇


御神木の周りはとてもキレイな気を纏い、魔素が殆ど無かった。

証が隠されている虚をみれば、異空間とは繋がっていないからか、人一人入れるほどの穴がぽっかりと空いていた。


中に入ってみれば、カツンと足に当たる物があり、拾い上げてみる。王家が使用する珍しい板で出来た何かの証明書のようだ。

文字は掠れていてちゃんと読めないし、角なども削れていて相当古いものだとわかる。取りあえず王家専用の板を使用しているのであれば、重要な物なのだろう。フレミッシュ公爵に渡すべく大事に持ち帰る。


確認のためと木の周りを一周すれば、根元に茶色のフルフル動く物体を見つけてマリア嬢に声をかける。


「あれは何ですかね?」

「動物……? リスではないでしょうか?」

「リス……。ならばバリー殿に連絡が取れるかもしれない!」


逃がさないようにそっと近づき、小声で話しかける。


「おい、リス君!」

「なに? ……あれ?? マリア殿?」


おぉ? リスじゃないのか? っていうかしゃべる上に、マリア嬢を知ってる?


「あ、セレネスも居るじゃないか!! ちょうど良かった! ここら辺でイチカを見ませんでしたか?」

「え? もしかしてバリー殿?? フィル達からイチカと一緒に居ると聞きましたが??」


と、いえば、突然涙をボロボロ流しながら口調がコロコロ変わる一人芝居を始めた。

どうやら、体の持ち主の我が強く出てしまい、身体の借り受けがキチンと出来てないようだ。


「「………………」」

「……見苦しいものを見せたね……、んん、改めて。この体はダン。ハムスターだ。本来ならイチカにくっついて行動を共にする予定だったんだがな、不測の事態ではぐれてしまった。なので、もしイチカを見つけたら、ネズミでもリスでもモモンガでも良いから話しかけてくれと伝えて貰えるか?」


正直、宛が外れた。バリー殿がイチカと一緒に居てくれれば、何とか探しようがあると楽観視していた部分もあり、まさかはぐれてるとは思わなかった……。

隣では、マリア嬢が神託について話している。


「なんと!? 神より神託で、魔王ではなくイチカを探してると?」


やはり、魔王よりイチカを優先したことに驚いているらしい。が、ならば一緒に行く! とマリア殿の足にしがみつく。

あの人、眷属を使ってそういったあざとい事をするのは昔から変わらないな……と、少し遠い目で眺めたが、どうやらマリア嬢には効かないようだ。ペリっと足元から剥がし、ダンをつまみ上げると、私の肩をつつき先出した手の上にポトリと落とした。

その扱い傷つくー!! と騒いでいたバリー殿だったが、マリア嬢が相手をしないので諦めたようだ。ただ、私の肩で反省会をするのはやめて欲しい。


取りあえず気が済むまで愚痴れば大人しくなるだろう。マリア嬢とバリー殿かダンなのかわからないが、ハムスターも一緒に連れてフレミッシュ公爵邸に戻った。



読んで頂き、ありがとうございました。

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