56. S の愚痴
ジャワ嬢に連れられて城に来た。と、あれよあれよとマリア嬢と引き離され、応接室に押し込まれる。
どうやら勇者だと通達が来ているらしく、やはり魔王の噂を聞いた王さまから証を頂くらしい。
私はと言えば、部屋にお茶を運んで来たメイドを捕まえ、リベル達の居場所を聞く。分かりません。とすげなく言われてしまったので、部屋の出入り口に立つ騎士に聞く。と、庶民の犯罪者や獣人を居れておく外牢に入れられている。と物凄く困ったように教えてくれた。
あいつらは一体何をやらかしたんだ……。
そこに行きたいのだか? と言えば許可を取って参ります。と部屋の外で待機している兵士に声をかける。
暫くすると部屋をノックする音が聞こえ、ご案内致しますと先導騎士の後に続く。城の階段を下り、廊下を渡り、また階段を下りる。そして、さらに廊下を進んで、進んでやっと城から外に出る。とそこからぐるっと城壁沿いに歩き、やっと入り口を見つけた。
「遠い上に、分かりにくい!!」
思わず本音が洩れる。申し訳ございません。と先導の騎士に謝らせてしまった。いや、君に落ち度は一つもない。と反省しながら二人の許に向かう。
リベルは何故かとても幸せそうに、そして、反対にフィルは物凄く不機嫌そうにこちらを見た。
捕らえられた時に大分暴れたと聞いたが、2人とも怪我はなさそうだ。
実家を出てから、順調に別荘までは来れたらしい。が、ジャワ嬢か……ヨルダ神様の神託とリベルの視線意味を考えるのならば、フィルが何かしらをジャワ嬢にしたのだろう。ジャワ嬢もこの朴念仁を良く追い続けるものだと思う。
こちらはと言えば、マリア嬢がイチカを襲った理由や、神託の話をした。
異世界から来た事は前にも聞いていたのだが、ここでは生きられないと聞くとフィルが酷く動揺した。青ざめた顔をし、何かを堪えるように俺に質問をする。
「猶予はどれくらいあるんだ?」
「すまん、そこはあまり時間がないとしか聞いて無いんだ……。」
「……そうか。で、見つけて確認したとしてどうやって戻るんだ?」
「それもわからん。 我々に与えられた神託は、今のところイチカに会う。ここに来る前の記憶の確認。ここにいると生きられない事を伝える。お前達の件にジャワ嬢が関わっていたらフレミッシュ公にの所に行くこと。この4つだ。」
「待って、魔王の件はどうなるんだい? 無事にイチカを返せたとしても、魔王が暴れだして人々に被害が出るなら、この世界の住人としてはそっちを優先させなきゃいけないだろ?」
確かにその通りである。私は当主命令でイチカを探して旅をしてもいいが、マリア嬢は勇者なのだ。神託とはいえ、魔人は大丈夫なのだろうか?
「そういえば、マリア嬢は商人の娘のローナを探して居なかったか?」
「あぁ、そちらはイチカの件と引き換えに、神々が動いて下さるそうだ。魔王の方はマリア殿がそう聞いたと言うだけでどうするとは言っていなかったが。」
「……ヒルダ神様は下界の出来事に干渉なさらないのでは無いのか?」
「…………そういえば、そうだな。」
「イチカ、何者なのかしら……。それに何でジャワが関わっていたらフレミッシュ公に会いに行くの?」
「そこもよく分からない。神達が会議でお決めになってたから……」
二人ともこちらを見て驚いた顔をする。
「まるで聞いてたように言うのね。」
「あぁ、ご神託を頂いた。その向こうで神達がお話をされていたようでな、ヒルダ神さま以外にも女神の声が聞こえたり、別の神が話してるのが聞こえたりしてな……貴重な体験だった……。」
「その話、外ではするなよ。問答無用で中央の教会に連れていかれるぞ。」
「あぁ、わかってる……」
カツン、カツンと階段を降りてくる足音で会話をやめる。
兵士とマリアが降りてくる。どうやらリベルとフィルに帰国の命令が出ているらしい。
牢から出て門まで行くと、王子を始めトラット公爵やドストル宰相等々かなりの面々が見送りに来ていた。
リベルとフィルが馬車に乗り込み、護衛兼引渡し役として騎士団に所属しているフレミッシュ公爵家の長女、ホードル様が同行する為に同じ馬車に乗り込む。
こちらは、勇者の証を受けとるために、マリアと共に馬でフレミッシュ公爵家へ向かう。
お互いに気を付けるように言い別れて行動する。が、国に帰って用事を済ませれば、あの二人の事だ、すぐに合流するだろう。
城を出て東の国を南下していけば、フレミッシュ公爵家の領地に入る。フレミッシュ領は果物が名産品で、ここで獲れる物は高値で取引されることが多い。
ヨルダ神の指示とは少しちがうが、フレミッシュ公爵家に向かうのだ。きっとイチカに会えるだろう。
私もマリアもそう思い馬を進める。2人ともイチカに会えるどころか、東の国のゴタゴタに巻き込まれて更なる足止めを食らうなどと夢にも思わなかった。
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