55. F 、牢屋入り
夜が明ける頃城に着いた。道中、ここ何年かのすれ違いを埋めるがごとくドラトゥスト王子とリベルはイチャイチャしていた。
何度か降りる事を提案したのだが、その度に俺の存在を思い出したように、必要ないと言う。が、すぐにお互いしか見えなくなってしまうのであれば降りる許可が欲しかった。
出立前よりかなりげっそりした俺と王子とリベルの様子から何かを察したのか、アモイに肩をポンポンと叩かれた。今は地味にイライラするのでやめて欲しい……
と、城の外で待ち構えていたのであろう人族の宰相殿が問答無用で俺とリベルを縛り上げた。
「ドストル宰相殿、何をする!」
「王子、魔人に誑かされ王子を傷つけるような輩と同じ馬車に乗るなど、何を考えておいでですか!! お前達、こ奴等を牢へ繋げ!」
「「「はっ!!」」」
俺とリベルは引き摺られながら、城の外壁をぐるっと回った場所にある牢に繋がれた。
兵士達の後ろを慌てて着いてきたアモイが兵士に話しかける。
「おい、繋ぐにしても、なぜ外牢なのだ? 二人は北の国の公爵家の方々だぞ。」
「宰相殿がここに繋ぐようにと……」
「さっき、そんな事言って無かっただろう?」
「いえ、王子達が出立してすぐに、お二人は魔人に操られて居るから、暴れても対処出来るよう、連れて来られたら外牢に繋ぐように言われておりましたので……」
出てすぐ? 普通に投降することはないと確信でもあったのか?
「我々が出てすぐにそう言ったのか?」
「はっ!その通りであります。」
この国の敬礼、心臓部に拳を当てる。言葉や行動に心臓、つまり生死をかけるという意味が込められている。
3人が3人とも同じ事をいうのであれば信憑性は高いのだろう。
「我々はここで大人しくしております。出来れば、どういった経緯なのか分かりましたらお知らせ願えますか?」
貴族らしくアモイに頼んでみる。
俺らの態度が操られているようには見えないからか、困惑と申し訳なさが、兵士の顔に滲み出ている。上役に命令された事とはいえ、隣国のNo.2に当たる公爵家の子供を平民の罪人の入る様な粗末な牢に入れたのだから、不敬罪と言われても致し方無いことをしているのだ不安にもなるだろう。
分かったとアモイが兵士達を連れて地下から出ていく。
見送った後、もう一度言俐を飛ばす。も、やはり届かない様だ。
さて、この状況はどうしたものか……。出ようとおもえば、人族、獣人用の牢など簡単に破壊出来るのだが、騒ぎを起したところで利はないだろう。
「……イチカは無事かしら……。」
ポツリとリベルが呟いた。先程、王子に粗方話したので見つけたからといって乱暴な扱いはしないだろうが、やはり姿を見れないと心配になる。
「無事に南に入れればいいが……。まあ、今となっては素直に話してここに連れてきた方が良かったと思えるが……」
「フフッ、確かに。王子に対する誤解も解けたしね。でも、あの噂のせいで、やはりドラトゥスト様に会わせるのは不安だったから……」
「確かにな。取りあえずバリーには連絡をとっておくか。どこかに居ないかな?」
キョロキョロとしてみる。ネズミが居れば伝言を頼むのだが……
残念。今はいないようだ。
◇◇◇◇
いつのまにやら、寝てしまったようだ。分かりにくい!! と馴染みの声を聞いた気がして目を覚ませば、セスがプリプリとしながら階段を降りてくる。
「もう! 何で外牢なんかに繋がれてるの? スッゴい探した……二人とも怪我とかはない?」
2人して頷く。
「ならよかった……。」
と、そこからお互い実家を出てからの話をした。
イチカがこの世界では生きられないと聞き、酷く動揺する。が、ならば早く元の世界に返してやらねば。と使命感も湧いてきた。
俺たちは北の国へ、セスとマリア嬢は神託で受けたフレミッシュ領を通り、イチカを追って南に向かうことになった。バリーがイチカに付いているといえば、伝言はこちらからは言俐、セスからはバリーを通じてやり取りしようと勝手に決めさせてもらい、別れる。
暫くすると
「リベル・ド・ウリーボ様、並びにフィルソン・ド・ウリーボ様。お二人とも、北のノースキー国王から、国にお戻りになるようにとのご命令です。」
「……分かりました。」
兵士とマリアが迎えに来て、ガチャガチャと牢の鍵を開ける。牢を出て城門へ向かえば王子とアモイ、それに先程の宰相とアモイの父のトラット公、そして何故かジャワ嬢がいる。
「リベル様、フィルソン様。本来なら、ドラトゥスト王子に怪我を追わせた罪で不敬罪にあたり、処刑もあり得る所ですが、陛下の温情により国外追放となりました。」
「待て、追放では無いだろう? ノースキー国王より帰国の命令が来たから帰るだけだ!」
「そうですよ! 宰相殿、そんな紛らわしい言い方なさらなくても!」
王子とジャワ嬢に突っ込まれて宰相も引き下がる。
「……失礼いたしました。まあ、とにかく、早々に国に帰られた方が良いでしょうな。それでは、私は失礼致します。」
宰相は何故かリベルを睨み付けると、フンッとばかりに顔を背け去っていった。
黙って聞いていたトラット公が大きなため息を付く。
「リベル嬢が婚約者になって下さるならこれ以上の喜びはありませんが、一度候補からハズレた手前、序列では最後の方になってしまいます。宰相は酉のピコック嬢と王子をなにがなんでも一緒にさせたいらしく、リベル嬢を目の敵にしておるようです。陛下も気にしておいででした。が、あなたが息子を支えてくれたら嬉しい、と伝言を預かって来ましたよ。」
と言ってくれた。横でドラトゥスト王子とアモイも頷いている。まあ、噂以来、その手の話題でイライラしていたリベルの機嫌が直るなら有難い。と思いながら馬車に乗り込んだ。
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