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54. F 、砂を吐く

ひとしきり暴れた後、大人しくする。殆どが投げ飛ばされてのびているが、何人か鼻血を出して項垂れている。リベルのエルボーを喰らったのだろう。…………お気の毒に。


と、その中にドラトゥスト王子を発見。いや、リベルさんそこは自重しろよ……、とリベルをみれば、凄くスッキリした良い顔を俺に向けてきた。


遠巻きに俺とリベルのご機嫌メーターが正常値に戻るのを待っていたアモイが、動ける兵士に指示をし俺たちを拘束する。王族に手を上げたのだ、只では済まないだろう。と、


「拘束はせずとも良い。2人共に気は済んだか? ……フン、コレはアレだ……。まあ、気にするな……。」


鼻に詰め物をしながら、リベルを見る。


「気にするわけ無いでしょう? さぁ、城へ行くんでしょ! さっさと皆を起こして行きますよ。」


「……わかった。オイ、お前達、戻るぞ! 全員たたき起こせ! それとアモイ。お前は後で話がある。」


「あー、……御意。」


アモイはどうやらお説教コースのようだ。


「お前達は俺と共に馬車で移動だ。馬はこちらで連れていく。」


「ありがとうございます。」


大人しく従い、王子と同じ馬車に乗せられる。王家の馬車だけあって広さは十分だが、空気は酷く重い。逆らわず城まで行くので降りて歩いていっても良いだろうか。


数年前まで、婚約者最有力候補と言われ、王子の覚えもめでたく、正式に婚約も間近だったドラトゥスト王子とリベル。


2人に何があったのか知らないが、リベルは婚約者から外れ、その頃からドラトゥスト王子は魔人を奴隷にしていると噂がたった。


それからは、会えばずっとこんな感じで、周りに居る者が気を遣う。ハァ……早く解放されてイチカの許に行かなければ……。


別荘まで来るときは急いだが、帰りは特に急ぐ必要も無いらしくゆっくりと進む。


「あの、2人とも大事無いか?」


「……我々より、王子の鼻血は止まりましたでしょうか?」


王子は思い出したように確認する。どうやら止まっているようだ。


「イチカなる雌の魔人に操られて居たとか……。本当に何処かおかしな所は無いのか? 随分と暴れていたが操られたりは……」


「ございません。誰に何をお聞きになったか知りませんが、イチカは魔人どころか、天創人で無いかもしれません。」


リベルが不機嫌に王子に説明する。


「魔人の奴隷が欲しいそうですが、イチカは魔人ではありませんので諦めて下さいね。いっそ追いもせず、近付かないで下さい。」


「え? ちょっと待て。 魔人の奴隷とは何の話だ?」


「ドゥラトゥスト王子は魔人と従属関係を結んで……その……そうい関係だという話が北の国では流れております。」


「ハァ??」


黙ってしまったリベルの代わりに、俺が説明をする。王子は心底驚いたと言う顔をしている。


「待て待て、確かに魔人を側に置いては居るが、それは実験の為であって、あ奴等と如何わしい関係になどなる訳無かろう!」


「「え?」」


「え? はこっちの台詞だ! もしやリベル嬢、婚約者の候補からハズレた理由がその事が理由ではあるまいな……?」


リベルも訳が分からないという顔で王子を見たあと、救いを求めるように俺を見る。いや、まさか図星なのか?


「王子、失礼ですが本当にそう言ったことは……」


「ないない! 私は、リベル嬢と正式な婚約を進めてくれと陛下に頼んであったのだ。宰相達も公爵からも反対は無かった。なのに突然あなたが候補からハズレたと聞かさた。私が何かしてしまったのでは無いかと随分手紙も送ったのだ。だが、返事も来ず……」


「手紙……?」


どうやら、行き違いがあったらしい。端からみれば好きあっていたもの同士誤解が解ければやり直せそうな気もするが……


「王子はその、……そういう趣味をお持ちで、私とはあくまで対外的なパートナーとしての付き合いで婚約するのだと。別に好かれているわけでは無いから勘違いはしない方がいいと。」


「誰が言ったのだ!? なぜ私に確認してくれなかった? 何でも話せる仲だと思っていたのは私だけか??」


「確認に行ったのです。その時に、その、魔人の口に指を……」


うーん、衝撃的といえば衝撃的だが……


「北の第4王子のリイク殿に、天創人の言語学習の実験の協力を頼まれたのだ。只、有益を実験で拘束してしまうと、技術の発展に問題があるのでな。魔人を使うことにした。我々なら何かあった時に対処も出きるからな。」


北の第4王子、リイク様。天創人の研究の第一人者だ。


「魔人どもを預かったはいいが、なんというか、やることが子供のようでな。飯を与えれば、出されたものは皿からナフキンから全て食べようとする。そういう場合、何時もなら教育係が世話をするのだがな、何人かが一斉に同じ事をすると対処しきれず、私自らが口に手を突っ込んで吐き出させたりもする。多分そう言った所をみたのであろう……」


リベルは目に涙を溜めている。


「にしても、本当に誰がそんな噂を……」


「私に話してくださったのは、西の国の酉、セキセイ公爵のピコック嬢でした。」


「ピコック嬢……? 確か先日、宰相が熱心に勧める婚約者の有力候補に名があったような。……が、私としてはもう一度リベル嬢の名をそこに筆頭として連ねたいのだが?」


「……よろしいのですか?」


別の意味で、降りて歩いて行っても良いですか?


読んで頂き、ありがとうございました。

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