53. T の夜明け
マリアが目を覚ましたので早々に移動を開始する。
目指すは東の国、イストア王国。森に囲まれ林業が盛ん。で、今向かってるのは、この国の公爵の1人、トラット公の邸宅。息子で印持ちのアモイに会って何かしらの進展を期待している。
「あった! あったあった!!」
珍しくハルさんが声を上げて喜んでいる。
「何があったんです?」
「さっき、王子の話が出てたでしょ? たしか、ボツ案にあった気がして探してた。」
「え、王子達ちゃんと居たんですね……」
攻略対象者だけで12人、皇帝と皇太子、各国の国王と男性のキャラがやたら多いこのゲームで、たいして役がない王子迄出す予定だったのか……と、少し驚く。
「一応ね、初期段階でキャラ付けだけしたものがあったんだよね。……あぁ、さっきセレイスが言ってた通りのキャラ付けされてる。」
「やっぱりボツ案もこの中じゃ採用されてるんですねー。因みに、これから行く東の国の王子は?」
「……支配欲の塊で、魔人を従属させるのが大好きって書いてある……。」
「それ、誰が書いた案ですか……?」
全く、まともな王子は居ないのか! って、魔人を従属ってことは有益の判断がないイチカも対象か??
早く探して合流しないと……だが、相変わらず、魔物ー!!異様な頻度で遭遇する。
「あー、邪魔!! 魔物多すぎ!! せめて通常の割合で遭遇しろよ!!」
と、テロップに、だーく ヒヒーン。 と表示された。え? 何で突然??
その後、数ミリ進むだけで出会っていた魔物が居なくなった。もちろん進めば出会うこともあるのだが、普通のRPGの魔物との遭遇率と同じくらいになった。
もー。何このゲーム……ワケわかんない……。目は疲れるし、肩は凝るし……コントローラーを置くと、両手を絡ませ天井に向かってゆっくり伸ばす。ゴキッとか、ミシッなどおおよそ体が発する音では無いものを聞きながら二人をみる。
あまりにも静かだから寝てるのかと思ったが、ボツ資料を全部見直してくれているようだ……。ホント、ありがたい。時計を見ればもう午前2時近く。いつもなら早く帰れと騒ぐ2人が夢中になっているので、俺も黙って先に進めることにする。
魔物の出現が減ったお陰で移動は大分スムーズになった。予定通りトラットさん家に向かう。と、屋敷の外にジャワらしきキャラクターがいる。そして、向こうから声をかけてきた。
「失礼ですが、セレネイ様ではありませんか?」
マリアのコマンドで はい。 と答える。
「ずいぶんお早いお着きですね。我々もこれからお城に向かうところです。」
なぜ城へ?疑問は沸くがそのまま続ける。
「フィルソン様とリベル様が、昨夜女の魔人に魅了されて操られて居たんで、私がお父様に言ってお二人を解放したんですわ!」
やっぱり、お前かぁー!!!
「それで、お二人ともお城に保護されておりまして、私もこれから会いに行くんです。御一緒にいかがですか?」
どうするべきか……
「2人ともいいですか?」
同時に顔を上げてこちらを見る。心配していた通り、ジャワとの出会いでイベントが進んでいるらしい事を説明し、ジャワと一緒に城に行くか、このままイチカを探しに行くか相談する。
「んー、どっちが先にイチカにたどり着くかだよねぇ。」
「闇雲に探し回るより、少しでも情報はあった方がいいんじゃない?」
「そうか。でも、何でリベルは鳥のメール寄越さなかったんだろうねぇ?イチカと分かれてすぐくれれば会えたかも知れないのに……」
確かに。森のどこかで待ち合わせなりなんなり出来たはず。
「出したくても出せなかったとか?」
「え?」
「怪我してるとか?」
「あー、ありえるねぇ。」
「……城に行きますか。」
「「賛成ー!」」
の流れで、ジャワと共に城へ行く。
城に着くと同時にセレネイと引き離され、イベントが始まった。あ。やべぇ、本編忘れてた……
マリアのイベントはトラット公爵が持つ地図と、フレミッシュ公爵が持つ鍵を使い、勇者の証を手に入れると言うもの。
王様と話をし、側に居たトラット公から、証の地図を受けとる。次に、フレミッシュ公から鍵を受けとるのだが、その場では渡せないので後々屋敷までとりに来るように言われる。
ザックリとした内容だが、物語通りに進んでる。
謁見の間から出て、城中のキャラに話を聞けば、リベルとフィルは隠し通路の先にある半地下の様なところに監禁されていると言う。
急いで隠し通路を探す。何故か一度城を出て、城壁沿いを歩き回った先の王子の部屋の外の壁にボタンがあり、隠し通路が現れた。本編にはない内容だった為。コレを探し出すのにやたら時間がかかった……。しかも、城に着くなり別れたセレネイも地下にいる。何故だ……。
窓を見ればうっすら明るくなってきた。俺より早く起きていたであろう2人はダウン寸前である。
「俺は今日というか昨日、半休扱いで仕事始めたのがお2人より遅いんです。なのでリベルとフィルソンには俺が話を聞いておきます。お2人は1時間でも、2時間でも休んできて下さい。」
ハルさんはどこかホッとしたように、プロデューサーは何故か悔しそうな顔をして仮眠室に向かっていった。
俺も一度、外に出ると大きく伸びをし、肺一杯に朝焼けの空気を吸い込むと、気合いを入れ直しまた会議室に向かった。
読んで頂き、ありがとうございました。




