48. B の計画
子の眷属は、この世界の至るところにいる。
自由に色々な所を行き来し、見聞きし集まった情報を統括し、精査して国に報告するのが俺の普段の仕事。北の国は情報戦に強いと他の国々は言うが、私の眷属が潜んでいる横で、鈍感な人間の官僚が普通に機密事項を話しているのだ。こちらには筒抜けである。
それと、スキルに鑑定の上位の 開眼 を持つため、有益者と判断された天創人が何に特化した者かを判別する時に駆り出されることもある。
珍しく、宰相のウリーボ公が持ってきた選別の話。ただの選別なら忙しい事を理由に断るところだが、雌なのだと言う。興味をひかれ公爵邸に出向いてみれば、天創人かどうかも判別が出来ない、通常なら持たない過去と呼べるような記憶を有し、何より称号が解読出来ない。 面白い。
そう思った俺は、イチカを見張らせて居た。が、その夜、ウリーボ邸に魔物達が襲撃してきて、眷属達は本能的に逃げ出してしまった。そして、その間に邸宅から居なくなってしまったイチカの居場所が分からなくなってしまった。
情報を集めようと、公爵の私邸の執務室を張っていたのだが、見つかり追い出されてしまう。やはり、気を張った人獣にはバレてしまうか……
仕方がない、色々と消耗が激しいのであまり使いたくはないのだが、森や街に居る全ての眷属にイチカを探すように伝えて、その一匹一匹に神経を細く長く繋いでいく。反応があれば直ぐに眼を繋げられるように……
日が大分高くなった頃、やっと見つけたイチカは案外元気そうだった。そこからはイチカに付いたハムスターのダンだったか? 名前を貰って喜んでいたが……あいつを通してイチカ達に指示を出す。上手く誘導して俺の許で匿えば、灯台もと暗し、国に見つかることは無いだろう。
と思っていたのに、バカ王子共のせいで台無し。取りあえず、イチカの居場所を知るアモイの所と、その国の悪趣味な王子が居る東の国城を根城にする眷属に意識を繋いでおく。
◇◇◇◇
ジャワが別荘に来てゴタゴタしたが、イチカが体調を崩し部屋に入ってから、ジャワは肩を落として帰り、我々は簡単に食事をして各々休むことになった。
俺は、イチカが蹲り、フィルが駆け寄った時のジャワの様子が気になり、一足先にトラット邸に意識を飛ばし、潜む。
案の定、帰るなりトラット公の執事に泣きながら告げ口をしている。このままでは、城から迎えが行くのも時間の問題だな。
今度は城の眷属に意識を移し、アモイに話そうと隙を伺うが、そういえば寅どもは俺の眷属で遊ぶ習性があったな……と思いだし躊躇する。と、ジャワからの告げ口を伝えにきた使者が、王太子のドラトゥストとトラット公、それにアモイ、あと卯族のフレミッシュ公爵の前でイチカの事を話した。
ドラトゥスト王太子は話を聞くなりさっさと出て行き、トラット公はアモイをなんとも言えない顔で見つめている。フレミッシュ公は言えば、我関せずと言った感じに出されていたお茶を啜っている。
アモイが必死に言い訳しているのを横目に、俺はさっさと別荘のダンに意識を移す。マレーを起こし、事情を伝えてイチカ達の部屋を開けてもらい、フィルに話を伝えて貰う。
部屋に入ると、まずイチカを起こす。が、うるさいとばかりに横を向かれてしまった。仕方がないので今度はリベルを起こす。ドラトゥストが大嫌いなリベルは名前を出すと直ぐ起きた。が、勢いよく起きすぎだ!! ダンの小さいボディで苦労して登ったベットから落ちたではないか! おまけに掛け布団が降ってきて身動きがとれん!!
と、イチカも起きたようでリベルに着替えるように指示されている。
なんと言うことでしょう!!! 掛け布団が超邪魔! 凄い邪魔!! ともがいているとヒョイっと布団が退かされイチカが目の前に居た。
「こんばんわ、バリーさん。今、ちょっと着替えるのでもう少しそのままで居てくださいね。」
と、驚いて居る間にまた布団を掛けられた。着替えるのは知っているのだよ! だから布団をどかしてぇー!! と叫ぶも、退かされたのは無情にも着替え終わってからだった。
そこからは作戦会議。ドラ王太子の名前を聞いてイライラしているリベルと、ジャワがなぜ泣きながら告げ口をしたのか今一分かっていないフィル、アモイの命令とは言え側を離れていることを言われた護衛のマレーに城での話を聞かせる。
と、途中で尋問が終ったアモイが会議に参戦してきた。と、驚いた事にアモイもイチカを逃がす提案をした。てっきり絞られてイチカを渡すように言うのかと思ったのだが……
どうするかと話し合った結果、リベルとフィルとマレーはここに残って王族の指示に従い、俺がイチカを連れて逃げる。で、後で合流する事になった。
フィルは最後まで反対したが、イチカが逃げるための時間稼ぎはフィル達に掛かっていると言えばおとなしくなった。
先ほどから、森の中にイチカが身を隠せるような所がないか探させている。と、あったと連絡が来る。意識を飛ばして見に行けば、何故か結界が張られた場所に樹齢何年だろうか? 物凄い大木があり、根本に地面の窪みと、大きな虚があった。確かに一人一人隠れるには良いかもしれない。
荷物の入った麻袋を渡され、困惑と不安が入り交じったような顔のイチカを誘導し、裏口からそっと大木に向かった。
迷わないよう、眷属が道を作ってくれていた。イチカには暗くてよく見えないようで、何匹か踏まれそうになり慌てて逃げ出す奴らもいた。
結構な距離の移動だったが、無事に虚まで付いた。と、城に居る俺の本体の許に誰かが来たようなので、イチカに動かず隠れているように言い、意識を体に戻す。
そして、この時、もう少しイチカの側に居れば良かったと後悔するのは、もう少し後の話になる。
読んで頂き、ありがとうございました。




