47. I 、また逃走
また、夜中に起こされた。夜はゆっくり寝たいのだが……
そして今、私は暗い森の木の虚の中で、一人小さくなっています。
◇◇◇◇
パシパシとおでこを殴られている。痛くは無いんだけど、うーん、寝てるのを邪魔しないで欲しい……と、思いながら寝返りをうつ。
「ねえ! 起きて! ねえ、ねえ!! もぉー、チュウするぞ!!」
何の脅しだろう。ってか、誰だ?
「あー、リベル! リベルも起きて!! 東のドラ息子……じゃなくてドラ王子が来ちゃう!! 早く逃げないと!!」
ガバッと布団をはね除け、リベルが飛び起きた。私にチュウをすると脅しをかけていたやつは、おぉぉ~と声が小さくなっていったのでどこかに行ったのだろう。
上半身を起こし、頭をワシャワシャ掻きながら周りを見渡すもリベル以外は誰も居ない。
「おはよう、リベル。もう朝? 今、男の人の声が聞こえた気がするんだけど。」
「あぁ、おはよう。って言ってもまだ夜中だね……」
「え? じゃあもう一回、寝「直ぐ着替えて!」……はい。」
よく分からないけど、何だか凄く焦ってるみたい……?リベルは着替えると、足音を気にしながらそっと部屋から出ていった。
私は言われるがまま着替えようとすると、あ、くそ!ここからじゃ……と呟く声が聞こえる。リベルがくれた光灯器はいつもならランタンと同じくらいの光量があるのに、今は物凄く暗い。なのでよく見えないのだが、ベットの布団の下で何かが動いているのが分かる。
恐る恐る、布団をどければハムスターのダン? いや、喋ってるからバリーさんかな? がいた。
「こんばんわ、バリーさん。今、ちょっと着替えるのでもう少しそのままで居てくださいね。」
布団を元に戻し、手早く着替えをする。え! とか、どかしてぇー! と聞こえた気がするけど、着替えてからどかしてあげよう。
着替え終わり、布団をどかす。
「お待たせしました。あと、電気……あ、こっちは光灯器か。どうすれば明るくなるんでしょう??」
「魔力を込めれば込めた分だけ明るく、持続力も上がる……けど、今は付けないで。それと、声をもう少し小さくして。で、足元気をつけながらリビングに行くよ。」
「?……分かりました。」
囁き声で返事はしたものの、バリーさんは何処に行った? 踏み潰さないように足元ばかりを見て歩いたので、頭を2回、肩をそれぞれ1回づつ柱や開いた扉にぶつけた。
リビングではリベルとフィル、それにマレーさんが何か話していた。そこにいつの間にかバリーさんが加わっている。
「東にいる眷属を使ってトラット邸と城の様子を伺ってた。ジャワ嬢、よほどお前に抱き上げられたイチカが羨ましかったんだな。帰るなり、泣きながら城に居る父親に知らせを出したぞ。」
「ジャワが? 何が羨ましい?? イチカは具合が悪かったんだぞ?」
「あぁ、具合うんぬんじゃなく、ジャワ嬢も抱き上げて運んで欲しいんだろう。」
「何のために?」
「その話は後! それで?」
リベルがイライラしたように、バリーに先を促した。
兄が内緒で所有していた別荘に、リベルとフィルが居ると聞いたので会いに行ったら、兄の護衛のマレーもそこに居たこと。それに加え、物凄く黒に近い色の髪と瞳をもつイチカが居た事。フィルの様子がおかしかったこと、等々。
その報告を上げている時に、近くに居た東の国の王太子、ドラトゥストがイチカに興味をもったのか、
「北の国からの要請の女か?ならば俺が指揮を取る。」
と言って部屋を出ていき、その後、トラット公爵にアモイが尋問され、フィルとリベルに別荘を貸して欲しいと頼まれたからマレーを案内に送った、女の事は知らない! と言っていたこと。
あと、ドラトゥスト王子は、この別荘の場所を知っているそうで、尋問を待たずに城を出るだろうとのこと。
「「「………え!?」」」
「いつの話だ?」
「お前が風呂に入ってる時の話だ。」
「……そんなに時間は経ってないが、早めに動いた方が良いな……イチカをどこかに移動させないと……」
一斉に皆の視線が私に来る。と、
「すまん……陛下と父上にイチカの事が伝わってしまった……。」
突然、気落ちしたような声で、マレーさんの体を使ってアモイさんが話し始めた。どうやら尋問が終ったようだ。
「お前達はジャワに何をしたんだ? 全く……伝言を頼んで送り出したのに、屋敷に戻るなり父に使いを寄越したそうだぞ?」
「ジャワ嬢に何もしなかったから……だと思うぞ。」
バリーさんがフィルを見ながら答える。
確かに。折角来たならきっとお話ししたりしたかったんだろうなー。あー、私が頭を抱え込んで蹲っちゃったからそれどころじゃ無かったのか。
……………………あれ? 私何で蹲った?? そういえば、私が具合が悪かったってさっき言ってた? それよりお腹へったけど夕飯食べたっけ? んん? なんかちょっと記憶があやふや……
「ハァーー。わかった、まあいい。取りあえずイチカとバリーは逃げろ。特にイチカ。絶対に王子には見つかるな!」
蹲った頃からの記憶を掘り起こし中の私に、アモイさんが言う。
「え……? 王子、怖い方なんですか??」
「いや、多分あの方は盛大に勘違いをしてるんだと思う。が、今、俺がそれを説明するわけにはいかない……」
あ、そっか。こちらに協力してるのバレちゃうもんね。
「魔人を従属させて色々するのがお好きらしいのよ。」
「イチカも有益印が無いなら、魔人扱いされるかもしれない。北からの要請もあるが、あの方じゃ渡さないだろうしな。珍しいモノが大好きだし……。」
リベルが憎々しげに、フィルがため息混じりに教えてくれた。勘弁して欲しい。そっち系の趣味は皆無だ。
「イヤイヤ、待て待て。王子は……」
アモイさんが何か話しかけたのだが、バリーさんが、私の隠れ場所について質問したのでそのままその話題に移行した。
その後、私は麻袋に入れられた荷物を持たされ、バリーさんの眷属が見つけたと言う、森の奥の木の虚に隠れる事になり、皆と別れ、バリーさんの案内で別荘を後にした。
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