39. T の依頼
狭い会議室に入り、一つのモニターを3人でみる。
先程、街に入った所で中断セーブしたはず。まず、セレネス達が経営している宿に向かう。宿に戻るとセレネスとは別行動なのかついてこない。探してみたら3階にある自分の部屋にいた。
「着替えと荷解きが終わったら食堂に集合。」
事務的な連絡だけしか話さない。宿にいる他のキャラも他愛ない話しかしない。
部屋に戻りベッドに誘導する。さて、ここからが正念場だ。
ヘッドホンをして、通信しますか はい・いいえの はい を選択する。
「マリア、……マリア聞こえる?」
話はしていたが、やはり不思議そうにプロデューサーが俺をみる。画面の中のマリアは分かりづらいが横になっていたのを座る体勢に変えたらしい。
「神様ですか?」
「そう、ヒル「ヒルダ神様ですね!? 申し訳ございません!!」…………」
相変わらず話をさせて貰えない。
「イチカ様はローナの事件とは関係御座いませんでした。あの髪飾りは……………………………ヒルダ神様はイチカ様のお話しを聞けと仰ってたのに……ウ、ウウ……。」
髪飾りがいかにしてイチカの手に渡ったか、推測を交えつつ1から説明し、最終的に泣き始めてしまった。
「あー、泣かないで? 誰にでも間違いはあるから。」
ゲームのキャラクターの間違いってバグじゃね?って内心思いながら慰めてみる。なんと寛大な!! と感激してるところ悪いのだが、こちらとしてはさっさと話を進めたい。
「それで、たの「そういえば!! あの時、ヒルダ神様のお声が突然消えて、別の神様のお声が聞こえたのです! あれは一体?
もしや、ヨルダ神様でしょうか? あ、でも、イチカ様は魔神で殺せと仰っておりました…あぁ、でも、魔人はヨルダ神様が生み出したのですよね……では、やはりあの声はヨルダ神様ではない? ではあの神は………………。」
よくしゃべる。普通のRPGの主人公は一切話さない。意思表示は はいかいいえ しかない。が、実際話せるとこんな感じなんだと、一緒に行動してるであろうセレネスに同情した。
と、後ろでなにやらハルさんとプロデューサーが話している。
「別の神って?」
「あー、僕だねぇ。」
「平良以外でも主人公と話すのOKなんですか?」
「たぶんね。僕は普通に喋ったよ。」
プロデューサーの目がキラキラ……いや、ギラギラ輝いてこっちをみた。うん、たぶんこのヘッドホン渡す流れだよね。どうぞ、と渡し席を譲る。
まだうだうだと話続けてるマリアに強引に話しかける。
「マリア聞きなさい!」
突然女性の声が聞こえたのでマリアの独り言が止まる。
「私は別の世界の神、プロデューサー。あなたにお願いがあってこうして話させて頂きます。」
「別の世界……プロデューサー神様、お声をかけて頂きありがとうございます。私、「自己紹介はいらないわ。あなたのことは知ってる。」………えっ!」
いままで遮られるだけだった会話を逆に遮った! すげぇと感心するのと、知っていると言われたマリアがキョロキョロしているので驚いているのが分かる。
「あなたの世界にいるイチカという女性、もしかしたら私の世界から迷い込んでしまった子かも知れないの。」
「イチカ様が?」
「そう。ただ、私の世界から迷い込んだ子なのか、別の世界の子なのか判断がつかないの。だからイチカを探して色々聞いて貰えないかしら?もし、こちらの子だったらそちらの世界では生きられないから……」
上手い!!ハルさんと俺はプロデューサーの誘導を小さく拍手をしながら聞いていた。
マリアは生きられないと言う言葉に反応したようだ。
「何故ここでは生きられないのでしょうか? イチカ様の事はセレネス様もあまり良くわからないとは仰っておりましたが、悪い方ではないと先程教えて下さいました。イチカ様がここが気に入られたならこの世界で生きていかれても……」
「そうね。でも、それはイチカが決めること。まずはイチカが私が探している迷いこんだ子かどうかを急いで調べて欲しいの。」
マリアは沈黙している とテロップが流れた。プロデューサーは更に追い討ちをかける。
「事情があって、時間はそんなに無いの。でも、私達にはイチカの居場所がわからない。だから魔王の話も大事だけどイチカを優先して貰えないかしら。」
「それは……」
なぜかマリアが良い澱む。
「申し訳ございません。が、私はローナを一番に考えたいと思います。セレネスさんには神託があったとお話しします。それで、イチカ様には何を聞けばよろしいですか?」
そうだった。イチカに負い目があるとはいえ、彼女の優先事項はローナだった……うむ、どうしようか……。
「ローナはこちらで何とかするから大丈夫!! セレネスには宿に着いた日の事を詳しく。彼女は気を失っていて、盗賊に追われてその後宿に行ったはず。その気を失う前の事を聞いて! と伝えて。」
「!! ローナを助けて下さるんですか!? ありがとうございます! ならばわたしはイチカ様を必ず探し出します。」
「ありがとう、お願いするわ。」
「お、俺からも頼む。」
突然ヒルダ役の俺の声も聞こえてマリアが驚く。
「ヒルダ神様は別の世界の神様とも交流があるのですね。でしたらあの時の声の……」
コンコン、とドアを叩く音がする。 誰か来たようだ。 のテロップで強制的にマリアとの通信が途切れる。
尋ねてきたのはセレネスだった。俺達はそのまま食堂に行くマリア達を見送った。
「ローサを何とかするって……」
「えへ……勢いで言ってみました。」
「あははは、そういう時あるよねぇ。僕も、ヨルダ神やったときは勢いだったし。」
そうだ……思い返せばこの二人、結構勢いで動く人達だった。ヤバい、慎重派が一人も居ない事に少し危機感を覚えた。
読んで頂き、ありがとうございました。




