34. Iの疲れ
「で、リベル、どういうことだ?」
寝そべった格好のまま大きな虎がこちらに向かい話しかける。
「この子はイチカ。黒髪に黒目、そして別の世界からきた女の子だ。」
マレーと、その中身のアモイがこちらを見る。
「天創人の特徴を持った女が現れた。という話が陛下に伝わった様でね……」
「特徴があるだけで天創人とは言いきれない。」
リベルとフィルが交互に私について説明をする。
「うーん、要するに、本来なら北の国王に従うべきだが、話してみたら弱っちくて守ってやりたくなった訳だ。」
2人による数分の説明が、あっさりその一言で纏められた。
「そうね。」
「…………」
2人とも何とも言えない表情だ。と、バリーも口を挟む。
「しかも、称号が変な記号みたいになっていて読めないんだ。」
「ハァ? お前が見えないって……じゃあ視えるのは南のニシキ位か。アイツならその記号も読めるんじゃねぇの?」
「あー、彼なら読めるかも。」
「はぁー、取りあえず事情は分かった。が、ゴタゴタに巻き込まれたくは無いからな。俺は何も知らないし、聞いてない事にする。この先、しばらく真っ直ぐ行くと俺の別荘がある。マレーが居るから迷うことは無いだろ。今日はそこに泊まれ。」
「恩にきる。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます!」
そういうとマレーさんはスクッと立ち上がった。そして、私たちを見回すと早く片付けろとばかりに爪の先でチョイチョイとサンドウィッチを包んでいた油紙をいじる。
慌てて片付け、出発しようとすると、マレーさんが不思議そうに首を傾げ私たちを見る。
フィルが何かを察したように、
「イチカは馬に乗れないんだ。だからここまで歩いてきた。」
マレーさんがまた寝そべる。そして、私の方を向き、グルゥ。と鳴いた。
「乗せてくれるって、良かったじゃないか。」
リベルがいう。私が馬に乗れないばかりに2人にも徒歩でここまで来させてしまった。なので、ここは遠慮せず、お邪魔します。とマレーさんの背中に跨がる。
フワフワしていてとても肌触りがいい。が、しかし、背中が思った以上に広い。開脚して乗っているのだが、膝から膝までの幅より広いので足で挟むことも出来ず踏ん張りが効かない。そして、立ち上がると自分の倍以上の目線になる。掴まろうかとも思うが、毛を掴むと痛いのでは? と思っていまい結果、大木に抱きつく人のようになっている。
始めはゆっくりと歩いていたのだが、抱きついた事で安定したと思ったのか、結構なスピードで進み始めた。
「待って! ムリムリ!! おーちーるぅー!!!!」
半泣きで叫んでやっと止まって貰う。せめてどこか掴むところが欲しいというと、マレーさんが蔦を見つけ、フィルに切れとばかりに顎をしゃくった。そのままその蔦をマレーさんのお腹に巻くとその先を私に持たせる。
ソレだけでもすごい安定感!! ありがとうと2人にお礼をいい、また別荘について向かい進み始める。
◇◇◇◇
日が陰ってきたころ、小屋より少し大きい位の家が見えた。
前まで来ると、マレーさんが私を下ろすために寝そべる。お礼をいい降りると、フィルに向かってグルグルと何かを言っている。
フィルは家の脇に行くと何処からか鍵を持ってきた。
中はリビングと洗面所とトイレ、それにキッチンと呼べるか怪しい台と竈がある部屋、大きなベッドがある部屋と、シングルサイズのベッドがある部屋でとてもシンプルな造りだった。リベルと一通りお家チェックを済ませリビングに戻ると、普通サイズ? の虎が一頭玄関の近くのマットで寛いでいる。
「私とイチカで1部屋もらうよ!」
リベルはそういうと荷物を持って大きなベッドのある部屋に入っていた言った。フィルが応、と答え、虎がクアっと口を開けた。フィルとマレーさんも何か話していた様だが、暫くするとフィルさんだけ残った部屋に入っていった。
「もしかしてマレーさんですか?」
と聞けば、ジッとこちらを見た後コクンと頭を下げた。
「そうなんですね!! フフ、大きさがさっきと違うので驚きました。今日は本当にありがとうございました。私を乗せて動きづらかったでしょうに……お疲れ様でした。」
無意識って怖い。普通に猫を撫でるようにマレーさんを撫でくりまわしながら話しかけていた。ハッと自分がしていることに気づいて恐る恐るマレーさんをみる。と、気持ち良さそうに目を閉じていた。
怒ってはいないようだ……ふぅ。と内心の焦りを息と共に吐き出し何事も無かったようにたちあがる。
「ゆっくり休んでくださいね。」
心臓をバクバクさせながら馴れ馴れしくしてしまったことを後悔した。
しばらくすると、皆に勧められ風呂を頂いた。リベルさんに出たことを伝える。マレーさんはマットの上でスヤスヤと寝ているようだ。キッチンに向かえばフィルが夕食の準備をしていた。
「お風呂先に頂きました。夕食の支度、手伝うよ!」
と声をかければ、フィルは何故かギョッとして固まり、真っ赤になりながら指示をくれる。
宿でも思ったが、お料理の手際がいい。
「お料理はいつもフィルがしているの?」
「だいたいそうだな。皆出来るが、リベルは豪快過ぎてキッチンの片付けが面倒で、セスはきっちり作りすぎて時間がかかる。」
「フフ、なんか分かる気がする。」
他愛のない話をしながら料理をし、夕食を皆で頂いた。
夕べから……いや、こちらの世界に来てからバタバタしてた上に、ずっと緊張していたからか、少し頭が重い。
食べ終わり片付ける頃になると、表情に出ていたのか、フィルが心配そうに覗き込んできた。
「顔色が悪い。具合が悪いんじゃないのか?」
「いえ……」
「いい? イチカ。ここからまだ旅は続くの。体調が悪いときはハッキリ言って貰った方が助かるわ。」
リベルが少し厳しい口調で言う。確かに、無理をして出で行った先で倒れる方が迷惑をかけてしまうかもしれない。
「少し頭が重い感じがするの。」
「あとはやっておく。ゆっくり休め。」
「そうね、実家からここまでずいぶん頑張ったもの。今日はゆっくり休んで、あとはやっておくから気にしないでね!!」
そういうと、背中をグイグイと押されあれよあれよと着替えさせられ、布団に入る。そこからはあまり記憶がないのだが、どうやら熱をだし、リベルが看病をしてくれたらしい。
目を覚ましたのは次の日の昼頃だった。
読んで頂き、ありがとうございました。




