33. I の新たな仲間
「早かったじゃないか!」
リベルとフィルが戻ってくるなり、優雅に寝そべってサンドウィッチをパクつく大きな虎に話しかけた。
私はと言えば、ヨダレまみれのハムスターをどうしようかと思って見れば、ピクピクとまだ生きていたので川まで連れていき洗ってみた。一応、溺れないように口や鼻には水が入らないようにしたのだが、ビックリしたのか暴れまわって大変だった。
ゴワゴワながらも綺麗な布で拭いてやると毛がフサフサして可愛くなった。が、いつまでもここにいるとまた虎のオモチャにされかねない。
虎がサンドウィッチに夢中なうちに森に離してやった……のだが、何故か今、私の肩に乗っている。
「イチカ、よく騒がなかったね……ってあんたも居たのかい。」
今度は私に話しかけてきた。あんたって誰だ? と振り返るも誰も居ない。ん? と首を傾げれば、
「イチカの肩に乗ってるソイツさ。」
このハムスター?
「もう少し黙っててくれれば良いのに……せめてイチカが風呂に入るまで!」
「そんなこったろうと思ったから早めに声かけたの!」
「相変わらずだなぁ、お前は……」
うん、ファンタジー。耳のすぐ横で声がするのは肩に乗ったハムスターが話しているから。シーシーと聞こえるのは、歯に挟まった謎の鳥の肉を気にしながら目の前の虎が話しているから。
「イチカ殿を連れて東に行ったんだね。」
「先程、お主から言俐が届いたのでな。至急応援を送ってみた。」
「あぁ、アモイ、助かるよ。バリーもやっぱり気にしてたんだね。」
「そりゃあね、始めての女の子の天創人かもしれないし。でも残念、お近づきになる前に会えなくなっちゃった……」
んんん? 取りあえず誰か説明してくれないだろうか……??
「リベル、イチカが困ってるぞ。」
さすが気が利くフィル君、サラッと欲しい言葉をくれるね。
「あ、悪い。説明するね。こっちのデカイ虎が朝、話した東の国のアモイの護衛でマレー。ま、護衛って言ってもこうやって主の命令で本人から離されちゃって護衛とは言えない仕事の方が多いんだけどね。そうそう、話してるのはアモイね。マレーを通してこの状況を見ながら話してる。」
「……そうなんですね。えっと、イチカ カゲノと申します。アモイさん、マレーさんよろしくお願いします。」
「あぁ、よろしく頼む。マレーもサンドウィッチを気に入ったようだ。……あと、バリー!! 少し大人しくせんか!」
私の肩や頭をチョコチョコ動き回っていたバリーと呼ばれたハムスターはピタッと動きを止めた。
「アモイとばっかり話してるんだもん。退屈だったから冒険してた。」
ナニソレ、可愛い。とホッコリしてハムスターの前に手を出せばチョコチョコと掌に収まる。うわぁー! 頬擦りして良いかしら。なんて考えていたら、
「イチカ、ソイツはお前のステータス鑑定したカピクール家のバリーだ。アモイ同様、そのネズミと目や感覚を共有してるんだろう。」
ハムスターに冷たい視線を送るフィルに言われ、鼻先まで近づけたハムスターを離してみる。両手を必死に伸ばして目を閉じていた。うん。可愛いけど、ソレを聞いちゃうとね……。
「もー! あとちょっとだったのにぃ!!」
ハムスターで地団駄を踏むのは可愛いから止めてもらいたいと思いつつ、バリーさんにも挨拶をする。
「バリーさん、その節はお世話になりました。」
掌の中のハムスターに頭を下げる。一瞬動きを止めたハムスターは照れたように小さくなると、また顔をあげ、
「やっぱりお近づきになりたかったなー……」
と、呟く。
ちょうど、ゲホゲホむせたフィルの咳でよく聞こえなかったが、聞き返す前に話が再開されてしまった。
「アモイが寄越してくれたマレーはいいとして、バリーは何してるのさ。あんただってソレなりに忙しいんじゃないのかい?」
「あぁ、連日家にも帰れず城に缶詰めだよ。」
「そんなあんたが私らを探してたって事は……」
「うん、陛下から勇者マリアに君たちを探すように命が下った。
」
「予想より早いな……」
黙って聞いていたアモイが慌てて口を挟む。
「待て待て、陛下からの命ってなんだ? まさか、北の国王のもとから逃げて来てるのか??」
「なんだ、話してないのか??」
バリーがリベルとフィルを交互に見ている。
場が混乱している。そして、私も混乱している。陛下の命って命令? マリアちゃんに私を探せって命令したってこと??
「アモイ、後できちんと説明するからちょっと待っててね。バリー、捜索隊はどれくらい?」
「ソレがね、驚いた事に君達の父親の宰相が、自分の責任だって言ってセレネスと勇者だけで探させて必ず連れ帰ります! って宣言したんだよ。」
「オヤジ殿が?」
「そう、さすが君達の父上だと思ったよ。セレネスがマリア殿と行動することで行動をお互いコントロールする気らしい。そして、陛下への自分の忠誠をかけて他の部隊を出さずに納めた。あと、君は言悧を使えたね? セレネスには見えない言悧を使って連絡してやれば良い。君達の父上には僕が伝達役になるよ。」
「あんたが?」
「そう。だから……イチカ殿、この子を一緒に連れていってくれるかい??」
突然話を振られて驚いた。この子とは、ハムスターのことか。
「え、ええ。私は構いません。」
「ありがとう! じゃあずっとそばにくっついてるね!!」
私の首筋にギュッと抱きついたような気がしたが、すぐビクッと体を硬直させた。何故かフィルから刺々しい視線を感じる。
「んん、あぁ、そうだ、イチカ殿、一つだけ。この子はお湯や水にはあまり浸けないであげて。この子にはあまり良くないことなんだ。出来たら綺麗な砂のところで少し放してくれれば、お風呂代わりに自分で砂浴びすると思う。」
「お水ダメだったんですね! ごめんなさい、砂がお風呂代わり……分かりました。」
こうして私の肩を定位置とする旅仲間が一匹ふえた。
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