32. I の心の叫び
勝手ながら、タイトルを少し変えさせて頂きました。
~帰らなくてもいいんですけど、死亡する可能性があるなら帰ります。~
↓
~帰りたくないけど、死にたくないので帰ります。~
に変更しました。
国境を越え、東の国。
ずいぶんと日が高くなった頃、私たちは薄暗い森の中を、息を切らしながら進んでいる。といっても、ゼーゼーと肩で息をするのは私のみで2人はまだまだ平気な様。むき出しの木の根もヒョイヒョイと避けて歩く。
ーーーー数時間前ーーーー
朝日を拝んだ私たちは、街道を外れ森に入った。森の中では移動に邪魔になる馬車を隠し、最低限の荷物だけ持ってさあ、移動! となったときに言われた一言。
「ここからは馬で移動するよ。」
と、馬車を外して鞍を付ける。一頭の手綱をハイよ。と渡そうとするが全力で拒否をしてみた。
「ごめん! 乗ったこと無い。ムリムリ!」
2人は驚いたように顔を見合せ、イチカもお嬢様だったんだね。なんてえらい誤解をうける。
仕方が無いので荷物を馬に乗せ、人は歩く事にした。
歩きながら先程の誤解を解く。
「私の居た世界では、馬に乗る人はお仕事で乗るか、趣味で乗るかの人が多くて、移動手段として馬に乗ることは殆どないの。」
「じゃあ、移動はどうするんだ?」
不思議そうにフィルがきく。
「車っていう自動で走る鉄の箱に乗ったり、電車っていうあらかじめ決められたレールっていう棒の上を走ったりするのに乗って移動かな。あとは海を越えるのには、船…はここにもある? それと……飛行機。って言う空を飛ぶ鉄の塊。」
「……鉄が空を飛ぶのかい?」
衝撃的だったようだ。グリーも声には出さないが、そんな馬鹿な……を顔面で表現している。
「フフ、そう。数百人乗せられる凄く大きな物が空を飛ぶの。だから色んな国の人たちと交流できるし、文化もたくさんはいって来てね。料理なんかその国に行かなくても各国の物が食べられる位。」
「それは誰でも乗れるのかい?」
「お金さえ払えば乗れるよ。それと、私が住んでいた所には身分階級が無いの。だから皆平民で、皆平等。」
「想像がつかないな……」
2人とも本当に良い驚きっぷり。
気をよくして私は日本の事を色々話した。
結果が冒頭で言うような様である。私の呼吸がゼーゼーからヒューヒューに変わった頃、
「少し休もうか。」
私の様子を見かねたリベルが川の近くでフィルに声をかけてくれた。
大きめの木の根元にドカッと座ると、フィルが水筒のような物を出してくれる。うっすらと果実の味がする水だった。ありがとうと言えば、こちらの世界の携帯食を出してくれた。
呼吸を整え、モグモグと食べていると、リベルが少し離れてなにかをしていた。何をしているのか声をかけようとすると、フィルがシッっと唇に人差し指を当てた。
リベルは両手の掌を合わせ、中央に空洞を作ると、そこに口を付けて喋っている。唇を離し、包み込むようにしてからそっと掌を上に向けた。すると何やら小さな虫が列を成して翔び始め、あれよあれよと鳥の形になった。
鳥は羽を一度広げ、リベルに挨拶をするような仕草をすると大きく羽ばたき翔んでいってしまった。そして、同じ事をもう一度繰り返すと、もう一羽の鳥が出来上がりそちらも翔び去って行く。
「言俐と言う魔法よ。発した言葉を文字にして、その文字を鳥や蝶何かの形にして相手のところまで翔ばすの。本人のところまでたどり着けなけれ戻ってきて伝えられなかったことをこちらに知らせてくれる。」
おおー!! っと感動したらリベルは照れながら説明してくれた。鳥の色によって紙や壁に文字として伝える鳥や、音に戻って耳に直接聞こえるようになる鳥などもいるそうだ。
魔法っておもしろい。
さて、リベルに他にも魔法の話を聞きながらご飯も食べたし、休憩もした。今度はペース配分と、お喋りでの体力の消耗しないよう考えながら歩かねば! と意気込む。馬でこの先の様子を見に行った2人もそろそろ戻って来る頃だろう。広げた荷物を片付け始める。
そこに、ガサガサと近くから音がする。見れば、森の草を掻き分けて小さなネズミとそれを追いかけてミニバン位の大きな虎が目の前に現れた。
一瞬、大声を出しそうになるも、自らの手で口を押さえ飛び出そうな叫びを必死に堪える。虎の動きを警戒しつつ、決して目を合わせぬようにネズミをみる。不思議なことにネズミも虎も私を見てフリーズしている。
先に動いたのは虎だった。虎は目の前の動かなくなったネズミをパクっと咥えると、私を見て頭を下げた。
いや、虎を見ないようにしていたので定かではないが、私の方を見ながらペコッとしたように感じたのだ。つられた私は目を合わせないままペコリと頭を下げる。
下げた先に先程使っていた菜箸が目にはいった。自衛の為にと、そーっと手を伸ばすと、
「グルルルルルゥ」
獣の唸り声がすぐ横で聞こえ、視界の端にもふもふのおみ足が……
「ハイ、すみません。あの、ここに残り物ですけどサンドウィッチが少しあるんですよ。私やネズミを食べるよりよっぽど美味しいかと……」
ダメもとで説得してみた。と、ヌゥっと私の膝横に虎の頭が見えた。そして、よだれまみれのネズミ……いや、ハムスター? がコロリと私の足の上に転がってきた。
別の意味で悲鳴を我慢した瞬間だった。
読んで頂き、ありがとうございました。




