3. T の期待
ティッシュを床に飲ませた栄養ドリンクの上にばらまきながらゲームを見る。とゲームは何故か勝手に進んでいた。
意識を失っていた筈の女キャラにはコマンドがつき、逃げる・戦う・魔法・スキル・アイテムの表示が出ている。操作は? とコントローラーを見れば誰も触っていないのにピッピッピとコマンドを選ぶ電子音がし、逃げるで決定された。
すると懐かしの2D仕様でやっているゲームの中で、女キャラは懸命に城下町を歩き回る。そして動きが止まったと思ったら宿屋に入った。
画面が宿屋の建屋の中に切り替わる。テロップが勝手に電子音を立てながら文字を表示していく。そしてまたコマンドが表示された。今度は逃げる・話す・探す・トイレ・アイテムになっている。
トイレってなんだ……と思っているとコマンドはトイレで決定された。女キャラは俯瞰画面の中のトイレに向かう。画面の中ではただ、トイレだと分かる囲いの中に立っているだけなのだが、なんとなく見てはいけない気がしてくる。意味もなく薄目で女キャラがトイレから出るのを待つ。
トイレから出てくると、このゲームの公式キャラのリベルとセレネス、フィルソンの三つ子と同じテーブルに付いた。どうするのかと見ていると 女は寝てしまったようだ。とテロップに表示され、三つ子のキャラが話し合うようすがつらつらと出ては流れて行く。
途中、 誰か来たようだ。 という文字が入り話し合いが終わった。セレネスが扉に向かい、フィルソンが女キャラを抱き上げ、2階の部屋に運ぶ。
宿に泊まる時の専用曲が流れるとゆっくりと画面がブラックアウトする。ベッドがあったであろう場所にZZZ……が出ては消えてを繰り返す。そしてまたコマンドが表示された。
一時中断しますか? する・しない
時間を見れば、もうすぐ日付が変わる時間。どうせするなら中断より保存したいので しない を選択しゲームを再開する。しかし、曲とZZZ……が繰り返されるだけで画面は真っ暗なまま。仕方がないのでメニュー画面を開く。
どういうわけか保存のコマンドは選択不可能となっていて、やめるには一時中断しかない。色々と原因追求したいところだが、下手なことをしてこの事象を消してはいけない。
このままやり続けてもいいが、今日は色々ありすぎて起きていられる自信がない。ため息をつきつつ、一時中断を選択し、バッテリー切れを防ぐために充電する。
このゲームが世間に発売されるまで、修正とチェックを繰り返す日々となる。合間合間にプレイする事になるが、自分が組んだ覚えのない謎の女キャラが勝手に動き回るこのゲームをプレイできることを、少しワクワク、ドキドキと喜びながら仮眠室に向かった。
読んで頂き、ありがとうございました。