27. S の体力
軽い、といっても防具は防具。ハァハァと息を荒くしてマリア嬢の後を着いていく。
セレネスさんの実力が知りたいです。と新たな防具と剣を装備し、上機嫌のマリア殿に森に連れてこられ、魔物との交戦を余儀なくさせられている。無料の護衛など夢の話であった……。
スライム1匹、マリア嬢に頂いた剣でアッサリ倒せた。次は3匹のスライムがお食事中の所に出くわし、火魔法と剣で倒した。その後、魔物に会わなくなった。マリア嬢はスライムでは力量が分からないと言い、ずんずんと森の奥に向かって行く。日頃事務仕事の合間に少しフィルソンに手合わせをお願いする程度の運動しかしない私には猛特訓も良いところである。
魔物が居なくなったとイラついて居るようだが、マリア嬢のオーラ? 殺気とでも言うのか、私にはあまり感じられないものだが魔物は敏感に感じているようである。所々にプルプルと震えながら隠れているのであろう動物や、警戒の音をだし仲間に知らせる類いの魔物の鳴き声がひっきりなしに聞こえる。
結局さんざん歩いたにも関わらず、スライム以降魔物には出会わなかった。が、森の奥の方に赤い屋根の小さな家を見つけた。木こり等の休憩所かとも思ったのだが、周りに畑があり誰かが管理しているのは明らかだった。
歩くことに限界を感じていた私はマリア嬢を説得し、その家に寄り主を呼んだ。おでこに痛々しい火傷の痕があり、それを髪とローブで隠すように若い女性が出てきた。
女はユノと名乗り、火傷が原因で人とあまり関わりたくないそうで、この山奥で薬師をしているのだそう。我々が来た事情を話、庭の片隅にある椅子を貸して欲しいと頼むと人嫌いという割りにはあっさり部屋にまねいてくれた。良く見れば奥に子供が居るらしい。スヤスヤと良く寝ている。
当たり障りのない話をし、少し体力も戻った所で、暗くなる前に宿に行こうと席をたった。
礼を言い帰ろうとすると、薬と馬を買って欲しいと言われた。薬は間に合っているし、馬も宿に帰れば自分の愛馬が居る。と言えば、薬は帝国で有名なユリノトという自分の師匠が作ったもので、馬もユリノトが特別に調合した餌で育った馬なので他の馬よりはかなり良い馬だと必死に言い募る。
どうやら、男と二人で住んでいたようなのだが、ある朝、目を覚ますと男が居なくなって居たそうだ。悲しくはあったものの、自分の見た目で離れていくのは仕方ない。と諦めて居たそうだ。だが、子供が居ることが分かり、産んだものの、子供を抱いて薬をもって街まで売りに行くのは大変な様で、もう少し町に近い場所に移りたいらしい。
話を聞いたマリア嬢はアッサリ薬と馬を買った。まあ、買った薬は一つを除いて全て上級な上、馬は確かにかなりしっかりとした良い馬だった。男が使っていた馬具もそのまま買取り、引っ越してきたら宿に顔を出すように言った後、お互いお礼を言い合い別れた。馬に2人で乗っていたら、マリア嬢は一人で馬に乗れない事が発覚した。何故買った……。帰りは簡単な乗馬教室を開催することとなった。
◇◇◇◇
城壁の近くまで戻ってきた。
「おーい! セレネスさーん!」
笑顔全開の農家の息子のムーと、不機嫌な顔の女の子が腕を組んで歩いてくる。
「ちわっす!! 昨日も今日も、フィルソンさんもリベルさんも見ないっすけどどうしたっすか? 体調悪いとか?」
「あぁ、体調なんかは問題ないよ。ちょっと家の用事でしばらく宿を人に任せる事にしたんだ。御用聞きは今まで通りで頼むよ。」
「はい。昨日行ったら話は聞いてますって普通に注文受けましたから! 具合が悪いとかじゃなくて良かったっす!」
「心配してくれてありがとう。戻ってきたらまた宜しくな。」
「はい! ……あっ!」
頭を下げて通り過ぎるのかと思いきや、ムーはマリア嬢を見て立ち止まった。先ほどからムーの連れている女が私に窺うように 視線をよこし、真っ青な瞼をパチパチとしてはニヤニヤとした顔を此方に向けてくる。別に可愛くは無いのでやめて欲しい。そして早く立ち去って欲しい。が、ムーの声にマリア嬢が反応した。
「何か?」
「いや、あんたフィルソンさんの好い人なのかと思って……」
なぜ、今フィルソンが出てくるのか?
「……フィルソン様? 何故? 私は挨拶程度しか話したことが無いけど。」
「え!? じゃあ旦那の好い人か!」
私を見る。何故突然そんな話になったのだ……?
「マリア嬢は宿のお客様だ。コレからお連れする。」
「だってその珊瑚の髪飾り、俺がフィルソンさんに売ったもんだぜ?」
俺の手作りだから間違いない。と胸を張ってムーが言った。と、同時に強い風を馬の背の上で受けた為か、馬から落ちそうになり、急いで体制を整える。
「ぢょ、ぢょっどばなじで!!」
カエルのようなこえが聞こえそちらを見れば、マリア嬢がいつの間にか、自分より少し背が高くガタイのいいムーの襟をもって足が浮くほど持ち上げていた。
「お前がフィルソン様に売っただと? コレは私がローナにやるために作ったものだ。証拠もある。そして、ローサが連れ去られた時に身に付けていた! どうやって手に入れた!!」
ムーの歯がガチガチと音をたてる程揺さぶられている。
「マリア嬢! それではムーが話せませんよ。少し落ち着きましょう。」
「……ごめんなさい。でも、今言ったようにコレは私が作った髪飾りでローナが付けていたものだ。 どこで手に入れたのか教えて欲しい。」
マリア嬢は涙目になりながらムーに頼む。ムーも同じく涙目になりながらも素直に入手した場所を話した。どうやら朝の配達の途中で拾ったらしい。それを小遣い欲しさに作ったと嘘をついてフィルソンに売ったそうだ。拾った場所に案内させれば連れ去られた場所のすぐ近くだった。戻ったきたらリベル辺りにガッツリ説教を食らうだろう。
そして、マリア嬢はイチカがこの髪飾りをしていた理由に思い当たり真っ青になっていた。
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