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24. F のあの日②

二人が出て行ったあと、城壁の外側に農地を持つ農家の息子ムーが、追加で頼んだ食材を届けに来た。


ムーは商店とお客を巡り配達業のようなことをして小遣い稼ぎをしている。確か、もうすぐ15になるんだったか。


「フィルソンさーん。頼まれたもん持ってきたっす!」


「あぁ、ご苦労様。これ、商品と手間賃な。」


「ありがとっす。…………あの。」


いつもはさっさと次の仕事に行くのに、今日は何故かモジモジと何か言いたげだ。


「どうした、なんかあったのか?」


促してやれば、頭をポリポリ掻きながら腰に着いたポーチから何かを取り出し俺の目の前に出してきた。


見ると真っ赤な珊瑚にリボンとレースが付いた髪飾りだった。


艶のある黒い髪に似合いそうだ……と思っていると、


「これ、買ってもらえませんか?」


「お前が食材以外を持ってくるなんて珍しいな。どうしたんだ?」


「つ、作った!か、海岸で珊瑚を拾ったんだ。……花屋のアヤナにやろうと思って。でも、髪飾りより耳飾りの方が良いって言われちまって……」


人から貰うものにどうこう言うのはどうだろう? とも思うが、ムーが気にしないなら俺がとやかく言うことではない。


耳飾りはいくらだと聞けば、そんなに高値ではないので耳飾りが買える値で買ってやった。


ムーは何故か申し訳無さそうで複雑そうな顔をしたが、ありがとっす! といつも通りの挨拶をして帰って行った。



◇◇◇◇



夜の営業が始まる少し前にリベルとイチカ、それに何故かセレネスもいっしょに帰って来た。


支度はほぼ終わっていて、後はテーブルのセッティングを残すのみ。どうやら話の流れからイチカも手伝ってくれるらしい。天創人の特徴があるので心配だったが、髪は綺麗に結い上げ布で覆ってしまい、眼鏡をかけたらあまり気にならなくなった。


食堂を開店すれば、給仕の仕事をしたことがあるのか、とても良く働いてくれた。夕食にはデザートを付けてやろうと密かに用意した程だ。


夕食を食べながらイチカについて色々と聞いた。


彼女はこの国どころか、ここにくる前の記憶を持ち、別の世界から来たかもしれないと言う。天創人は種から生まれるので記憶は生まれ落ちて目が開いた瞬間からしかない。と研究者が言っていた。イチカについては聞けば聞くほど謎が深まるばかりだ。


セレネスが勇者を実家に届けるついでに、オヤジ殿にイチカについても話したらしく連れてくるように言われたらしい。しかも、何故か俺たち兄弟にも召集がかかった。嫌な予感しかしない。


明朝、早く出掛けるからとイチカを先に部屋におくり、リベルと二人で詳しく話を聞く。どうやら天創人としての選別を受けさせるらしい。


天創人は有益の者は ○○の匠 という称号が付いて、逆に魔人には 魔物○○の守護魔人や、魔人○○ と言うような称号がある。


選別でイチカにどちらの称号が付いているか分からないが、オーラから判別すれば悪いものではないはず。


イチカより早く戻りオヤジ殿に色々と説明しろ。と伝言を預かって来たセレネスは俺たちに伝えると、疲れたから早々に寝ると部屋に戻り、リベルはイチカは絶対有益!! と選別を受けさせること自体にプリプリ怒りながら明日の宿の仕事を任せる者達への引き継ぎの用意をしていた。


俺はと言えば、昼間にムーから買った髪飾りを見ていた。黒髪に映えそうな赤の珊瑚と白いレース、ピンクと金のリボンで装飾されたそれは、良く見ると少しチグハグだった。装飾品には詳しくないが、珊瑚は発色も形も良く、とても良いものに見える。それに対しレースやリボンはそんなに高価なものでは無さそうなのだ。


もしや、拾ったとはいえかなりいいものなのでは? あの金額では安すぎたか? と考えていたら、ヒョイっとリベルが髪飾りを取り上げた。


「どうしたんだい? コレ。あんたが髪飾りを持ってるなんて珍しいじゃないか。」


「ムーが好きな子の為に作ったが、別のモノが欲しいと言われたから買ってくれと頼まれたんだ。」


「なんだいそりゃ……ムーはもう少し女を見る目を養う方が良いだろうね。で、コレはどうするんだい?」


「使うならやるから持っていけ。」


「ありがたいけどね、私の髪の色には合わないねぇ。どちらかと言えばイチカみたいにキリッとした色の髪に似合いそうだけどねぇ。」


ニヤニヤとこちらを伺いながら髪飾りをくるくる回している。俺はため息をついて、


「ならばイチカにやってくれ。俺が持っていても使わんからな。リベルが似合うと言うならイチカに似合うんだろう。」


「そうかい? じゃあ、早速明日メイドに渡してコレ似合うドレスを着せるように言っておくよ! ……レースなんかはそうでもないが、珊瑚はかなりの一級品だしね!」


「珊瑚はやはり良いものなのか? 耳飾りが買える程の金しか出さなかったんだが……」


それを聞いたリベルにかなり驚かれ、次に合った時に渡した金額の倍を渡してやれと叱られ、物の価値をもう少し勉強しろと説教を喰らった。


その後、ムーから買ったその髪飾りがかなりの波紋を呼ぶのだが、その時は珊瑚とはそんなに高いモノなのか……程度の認識しかなかった。

読んで頂き、ありがとうございました。

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