23. F のあの日①
今更ですが……
I = 一華
T = 平良
F = フィルソン
の視点です。
――――少し時間は遡る。
その日、雨でも無いのに天創人の種の播種を示す天啓があった。いつもなら土壌となる大地を潤すため雨を降らせてから種まき兼天啓を兼ねて落雷があるはずなのだが……
天啓から暫くして、食堂の最後の客が帰り、姉のリベルと兄のセレネスと共に食堂の片付けをしていると、遠くの方で ぅおおおおおおー と魔物の雄叫びのようなものが聞こえ、ガシャーンやらドカンやらドンドンと戸を叩くような大きな音が立て続けに聞こえた。
ここは北の国、ノースキー王国の王都ゲルシュ。魔物など、よほど強く無ければ入ってこれないはずだが?と耳を澄ます。部屋を見れば2人も動きを止め耳に神経を集中させている。
すると、タッタッタと子供が走るような足音と、家の裏に置いてある木箱がカタッと動く音がする。音をたてないように小窓から裏を覗けば、暗い色合いの髪をした小さな影がゼーゼーと肩で息をしながら路地の入り口を見つめ隠れている。その様子を二人に確認させるとアイコンタクトでそれぞれが動く。
俺は魔覇刀を片手に扉のすぐ脇に立ち、リベルは聖水を握りしめた。そしてソッと裏の扉を開けると、セレネスが動きを制限するように腕ごと抱え、口を素早く塞ぐと店に引き摺りこんだ。相手はバタバタと足を動かし抵抗しているようだ。リベルが急いで落ち着けと声をかける。と、案外アッサリ静かになった。3人とも拍子抜けしていると、声をかけたリベルがなんとも不思議な物を見るような目で捕まえたモノを見ている。
セレネスの横に周り抱え込まれた物を見れば、艶やかな黒い髪の女の子供だった。
言葉が分かるのかと聞けば、分かると合図をかえす。そして何か言いたげにセレネスの腕をパシパシと叩きながらモゴモゴと口を動かしている。 リベルに言われセレネスが女の子の口から手を離せば、トイレを貸してくれと訴えてくる。場所を教えてやるとすぐさま走っていった。3人で顔を合わせ肩をすくめる。
トイレに行ってる間に俺はキッチンに隠れた。リベルがテーブルに付き、セレネスがその後ろに立つ。キッチンが背中になるように女の子に席を進め座らせる。
さて、質問を……と思っていると女の子の体がユラユラと左右に揺れてはピクッと止まり背筋を伸ばして座り直す。も、またすぐにユラユラと揺れ始める。リベルが色々と質問するが、はい。はい。と聞いているのかどうかもよく分からない返事を返すだけだ。 オイオイ、と苦笑いを堪えて見ていたら、ゴンッとテーブルに頭をぶつけて寝てしまったようだ。
危機感が全く無いような寝顔で、おでこを真っ赤にして寝る子のオーラをスキルで見てみる。髪だけでなく、瞳も黒く天創人の特徴を持っていると言われたが、魔人のオーラとも有益の天創人とも違う神々しいとでも評するようなキラキラと輝くようなオーラが視てとれた。嫌な感じはしない。悪い子ではないと思うと2人に話しているとコンコンと入り口がノックされた。
店が終わってから訪ねて来る者など滅多にいないので、警戒しながら返事をする。どうやら城門の兵士が人を案内してきたらしい。
兵士と客の相手は2人に任せて俺は女の子を客室へ運んだ。食事をきちんと摂っているのか心配になるほど軽く、力加減を間違えたら折れてしまいそうな程小さく、華奢だ。ベットに下ろすと無意識に頭を撫でてしまい、驚いて急いで部屋を出た。
食堂に戻ると、青い髪の少女が手紙と板のような物をテーブルに広げて泣きじゃくっていた。リベルが必死に宥めている。
セレネスは手紙を読んだのか眉間に皺を寄せ、板を手に取った。確か、監視を任せている者に持たせる身分証の代わりの板だったか……言いたいことが分かった。監視対象の勇者に何かがあったということだろう。
少女が落ち着くのを待って話を聞いた。驚いたことに少女自身が勇者だった。聞けば、親に内緒で町にくる途中に盗賊に襲われ、友達と一緒に逃げた先で魔物にも襲われ、友達を連れていかれたらしい。運の無い勇者だと思った。勇者はとにかく友達を助けに行くのだ! と泣き止んでから意気込んでいるが、1人でフラフラと行かせるわけにはいかない。今夜はとりあえず泊まっていけと言っても言うことを聞かないので、仕方なく夜中に馬を走らせ勇者を実家の公爵邸までセレネスが送ることになった。
◇◇◇◇
次の日、昼の営業が一段落し、一息付こうかと言うときに夕べの娘が起きてきた。化粧のせいで一悶着あったが、どうやらニホンジンと言う異国から来たイチカと言う名の娘らしい。
俺は西の国と帝国には何度か行ったが、それ意外の国は行ったことが無い。なのでニホンジンと言う村か町かどの国のモノなのか分からないが、どの国でもやはり黒目黒髪は居ないはずなので正体は不明。
どうやら夕べ失くし物をしたらしく、屯所に行きたいと言うので目立つ服を着替えさせた。ここの民族服の子供用をちょうど良く着ていてとてもかわい……似合っていると思う。
その後、とにかく遅くなる前にとリベルに連れられイチカは頓所に向かって出ていった。
読んで頂き、ありがとうございました。




