22. T 、流れを読む
騒動が収まった後、イチカ、リベル、フィルソンが屋敷から居なくなっているのが分かった。
マリアを動かし、瓦礫であろう塊を片付けているメイドさんと話をしたところ、イチカが魔人で、2人とも誑かされて連れていかれた誘惑説、魔物がイチカを誘拐しに来て2人が助けに出た誘拐説、イチカとフィルソンの駆け落ちに気づいてリベルが止めに行った逃避行説、等々メイドさん達が好きそうな噂として話されていた。
襲撃され壊された建物を見て回り、屋敷に勤める人達に一通り話を聞いた後、執務室に向かった。部屋には2人居た。グリンとセレネスだ。当主であるグリンは、イチカが主体でここからにげたと見ていて、次期当主のセレネスは誘拐説を支持しているようだ。
2人に質問すると、ミニムービーが勝手に始まった。
「イチカを捕らえる部隊を編成する。」
「捕える!? まだ逃げ出したと決まったわけではないでしょう!? 部屋が荒らされた痕跡もありますし、魔人に誘拐された可能性だってある。」
「……どちらにしろ、3人を探す必要がある。陛下にイチカを連れて登城する様命じられている以上、イチカが見つからなければウリーボ家が責任を負うことになるだろう。セレネス、お前が3人を追え。」
「……分かりました。3人を必ず連れて戻ってきます。」
「あの! 私も一緒に連れていって下さい。ローサの髪飾りを持っていたイチカが唯一の手がかりなんです!!」
「マリアさん、申し訳ないが…「分かった。明日、勇者であるマリア殿が陛下に謁見できるよう調整を頼んでみる。セレネスは謁見が終わり次第、旅に出られる様に支度をしておきなさい。」父上!」
「ありがとうございます!」
「異論は認めん。支度を済ませておくように!」
「……わかりました。」
驚きの展開が怒涛のように続いて唖然とするしかなかった。
何故か主人公、いつのまにやらセレネスと旅に出ることになってますけど?? セレネスは、攻略対象者ですらないので旅に出てもスキルや魔法なんか使えませんよ?
後ろからクツクツと笑う声が聞こえる。なんだと振り替えればハルさんがお腹を抱えて笑っている。
「主人公が変わっちゃったよ? フフ……この流れだとセレネスがメインだよね? ハハッ、勇者をお供にモブが旅に出るんだねぇ。」
言われてみれば、そういう流れかもしれない。
とりあえず2人に話を聞くも同じ答えしか返さなくなった。一度部屋に戻り通信を試みるが、通信どころか休憩も出来ない。
そういえば! と思い立ち玄関に行く。見張りはおらず屋敷を出ることが出来た。首領の屋敷があるのでそこそこ大きな街を歩き回り、家などの建物は一件一件入ってみる。
武器屋などを覗いてみれば、屋敷に飾ってあった斧や剣、鎧なんかも売れるようなので、売ってその店で一番高い武器を買って装備してみた。防具屋もあるので同じように一番高い物を買って装備。後は道具屋や教会に行ってみた。
もしかしたらセーブ出来るかも! と期待したが、やはりセーブは出来ないようだった。
旅に向けて着々と準備し、ちょっと街の外に出る。すぐさま
魔物が現れた! のテロップ。初期の初期、お馴染みのスライムが一匹こちらを見ている。闘うのコマンドを選び装備した剣で攻撃。スライムがただの銅の剣で切られたにしては異様に高い攻撃力でやられていた。
魔物とこれ以上闘ってもレベルは上がらないのでまた屋敷に戻る。
やるべき事が全て終わったのか、入った瞬間に休憩の強制が発動されて画面が黒くなる。曲とZZZ……からして寝ているようだ。
画面が明るくなるとメイドが部屋に来て城に行くようのドレスを選べという。苦手なミニゲームだ。はぁ、とため息をつけば変わるよ! とハルさんがやってくれた。MAXのスキルポイントゲット。これから、ミニゲームはハルさんの仕事に決定。と心のメモ帳に記入した。
馬車の絵が出て森の中の道を進む絵が出る。兵士A・B・Cに囲まれ、城に向かって進む。
何事もなく城下に着いた。かなり広い街を見て歩きたいのだが、城へ進む道から逸れて歩くことは許されないらしい。仕方がないので強制に従い玉座の間前までグリンの後を付いて行った。
予め組まれた玉座の間が開き、勇者の証の剣を王から授かるアニメーションが流れる。これは第3者から見た王とマリアの絵で、マリアが跪き頭の上に上げた両手に剣が乗った台座を受け取っているものである。
「勇者の印を持つマリアよ。そちに勇者の証の一つ玄の剣を授ける。帝国より魔王の誕生の予兆があるとの報告があった。他の証を揃え、友を助ける旅と共に、魔王誕生の予兆の真偽を調べてほしい。」
「謹んでお受け致します。」
予定通りのやり取り。プログラム通りに進む。
「あぁそれと、新種の……雌の天創人だったか。宰相の所から逃げだしたとか。見つけたらついでに捕まえて連れてきてくれ。」
「……御意。」
これはプログラム外の会話。
こうして謎のキャラクター カゲノ イチカ はこの世界の勇者に追われることになる。
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