164. T のデータ
後半、タイラのオマケがあります。
なので本編は少し短めです。
オマケは読まなくても本編に支障ありません。
あぁぁぁぁー………恥ずかしい。ノリアスさん、もう勘弁してください……
宿から教会への移動中の馬車の中、夕べの失態をノリアスが俺のしゃべり方や動きをトレースして教えてくれている。
「ほんっっっっと、申し訳ない。」
ノリアスの物真似がそのままだとすれば、愚痴と言うより、言いがかりに近い嫌がらせだ……俺ってホント、サイテー……誠心誠意謝ったら、セスもフィルもホルスも笑って許してくれた。やっぱり良い奴らだ!!
記憶が飛んだことも、二日酔いにならなかった事も初めてだ。酔って何か口走ってもいけないので、こちらでは酒は止めておこう……と心に誓う。
教会に着き、逃げてきた子供を呼んでもらう。子供の手にはデッケェ卵。……卵? え?? あれって……
ホルスが話しかけているのを横目に祭壇へ向かいカズヤさんを呼び出す。確認すれば、カズヤさんの後ろで竜の卵だろうというハルさんとプロデューサーの声。 やっぱり……
本来なら、竜の住む山で出会うハズの竜族。しかも、真っ白な卵って事は女王を表しているハズ……孵って無いのかよ……話が通じるかは分からないが、一応、興味を引きそうな事から声をかけてみる。
反応は上々。しかも、鑑定に近い竜眼も使えるようで面倒な説明をしなくて済んだ。ラッキー!! って思っていたら俺に向かって倒れて来た。ヤバッ! ととっさに手を出すが卵が結構重い……両手で卵を持ち、女の子を抱き抱えるように受け止めるも俺のヤワな筋力では耐えきれるハズもなく、アッサリ共倒れ。
卵だけは必死に守ると、スッと取り上げられる。目の前には呆れたように卵を片手で持つホルス。大丈夫ですか? と声をかけて俺の上に倒れ込んだ少女を退かすマリア。グイッと手を引かれて、怪我は? とぶっきらぼうに聞くフィル。
そして、共通して説明を求める視線。
「タイラ様、……女王ってもしかして」
ホルスが先陣を切って質問する。なので簡単に説明をしてやる。と、奥の部屋から『ダスキート!!』と言うセスの声が。驚いて皆で駆けつけてみる。
部屋にはふてくされたように、そっぽを向く男。セスが男に向かい文句を言えば、相手もそれに答えている。内容は微妙にズレているが、ダスキートと呼ばれることに違和感は無いらしい……
……ダスキート?? コイツが?? え? 『ドゥクラン』じゃなくて??
◇◇◇◇
申の対象者『ドゥクラン』は妾の子。一夫多妻が認められている人獣において、子が出来た時点で『妾』はあり得ないのだが、その時の夫人(人族の貴族の娘、後の第一夫人)は非常にプライドが高く、メイドだったドゥクランの母を『夫人』に迎える事に反対した。
ただの子として産まれたならば、母と共に公爵の庇護の下、細々と暮らす事も許されたのだろうが、彼には印があった。その為、親元から引き離され、屋敷の中で義兄弟達に苛められて育つ事になる。
とりわけ、嫡男であるダスキートと誕生月が違うものの、年齢は一緒。顔も双子かと言うくらいによく似ており、能力においてはダスキートより優れた物を発揮していた。その為、ダスキートには蛇且つのごとく嫌われており、常に顔を覆う仮面を着けることを指示され、呼べばすぐに来れる場所にいることを強要された。
そんな彼はダスキートの廃嫡と共に表舞台に出てくる。心に闇を抱えつつ、領地を守っている時にマリアと出会い、共に魔王を倒す旅をするうちに癒されてゆき……
と、言うのが『ドゥクラン』ルートを選ぶと追々出てくる設定。
◇◇◇◇
……そうか、ドゥクランとダスキートは顔が似てる設定だった。顔は良いのにお馬鹿とかホントにもったいない……
そして、ドゥクランの設定を思い出してる間に、なぜトマトの根腐れの話になってる?? ナーナと呼ばれる修道女が頭を下げ、ダスキートを拘束していた紐を外す。すると、出資がどうとか言ってダスキートも頭を下げた。俺にはどうなってるのかサッパリなんだが……
ダスキートとセスのやり取りを聞いているうち、このダスキートには商才はあっても、悪巧みは出来そうもない。黒幕は、同じ顔でダスキートが廃嫡されるまで周りに顔が知られて居ないドゥクランではないかと結論づいた。周りも既にダスキートを生暖かく見ている。
ドゥクランはダスキート以外の兄弟にも苛められていたし、夫人達に至っては躾と言う名の暴力も受けていた。父親である公爵は家の事には興味が無いらしく、ドゥクランの生活環境など目もくれなかった。屋敷の奉公人達も、夫人の目を畏れて見てみぬ振り……うん。屋敷丸ごとぶっ壊したくなるよね……動機は十分。
むしろ、そんな環境だったのによく我慢して領を守ってたよ………………いやいや、同情してる場合じゃなかった。ドゥクラン止めなきゃ。攻略対象者じゃん!!
あー、もう! 次から次へと……俺とイチカちゃんは向こうの世界に帰る手段も探さなきゃならんのに!! ドゥクランも対象者なら大人しく主人公が来るのを待っとけよ……なんで悪役みたいなこと始めたんだよ……
ダスキートはしっかり者のナーナちゃんに任せ、我々は当初の目的通りドラド達との合流を目指す。卵の女王の話では、そこに『竜王』も居るらしい。
ドラゴン……憧れるけど、会うなら物語上の理性的な方に会いたかった……
◇◇◇◇
164.5 タイラ オマケ
~こちらの世界の現実について。~心のメモ
*キャラクター*
こちらの世界のキャラクターはアニメを実写した時の、『あ、この俳優/女優イメージピッタリ!!』的な顔立ちの人間であること。無いとは思うが、またこんな事態になった時に備え、次回作のキャラクターの設定の時、デザイナーさんに好みをアピールしてみようと思う。
*生活面*
日本人が作ったゲームだからか、基本スタイルは日本と変わらない。風呂も石鹸なんかもキチンとある。が、細かいモノ……例えば剃刀。電動かT字しか使ったことが無いので、普通の剃刀だと上手く剃れない……顔切りそうで怖いよ……
設定段階でこういうことも事細かに決めた方がこちらの世界にも反映されると思う。いや、もう来ることは無いとは思うんだけど……
*時間と移動*
先日……で良いのか? カズヤさんと話していて驚いた。俺がこちらに入ってから数日しか経ってないと言う。俺はこちらに来てからもう少しで半年だ。時間の概念が現実世界と違うのだが、リアルの時間に換算しても数ヵ月は経っている。
どうやら、移動中の野宿や、途中の小さな村での間借りはゲームには反映されないらしい。ぶっちゃけ、街から街は短くて2日、長くて5日、更に条件によっては10日かかることもある。ホント、この苦労を次はプロデューサー辺りに……。いやいや、こちらに来られても困るか……
とりあえず、元の世界に帰ったらハルさんに残業手当を請求してみよう……
読んで頂き、ありがとうございました。




