143. T、西入り
フィルが俺の正体を明かした後、疲労困憊の俺は部屋で寝たかったのだが、何故か晩餐に強制参加させられることになった……
晩餐までの間、部屋に戻って用意されていたベッドにダイブし、伸びをしながら欠伸をして、ア~ア! と声を出す。久々の1人部屋。ちょっと嬉しい!! と、誰かが訪ねて来た。嫌な予感がするので聞かなかった事に……
ガチャっと扉が開く。え! 今返事しなかったよね!? と、ワラワラと旅仲間が部屋に入ってきた。俺のプライベートはいったい……
セスがなにやら話があると言うので聞いてみると、このメンバーで西に行くのに懸念があるらしい。
確かに。本来なら勇者と共に魔王討伐に向かうのは5人。現時点で魔王モドキがいる西には辰と戌と酉と申の印持ちがいるはず。そこに亥と卯が加わったら定員オーバー。設定が変わってしまう。……まぁ、今さらだが……
「それと……無いとは思うのですが……もし、今後中央やこの大陸内で強い魔物が出た場合、また転移門で移動するにしても、魔導師達の回復次第で人数の制限がかかります。」
あー、そうか……確かに西に戦力が集まりすぎると、ここでの対処が難しくなるか……まずは連れていく人選をしなくては。……あと、移動に関してはちょっと考えがあるからそれはまた後でだな。
で、人選に悩んだ結果、マリア(主人公を置いていくわけにはいかない)、フィル(置いていったら殺されかねない)、ノリアス(もはや保護者気分&一応『魔王』なので、バレた時の為に監視下に置いてありますアピール)、ダン&バリー(情報収集の為)を連れていくことに決めた。
案の定、ファジールから抗議の声が上がったが、ここはひとつ大人になって貰おう……って、泣いちゃったよ……ごめんよ、ファジール。
◇◇◇◇
夜、というか夕方。王様達との晩餐に参加。始めはヨーロッパ辺りのお城? で良くみる、ながーいテーブルでカチャカチャと静かに食事をしていたものの、皇帝が興味深々に神の国がどうのこうのと質問を始めたのを皮切りに、次々に質問が飛んで来る。そして、自分達の領土で取れた果物やら作った酒を食えや飲めやで最後は何故か大騒ぎだった。
そんな中でも、西の王は一人静かにその様子をみて、微笑みながら周りを気遣っているのをみて、若いのにしっかりしてるなぁ……と感心した。と、言うより、他の王さま達陽気すぎるだろ!?
絡まれ酒の晩餐が終わり、部屋に戻る。明日の朝はメイドさんがお越しに来てくれるそうなので安心して布団に入る。久々にゆっくりと寝られる……。俺はすぐに意識を手放した。
◇◇◇◇
次の日の朝、メイド長だと言うかっちりとしたおばあちゃ……女性が起こしに来た。カワイイメイドさんが起こしてくれるものだと思っていたので、目の前にメイド長の顔があった時は、心拍数がヤバイくらい跳ね上がった。
朝食を食べて、転移門があると言う中庭の一角に集まる。西の王だけではなく、他の王達もそれぞれの国へ戻るらしく、集まっている。昨日の晩餐で、張りぼての威厳は取り払われ、気さくな神として定着してしまったようだ。
「では、タイラ神様。今度はうちの国にも遊びに入らして下さいね!!」
皆そう言って各々の国へ帰っていった。ちなみに、ヒルダ神様呼びをやめてと言ったら、何故かタイラ神様呼びになってしまい、そのまま定着してしまった模様。……取りあえずヒルダよりは呼ばれたときに反応出来るので、そのまま訂正せずに放置決定した。
「では、そろそろ我々も参りましょうか……」
王の中でも序列があるらしく、一番若い西の王が一番最後に転移門を使用する。王と宰相と騎士が5人。他の王に比べると大分従者はすくない。
「転移される方は皆様だけですか? そちらは??」
転移組は4人とダン、それと馬車とそれを引く普通の馬と『だーく』。それとは別に、俺達を見送るために、皇帝の後ろで手を振っているリベルとセス達に気づいた西の王が聞いてくる。
「我々はこちらでやることが御座いまして。西の王様。タイラ様始め弟たちをよろしくお願い致します。皆様もどうかご無事で……」
セスが頭を下げると、それにつられて城の人達は皇帝以外、皆頭を下げた。
転移門をくぐる。目の前がぐにゃぐにゃと歪み、足下はフワフワとしているようで歩きにくい。学生の時に交通安全の授業でかけた『酔った状態を経験出来る眼鏡』をかけているようだ……
「着きましたよ。」
うッぷ……見事に酔った。馬などはやはり酔うらしく、あらかじめ目隠しをして通すらしい。先に言え!! ってか、馬車に乗れば良かった……王様が歩いて入るから、つられて歩いて入ったのがそもそもの間違いだった……
西の国王の城は、白い石造りでとても明るい印象。
「部屋を用意してございます。ゆるりとなさって下さい。」
「ありが「いえ、出来れば討伐隊とすぐにでも合流したい。ドラド総隊長の居所は分かりますか?」……」
えー、ちょっと休ましてぇ……頭、ぐわんぐわんしてるんだよー……。
「フム、そうか。」
西の王は気を悪くした様子もなく、近くの兵士に聞いてくれた。だが、何故かみるみる表情が曇る。
「それで? ……分かった……。」
「何かあったのですか?」
「あぁ、お探しのイチカ様なのですが……酉領での自由行動の際、イチカ様と同行していた者がはぐれてしまったそうで、イチカ様だけ時間内に戻らなかったため、置いて出港したそうでして……」
イチカちゃーん……勘弁して……。やっと会えると思ったのに………………うん? 待てよ、はぐれただけで集合時間に戻らないってあり得る? 子供じゃないんだし、はぐれて迷ったところで人に聞けば港までの道は分かるよね? ……もしかしてまた捕まって身動きとれないとか……??
フィルをみればいまにも飛び出して行きそうだ。
「はぐれた場所とかは分かりますか?」
王さまは報告した兵士に聞いてくれる。
「イチカ様の所にこのまま行かれるならこの者に案内させます。騎士隊達は陸と海の部隊に別れて移動しているようです。ドラド達は海からの部隊に同行しているようなので、申の領土まで行かなければ会えないでしょうな……」
少し休みたいのが本音だが、万が一を考えると悠長にもしていられない。王様に礼を言って直ぐ様居なくなったという酉領の街へ向かった。
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