14. I の訪問
執事さんに言われるがまま馬車に乗り込むとこと半日、カタカタとリベルさんたちの実家に向けて運ばれていく。乗り慣れない上に、ギリギリと締め上げられたコルセットとモッサリしたドレスのお陰ですこぶる体調が悪い。
早く着かないかと馬車の扉のに付いたスライド式の扉をそっと開けて外を覗く。すぐそばに屯所に居た兵士達とは違う制服を来た人が馬に乗って並走している。
「どうされました?」
覗いて居ることに気づいて声をかけてくれた。
「少し酔ってしまったようで……到着はまだ先ですかね?」
「顔色が悪いですね。もう見えておりますのでもう少し辛抱してくださいますか?窓を全て開けて、遠くを見ると良いそうですよ。」
心配顔でアドバイスをくれる。そんな兵士に癒されながらなんとか頑張っていると、生け垣と立派な門が見える。
門をくぐり、カタカタ・カタカタ……馬車が止まるまで随分掛かった。朝、メイドさんが来たときからウスウスは感じていたが、3兄弟の実家は相当なお金持ちらしい。
馬車の扉が開くと、先程のオジ様執事が手を出してくれる。降りる時の支えをしてくれるようだ。ありがとうございます。と手をとり転ばないよう慎重に降りる。
玄関の大きな扉が開けられると、綺麗なドレスを着たリベルが出てきた。
「遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ!」
と笑顔で出迎えてくれた。ゥオッホンっとまたオジ様執事の咳払いが聞こえる。見ればリベルが肩を竦めていた。
結婚式でしか着る機会が無いようなドレスをビジッと着こなしたリベルは物語に出てくるお姫様のようで、見たままを口にする。
「姫様ぁ? ハハッ……、ンン。ウフフ、ありがとうイチカ。誉めて下さって嬉しいわ。」
私の後ろに居るであろう執事さんから刺々しい視線を受けたらしく、口調がかわる。そんな様子がなんだかおかしくて笑ってしまう。
リベルも苦笑いしながら、こちらへ と案内してくれた。
通された部屋は応接室なのか、テーブルと椅子が中央におかれている。壁には絵が飾られ、キラキラと光るモチーフが良くわからない彫刻などがそこかしこに置かれている。そして、なにより広い。我が家のリビングどころか、1階の床面積と同じ……いや、それより広いかも知れない。あと、落ち着かない。
リベルをみれば、母親が子供を見るように微笑んでこちらをみている。
しまった、何かルールなりマナーがあるのか?なんだ、どうすればいい? 何かは分からないが彫刻でも誉めてみようか? 困った私はスキル、愛想笑いを繰り出してみた。
「あぁ! もう! やっぱり可愛いわ!!」
言葉の最後にハートマークが見える気がする。これがスキル効果か!?
リベルは私の両手を掴んでブンブンと上下に振っている。いつの間に来たのか、七五三の貸衣装で見たことのある貴族服に身を包んだフィルソンとセレネスが扉の所で固まっていた。
ゥオッホン。オジ様執事の合図が響く。リベルはハッと私の手を離し、フィルソンとセレネスは金縛りが解けたかのように動き出す。オジ様執事の咳払いの効力に改めて驚かされる。
「呼び出したのにすまない。父が来るまでもう少し待ってくれ。」
と、4人でお茶をしながらこの屋敷の主であり、3人のお父さんを待つことになった。その間にマナーなどを色々と聞くも、思った以上に難しすぎてお茶どころではなく、結局一口飲んで聞きに徹する。
◇◇◇◇
お越しになりました。と扉が開くとフィルソンとセレネスが少し渋くなった感じの男性が入ってくる。折角聞いたマナーも忘れ、慣れ親しんだ行動をとる。
ガバッと立ち上がり、お邪魔しています と直立不動からの直角お辞儀。当然、相手は面食らい驚いた顔をする。そんな父親を見て、子供3人がクスクスと笑う。
ゥオッホン。今日何度目かのゥオッホン砲である。当主にも効く万能砲のようだ。
「あぁ、ようこそ。この屋敷の当主であり、この国の宰相を勤めている、グリン・ド・ウリーボ公爵です。」
「一華 影野です。本日はお招き下さりありがとうございます。」
マナーを思いだし、先程お茶を飲みながら教わったカテーシーと呼ばれる挨拶を試みる。緊張なのか、足の筋力の問題か、自分でも分かる程プルプル、ユラユラと不安定だ。あ、倒れるかも!?と思ったときにスッとてが延びてきたので咄嗟に掴む。グリンさんが見ていられなかったようだ。肩と口の端ががフルフルと震えている。笑って頂いても構わないのだが、そこら辺は紳士道と言うものか顔を背けると一つ息吐くと何事もなかったかのように先程までお茶を飲んでいた席にエスコートされた。
「楽にして貰って構わない。」
そう言われてちょっと緊張がとける。
「イチカさん。色々と聞きたいことがあるのだけれど言いかな?あ、あと出来ればステータスを鑑定させて頂きたい。それともう一つ。会っていただきたい人が居るのだが。」
「どなたですか?」
何故かフィルソンが聞く。
「お前も一昨日会っただろう? マリアさんだ。」
マリアの名前を聞いた3兄弟が全員顔をしかめる。改めて見るとリベルも合わせてそっくりである。さすが兄弟。
グリルさんはそんな3人を気にもせず穏やかに、いいかな? と確認してくる。3人にそんな顔をされると不安しかないが、拒否権があるのかどうか……
公爵で宰相だと先程言っていた気がする。貴族のランクなどは良く知らないが、宰相の意味は知ってる。国を動かす立場の人だ。権力に弱い私は申し出に応じることにした。
読んで頂き、ありがとうございました。




