101. T 起床
「……さ……、……イラ……ま。」
「タイラ寝すぎー!!」
ユラユラと心地よい揺さぶりから、突然のボディーブロー。
ぅぼぁッ!! とよく分からない鳴き声と共に目を覚ます。一応、この世界では神というポジションのはずなのだが、敬われないどころか、扱いが日々雑になってる気がする……。
「大丈夫ですか? 話してる途中に突然倒れたので驚きました……。」
え? 倒れた?? ……記憶を辿る。……そうだ、中断セーブでこの世界が突然閉じたんだ。閉じる前に聞いた声、プロデューサーだよな……もう一人は、まさかカズヤさん!? リアルでどのくらいの時間が経ってるかわからないけど、巻き込まれてたら申し訳ない……
それと、中断セーブはこの世界の住人には影響は無いらしい。これから、俺だけ突然寝ることがあるってことを伝えた方が良いかも……。考えていたら、
「ホントに大丈夫?? ここら辺で休めるところ探す?」
ノリアスが覗き込んで聞いてくる。大丈夫だと言えば、無理をするなとフィルも心配そうだ。
「問題ない。驚かせて悪いな……。で、えっと……」
周りを見れば所々に焦げ跡があり、少し広いところに魔物がリベルの鞭によって一纏めに括られている。喋っていた狼も括りの中で大人しくしている。
「あの狼と少し話したいんだけど、暴れたりしない??」
「私の鞭、当たった魔物の魔力を吸い取る革で出来ています。ああやってずっと触れていれば、魔力が底をついたものから魔素に戻って行きます。話があるならお早めに。もう、暴れられる力もないでしょう。」
案外、怖い鞭をお持ちだったようで……リベルにお礼を言い、魔物達に近づく。
「狼くん。さっきの話、詳しく教えて。」
「……サッキノ?」
「そう。もう一人の魔王候補の話。」
「アノマオウ、マゾクノヌシ、コトワル。ヒトガツクッタマオウノウツワミツケタ。ワレラデマオウニスル。」
「人が作った?? 魔王を人工的に作ろうとしてるってこと?? え、誰がそんな事……」
ノリアスを見ながら喋る狼の言葉に、一緒に聞いていた3人も、一様に驚いている。
「ダレ? ナマエシラナイ。 ニ……」
ヒュッっと風を切る音がしたと思うと、ダーツの矢が狼の顔面に3本刺さっていた。狼はアガッと短い悲鳴を上げると、毒が塗ってあったのか、ガクガクと痙攣しそのまま動かなくなり、魔素となった。と、空いた隙間を埋めるように鞭が勝手にギュッと締まる。……え、ナニソレ、怖い……!
俺以外の3人は直ぐ様武器を構え、俺を囲むように立ち、周囲に気を配る。と、何処からか拍手の音が……
見れば木の上にチンパンジーが一匹。ピシッとスーツのジャケットを羽織り、腹まであるネクタイをしている。が、靴は履いていない。
歯を剥き出しにして、ウキャキャ! と笑いながら上下に手を動かして拍手をし、逆立ちをしたり、木にぶら下がってあっかんべーをしたりしている。周りを見てもそのチンパンジーしか居ない。
「うわぁー、あのサルなんか腹立つ!! 殺していい??」
「まて、俺がやる。」
「私、サルにバカにされたの初めてだわ!!」
皆さん、凄く殺気立ってますが、落ち着いて……って言うまでもなく一斉に飛び出して行きました。訓練したわけでも無いのに見事な連携でサルを追い詰め、フィルの剣先が届いたと思った瞬間、サルが消えた。あれ?
「申し訳ないが、これでも私の可愛いペットなのでね。連れて帰ります。」
突っ立ったままの俺の真後ろで突然声がする。振り向くも、突然すぎて声も出ず、心臓だけがバクバクと動く音が耳に届く。
仮面を付けた男は、先程まで追い詰められていたサルを片手抱きにし、俺を一瞥した後、3人に会釈をしてから消えた。
「タイラ様! お怪我は?」
「何にもされなかった??」
忍者か!? と突っ込みをいれたくなる程軽やかな動きで、シュタッと俺の周りに降り立つと、リベルとノリアスは俺の近くに、フィルは先ほどの仮面の男が居た場所を調べる。
「……多分、移動スキル。」
「そんな便利なスキルがあるの?」
「詳しくは知らない。けど、聞いたことはある。」
「そうか……さっきの仮面の男に心当たりは??」
3人とも首を振る。んーー、まあ、分からんもんは仕方がない。切り替えていこう!!
と、改めて話が出来そうな奴が居ないか、魔物を見る。……残念ながらリベルの鞭が丸い形のまま地面に落ちていた。
………………うん。よし、先に進むか……と、移動を始める。
国境の山に向かい順調にすすむ。目の前に山の一部の岩肌が見える。目的の関所から少しズレてしまったようだ。ここからは山に沿って進む。
暫く進むと、遠くに黒い棒が岩肌にピタリと付くように立っている。そんなに視力が良くない俺は、目を眇め馬の頸を押さえるように前のめりになる。
襟首をグイッとひかれ、首が締まる。
「……タイラ様。危ない。」
いや、注意を受けるのは仕方ないにしても、
「もう少し優しく……。」
「……努力しよう。」
はぁ。年下のキャラクターの方が貫禄があるよ。
「フィルはあの黒い棒見える?」
「棒? 人が持ってる槍の事か??」
「人??」
「あぁ、小柄だが、黒いローブを纏って顔を黒く塗った人が2人、こちらをじっと見ているが……?」
「人なんだね。で、槍持ってる? 関所? では無いんだよね?? で、顔が黒い人がこっち見てるの??」
「見えないのか?」
「黒い太い棒が2本立ってるようにしか見えない。」
「……そうか。で、どうする? これ以上進めば奴らは向かってくるぞ? 森の中を迂回するか?」
「うーん。関所でも無いのに、見張りがいるって事なんだよね? じゃあ、奴隷商のアジトかも知れない。このまま進んでみよう。」
リベルとノリアスも黙って頷くと、牽制の為と、先ほどのサルの時とは別の種類? の殺気を放ちながら進んでいく。
俺の氷魔法より、夏場は涼しいかも知れない……。
読んで頂き、ありがとうございました。




