99. S 、二つ目
100話目!!
2日目。夜営明けに、マリア嬢が作ってくれたスープを飲みながら今日の予定を話す。
『空色の湧水』は今いるところから西に暫く進んだ所、辰の領土との境近くにあるらしい。テッセル様が言うには、物凄くきれいな蒼色の泉だそうだ。
「精霊ってどんな感じなんだろう? やっぱり美人なのかな??」
「精霊様に性別があるんですか??」
「あるでしょ? だって、物語では髪の長い美人が出てくるもん!」
この世界には御神○○と呼ばれる場所が幾つかある。基準は精霊が居るかどうか。そして、その精霊と契約すると精霊は場所と同化し、結界を張る。そして、契約者が認めた者しか通さなくなる。と聞いたことがある。
それと、精霊に気に入られないと、その場所にたどり着けない可能性もあるとか……。そして、これから行く泉も精霊の住む場所。未だに契約者がおらず、結界はない。無事にたどり着けると良いが……
◇◇◇◇
朝食時の心配も杞憂だった……驚く程、いや、呼ばれているかの如くスムーズにたどりついた。
「精霊様。この地の人獣の一人、ディアン・ヘブ・シープスが魔物の毒に犯されております。解毒薬を作る為、湧水を少し分けて下さいませ。」
3人が膝まずき、泉に向かい祈りを捧げる。
「マージでぇ?? あの子、あんなんでもスッゴい強そうだったじゃんねー?」
声を聞き、顔を上げる………がすぐ頭を垂れ、地面を見る。
「精霊様??」
ファジールが泉の上に立つ女性に聞く。
「せっいかーい!! イェーイ、パチパチパチパチぃ~」
「当たったー! イェーイ!! にしても、凄いカッコだねー。」
帝国の女性が好んで着る、ブラウスという白の服に、男性が着る様なジャケット、それに首もとに大きなリボンをつけ、短い布を腰に巻いている……お、おみ足が丸出しである。
「そう? 可愛くね?? 制服って言うんだってぇ。ウチに似合いそうだから着てみた! どう? どう??」
「似合ってるよー!!」
「ありがとー!!」
本当に精霊様なのだろうか……ファジールの友達なのではないのか?? 先ほどから静かなマリア嬢を見れば、理解出来ない者を見るように精霊様を遠い目で見ていた。
「せ、精霊様。して、泉の水は頂けますか?」
「いいよー!! あ、ちょっと待って!! やっぱダメー」
「えー!? 何でー??」
本当に友達か? と思うほどの馴れ馴れしい態度で接するファジール。それに気を悪くするでもない精霊様との掛け合いを黙って聞く。
「そこ!」
精霊様が指を指す先を見ると、人が居た。いつから居たのか、木の陰に隠れ、ユラユラと揺れる度に体半分が見える。
「あの人がどうかしたの?」
「どかして! もーずーっとああやってこっちを覗いてるの! チョーキモイんですけどぉー!!」
「えぇ! ずっと見てるの? ここら辺に住んでる人??」
「はぁ? んなわけないっしょ! あれ、魔物!! あそこからこっちを覗いててキモいから、この泉の水ぶっかけたの。そしたら、動けなくなったみたいで、ずっと揺れてるの! ホント、マジ迷惑!!」
よくよく見れば、ボロボロの服、ボサボサの髪、木に隠れている方の目玉は飛び出し、手足は腐り落ちて、指先などは骨が丸出しになっている。アンデット系の魔物?? こんな所で??
「では、退治して参りますので、少々お待ちを……。」
マリア嬢が立ち上がり、スタスタと魔物の近くまで行くと、剣を抜きスパンッと上から下に振り抜いた。その場にドサッと崩れ落ちると、サアァ……と髪の先から魔素に戻って拡散していく。
「退治終了致しました。」
事務的に精霊様に報告する。
「見てたし!」
精霊様はマリア嬢を頭の天辺から爪先まで見て、
「あんたが勇者? なんとなくここまで呼んでみたけど正解で良かった!!取りあえずお礼言っとく。ありがと。 で、水が欲しいんだっけ? 持ってけば。それで、あの子が良くなるんでしょ??」
あの子とはディアン様の事か……?
「うん。そー! あと、瓶集めたら薬が出来る。」
「薬? もしかして、虹色の秘薬でも作るの??」
「そう! 精霊様知ってるの??」
「昔、私が作り方を教えたからね。そう。ちゃんと伝わるものなのね。」
感心したように、我々を見た後、ディアン様が良くなったら一度泉に来るように! と伝言を残して消えていった。
想像とは大分違う精霊様に圧倒されたが、無事に2つ目の素材を入手した。 次は『雨色の小瓶』だ。場所を確認し、移動を始める。距離的に今日中に着くのは無理だろう。
移動しながら食料になりそうな木の実や果物、川があれば魚を、採って進む。魔物との闘いも、マリア嬢の魔法の訓練を受けた兼ねて指導すれば、きちんと制御出来るようになってきた。
「はいっ! ちょっとストーップ!!!」
先程、魔物と一戦交えた2人が休む、馬車の幌の方から声が聞こえる。何事かと止まってみる。
ちょこちょこと横に来たのは、ハムスターのダン……の中に入ったバリー殿のようだ。
「どうされました? フィル達に何か? それとも、イチカが見つかりましたか??」
「チッチ!!」
短い手を懸命に左右に振る。
「眷属達が、奴隷商のアジトじゃないか? と言ってきた洞窟がこの近くにある。眷属の目を借りて見たが、どうやら子供達だけが集められているようだ。見張りは私が見たときは居なかった。ってことで、確認よろしく!!」
「いや、お待ち下さい! 見に行くのは構いませんが、何処にあるか教えて頂かないと……」
「あ、それはそうだな。すまん。ちょっと待て……」
言われた通りにその場でハムスターを見つめる。と、あらぬ方から声が聞こえた。
「こやつが案内する。すまないが、私は仕事に戻らねばならんのでな……ここから離れる。」
木の上の小さなリスがキュっと鳴くと、付いてこいと言うように振り返りながら先を行く。ダンは? と見れば、仰向けに気持ち良さそうに寝ていた。落ちても困るので懐にしまい、道の悪い森の中を、風魔法で少し浮かせた馬車を操り、先を進むリスを必死に追った。
今回でオマケ込み、100話になりました。
ここまで読んで下さった方、ブクマしてくださった方、誤字・脱字を教えて下さった方、本当にありがとう御座います!!
完結まではもうしばらくかかりそうですが、お付き合い頂けると嬉しいですm(_ _)m




