はじまりのはじまり
ぴ、ぴよ、ぴよ、ぴよ…、
と静かな部屋中に響く音。
残念だが、小鳥のさえずりではない
ぴよ、ぴよ、ぴよ、ぴよ
一向に止まる気配のない音の正体は、
その部屋のベッドの頭元に鎮座している、
ひよこちゃん目覚まし時計であった。
しばらくすると、シワひとつないシーツから、白くか細い手がにゅっと伸びてきたかと思うと
その手が行き着く先はもちろんひよこちゃん目覚まし時計であった
カチッ
時計を止め、さてやっと起きるのかと思いきや
それからもぞもぞとシーツをかぶり直し、
この部屋の主はまた眠りに着いてしまった。
~10分後~
キィ…、ガチャり。
誰かがドアを開けた、誰かと思うとそこに居たのは1匹の毛並みの良い黒猫だった。
彼は器用にドアノブに手をかけ開けたのだった。
部屋に入ってくるなり、彼が目をやった先はもちろん先程のベッドだった。
丸くこんもりと膨れ上がったシーツをみるなり、彼は
『ニャフー…。』
と1つ大きなため息を残し、ベッドの近くの本棚へとてくてく歩いていった。
彼は本棚につくと1冊のとても分厚い本を
ベッドすぐ近くのサイドテーブルへと運んでいった。
次に用意したのはどこから持ってきたかも分からない 木でできたものさし と ガムテープ だった。
こんな物を一体何に使うのかって?
いい質問だね。
お、そうこうしているうちに
できたみたいだよ、
まあ、みてみようか。
彼が作り上げた それ は、
ガムテープの上に木のものさしをのせ、
ものさしの先端の片方には分厚い本を乗せたものだった。とても不安定なバランスだった
なんだこれって?うーん、あ!
身近なもので例えてみると
公園のシーソーだね。
わかったかい?
彼は最終調整をし、
また
『ニャフー…』
と大きなため息をつき、分厚い本の重みで傾いているもうひとつ空いている方のものさし先端に勢いよく飛び乗った。
てこの原理を利用した それ により
分厚い本は勢いよく宙をまった。
着地点はもちろんベッドのど真ん中さ。
窓からは、清々しい程に
太陽の光が差し込んでいた。
気持ちの良い朝だった。