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<会敵>

 教育小隊の最終課程。この時点で全員がそのまま実戦に配備されることは決まっており、実際に戦うことになる場所を教えられるためだけの課程だ。しかし、基地の外に出る以上は実弾をもって出なくてはならず実際に持って外を出歩くというのは初めてだった。。


 「まあそんなに緊張することもないぞ、基地の外はどんな感じか大体わかればいいからな」


 レイチェル中尉はそういって俺たちを率いて歩く。この地域は森林もあるがほとんどが丘陵地帯だ。基地の近くは比較的平地なのだがそれ以外はみんなこんな感じだ。



・・・・・



 「伏せろ!」


 レイチェル中尉の声に全員が反射的に伏せる。


 パパパパパパ


 一定の連続した音とともに付近の地面が土ぼこりを上げながら抉り、一部は側面の装甲を激しく打ち鳴らす。


 「三時の方向、約400m先に敵装甲歩兵!」

 「全員丘の向こうまで登り切れ」


 いち早く敵を見つけたルカの報告が上がると同時にレイチェルの指示が飛ぶ。こちらは斜面にいるため完全にあちらのいい的である。新式のため装甲が厚いので何とかなっているが、旧式であれば完全にやられていただろう。しかし、装甲歩兵の構造上側面の装甲が一番薄い。正面と背面ろは300mまで耐えられるが、側面は500mまでしか耐えられないので危険な状況だ。


 「この距離だと向こうの銃では装甲を貫通はできない。」


 そう言いつつアリアは打ち返す。あちらは12.7㎜のようだがこちらは20㎜の銃だ。一体倒したところで向こうも一旦身を隠す。


 「アリア今だ」

 「わかった」


 アリアの援護で全員が登りきり、丘の向こう側に身を隠せていた俺はこちらの様子を見ようとする敵を牽制しつつ登ってくるようにいう。弾は通らないがミサイルを撃ち込まれたらひとたまりもないのだ。アリアはこちらに振り返り斜面を登り始める。


 ズズッ ガゴン!


 しかし、アリアの装甲歩兵は斜面の砂利に足を取られて膝をつく。それでもなんとか登ろうとするが膝をついた時の衝撃で片足が完全に動かなくなってしまったようだ。


 「ミサイルです」

 「全員援護しろ!」


 ルカがいち早くミサイルを担いでいる敵の姿を見つけるとレイチェルはすぐにそいつに攻撃を集中させる。しかし、アリアは一向に上がってこない。


 「アレックス!アリアを引き上げろ!」

 「了解」


 俺は斜面を下りアリアの横へ行く。


 「大丈夫か」

 「私は大丈夫だ」

 「上から引き上げるぞ」

 「わかった」


 俺は銃から弾を抜き、空砲を装填して鉄の杭を銃口から差し込む。これは斜面を登る際に使うための足場であり、撃ち込んだ杭を足場としてアリアを引き上げる。あとは股下と足の裏を押し上げてやれば頂上にいるレイチェルたちの手が届くはずだ。


 「おいアレックス。ミサイルを担いだのが一人向こう側に隠れている。どこから撃ってくるかわからんぞ、気をつけろ」

 「了解」


 何とか今は援護があるのでどうにかなっているが、ずっとここにいるので狙いを定めなくても大体の位置で撃たれることも十分にある。


 「撃て!」


 レイチェルの声とともに一斉に銃撃が行われる。

 俺が振り返ると、いままさにこちらに対戦車ミサイルが撃ち込まれるところだった。敵の上半身が穴だらけになると同時にミサイルが煙を上げてこちらに向かってくる。俺は何も考えず、ただ反射的にミサイルに拳を突き出した。



・・・・・



 消灯ラッパとともに目を覚ました俺はあたりを見まわした。どうやら基地に戻ってきているようだ。翌朝になって軍医から聞いた話では装甲歩兵は大破したらしいが俺は脳震盪だけで済んだらしい。

 敵は偵察目的程度の小隊だったそうだが、まだ実戦配備されていない教育小隊で俺以外大した被害が出なかったのは運がよかったということだ。


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