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<新式装甲歩兵>

 自己紹介を終え、俺たちは基地の中を案内された。


 「ここにお前たちが乗ることになる機体がある」


 そういわれたのは基地内にある大きな格納庫の前だった。基地の中にあるにもかかわらずフェンスで囲まれている。門のような大きい扉にある通用口を通り格納庫の中へと入ると、俺たちを迷彩が施された巨大な機体がそこにはあった。


 「これが新式の装甲歩兵だ。詳しい話は整備隊の―――」


 整備隊の隊長の話では初めてこの国で装甲歩兵を開発するにあたり、一番重要視されたのは性能ではなく削減が進められている戦車の搭乗員や航空機のパイロットの受け皿になることだったのだという。そのため、今回の新式の機体では機体の性能を第一として開発が行われ、旧式とは比べ物にならないくらい性能が上がっているのだそうだ。具体的にはモーターやバッテリーをさらに高性能なものにしたことによって行動距離やパワーが大幅に上昇して重武装と重装甲を施すことが可能になったのだ。

 武装面では旧式の装甲歩兵は戦車の重機関銃を改造して使用していたがこの新式では20㎜まで口径を上げることができ、装甲は正面装甲が旧式では500mまでの重機関銃に耐えられるということだったが、新式では300mまで耐えられるほどになったという。こうして機体の性能としてはこれまでにないほど向上したが、一つだけ・・・新式を開発するにあたって犠牲にした点がある。それは搭乗員の身長である。

 新式は全高を旧式よりも50㎝低い2.5mになったのだ。これは被弾面積を減少させ、同時に敵に見つかりにくくなるということだが、それを実現するにあたり身長165㎝以下という身長制限が付くことになったのである。


 「・・・。」


 俺は身長制限の話を聞いてここに推薦された理由を察した。確かに飛行兵学校の同期の中でも背は低く、ギリギリ搭乗可能な身長なのだ。それにここに来たほかの五人も身長が低いとは思っていたがそういう理由だったのだ。それもこれも14歳で入学し、身長が伸びると思われていたのに伸びなかったのが原因だ。それにしても好調が変に気を使ってこのことを言わなかったのだろうが、どうせならあの時言ってもらいたかった。変に気を使われることほど逆に傷つくことはないのだ。

  そして、その後も午前中いっぱい整備兵から歩兵装備と同じミサイルを使っているが4発入る装甲歩兵用ランチャーについての説明を受けたり、無反動砲や迫撃砲についての説明を受けたりすることになった。



・・・・・



 ひとしきりの説明を受けた後、俺たち六人は兵舎へと連れていかれた。丸々一棟が俺たちに割り当てられ、そのすべてが個室という豪華なものである。

 ・・・。

 それにしても、これといってすることがない。来たばかりで部屋には物がないうえに、防諜の観点から予習することができる資料すら渡してもらえないのだ。


 コンコン


 「アリアだ。入っていいか」

 「どうぞ」


 いったい何だろう。俺がそんなことを思いつつドアから入ってくるアリアを見る。


 「お前に言っておくことがある」

 「え?」


 いきなりのことに困惑するが、顔から察するにいいことではなさそうだ。


 「空軍ではどうだったか知らんが、ここでは私が先任を務めさせてもらおう」

 「そ、そうか」


 俺とアリアは同じ階級のため階級上では上下関係はない。本来こういった場合は先にその階級に上がった方を上として扱うことになるが、同じ日にここに配属され階級も上がったためそういったものもないはずなのだ。


 「はっきり言っておくが、お前よりも私のほうが優秀だ。いずれは私が小隊を率いることになるだろう」


 そういうとアリアは部屋を出ていった。俺はその背中を見ながら思考を巡らせていた。つまりこれはアリアからの宣戦布告だ。この規模だと教育を受けた隊をそのまま部隊として実戦配備にするのだろう。そういったことを考えれば成績が重要になってくるのは間違いない。

 だが、俺はそこまで気にしてはいない。もともと空軍だった俺がもとから陸軍にいる兵士に陸軍の分野で負けても・・・別に、というのが本音なのだ。とはいっても相手からライバル認定されたのは間違いない。厄介なことにならないように祈りつつその日は眠りについた。


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