<入隊>
俺は空軍の飛行兵学校の生徒だった・・・だったのである。
俺が初めて空に憧れたのは小学校の時のことだ。空を飛ぶ鳥のように自分も空を飛んでみたいという何とも子供らしい単純な理由だった。しかし、それからは空を見るたびに俺の好奇心は掻き立てられた。雲一つない青い空、白く輝きはっきりと輪郭の見える雲、どこまでの伸びていく飛行機雲。俺は空にあるすべてに惹きつけられた。そして、そんな俺が空軍を目指したもの空を見ているときのことだった。
今の戦争もすでに三年目になっているが、それは俺が中学生の時にしていた前の戦争の時のことだ。俺の国、「ウイング」の北には「ジーナ王国」と「アタセン民主主義国」がある。二つの国とはYを右に倒したような形の川で区切られており、西の一本の川で「ジーナ王国」と国境が接していて、二股に分かれた東のところからは「アタセン民主主義国」との国境になっている。
この時の戦争は「ウイング」と「ジーナ王国」の戦争であり、国境の接する西側のみで戦争が行われた。そして、俺はこの時の戦争の時に空を我が物顔で飛び回る敵の戦闘機を次々と撃墜していく空軍の戦闘機を見たのだ。この戦いを見た俺は一気に空軍というものに惹かれることになった。
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しかし、そんな俺も今では陸軍の人間であり、装甲歩兵としての教育を受けるために「アタセン民主主義国」にあるゼンセン陸軍基地へと派遣されていた。ことの始まりは俺が空軍飛行学校を卒業した時のことだ。校長が俺を陸軍の装甲歩兵教育課程に推薦したのだ。校長からは俺以外に推薦を出せるものがいないということで頭を下げられたが、卒業してやっと飛行兵となれると思ったらこれである。しかし、俺に選択肢があるわけもなかった。俺はただその話を受け入れ、今に至るのである。
「よーし、全員揃ってるな」
俺がほかの女性兵士と待たされている部屋に入ってきたのは、中尉の階級章をつけた女性である。空軍を去ることになった時に陸軍の知識として階級章を覚えさせられたのだ。
「今回お前たちの教官となった中尉のレイチェルだ。とりあえずそれぞれ自己紹介をしてもらおうか」
俺と中尉を除いて、この部屋にいるのは俺と同じくらいの女の子五人だ。一人は俺と同じ准尉の階級章をつけていて、ほかの四人は曹長の階級章をつけている。陸軍から階級章をもらった時に聞いた話としては一人で装甲歩兵を動かすことになる以上、その搭乗員の階級は尉官以上の階級を持つものと陸軍の方で決められているのだという。そのため、俺は教育課程が終わった後は少尉になって実戦に配備されるそうだ。
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六人分の自己紹介はすぐに終わった。俺のほか、それぞれアリア・ルカ・シルヴィア・ティノ・ティカという名前だ。どうやら俺と同じ准尉の階級章をつけていたのはアリアといって陸軍の戦車学校から俺と同じようにここに来たらしい。そしてその他の四人は陸軍に入隊と同時にここに配属されたとのことで、ティノとティカに至っては双子でここに配属されたとのことだった。