<総力戦>
「少なくとも500体以上の装甲歩兵が向かってくると予想されている。」
それがレイチェル中尉から与えられた情報だった。敵の大規模侵攻計画、それを察知した陸軍上層部はこの基地に増援を派遣し、大規模な装甲歩兵部隊でそれに対抗することになったのだ。
「少なくともそれだけの部隊を動かすとなると夜になるだろうな。全員夜間戦闘の復習はしておけ」
それから数日中に味方の戦力が整った。旧式100体、新式35体という数で500体を相手にするには少なすぎる数だ。そもそも、新式は各基地や駐屯地に一小隊、旧式は新式の登場によって数を減らしている状態なのだ。これ以上の増援が望めない以上はこれでやるしかない。
こうして旧式が10小隊と新式が5小隊の部隊で作戦を行うことになり、俺たちの小隊はだい第十一小隊と改称されて作戦に当たることになった。
・・・・・
そして・・・。
「敵はホウクブ丘陵を南進しつつあり」
敵の侵攻は激しい雨が降りしきる夜中に始まった。索敵に引っかかった敵を迎え撃つため、俺達第十一小隊は敵の強さ確かめるため先行して出撃した。
「視界が悪いからな、足元と周囲の状況に注意しろ」
「「了解」」
情報によれば「ジーナ王国」では新しい装甲歩兵の開発が上手くいっておらず、今回侵攻に参加しているのは開戦当初から使われてきた旧式なのだそうだ。一応何度も改修が行なわれて性能を向上させているとみられるが、こちらだって旧式も新式も常に改修を行っているので性能面で負けるようなことはないだろう。
しかし、最大の問題はこの豪雨である。 ガルシア准尉曰く、「天気は敵でも味方でもないただ中立なだけだ」とのことだが、それは生身の人間だけの理論だと俺は思う。いくら敵より重装甲・重武装の装甲歩兵とはいえ、距離によってはこちらにも被害が出る。この豪雨では敵を見つけにくくなり、今までよりも近いところで戦闘になる可能性もあるのだ。そうなれば性能面で一方的な戦闘を行なえていたこちらが不利な状況になることもあり、今回ばかりは天気を敵だとしか思えないのだ。
「A4地点で敵の攻撃を受けた。増援を求める」
「クソ、回り込んだか。すぐに戻るぞ」
「「了解」」
俺がそんなことを考えていると、突如として味方の無線が入り込んできた。どうやら敵は回り込んで基地に向かっていたようで本隊が先に戦闘に入ったようだ。俺たち七人はすぐに引き返して敵の出た地域へと向かう
・・・・・
薄暗がりの中、閃光がいたるところで瞬く。
ドッドッドッ!
俺はすかさず光ったところへ弾を撃ち込む。周囲にはたくさんの残骸が築かれており、その中には敵だけではなく味方の装甲歩兵も新旧ともに紛れている。
「アレックス大丈夫か」
「大丈夫だ」
アリアからの無線が入る。実は敵のミサイルが小隊のど真ん中に撃ち込まれたときに俺一人だけはぐれてしまったのだ。幸いミサイルはレイチェルが残骸を投げつけるという離れ業をやってのけてくれたおかげで全員無事だったが、いまだに合流できない。
「全員よく聞け、もうこのあたりには味方はいない。このまま南へ撤退する」
「「了解」」
「いいか、アレックスも全員曳光弾を使え」
俺はレイチェルの命令を受けて弾倉を付け替える。
これはガルシア准尉から提案された同士討ちを避けるための行動だ。曳光弾は弾の後ろが光る構造のため、今南の空に向かって撃てばレイチェルたちに自分の位置を伝えることができるし、たとえ同士討ちになったとしても頭の上を通り過ぎる弾を振り返ってみれば見方がどうかわかるのだという。
歩兵を長年やってきた人間はやはり違うなと思ったが、そもそもそんなもの使わなくても発砲音でわかると返されてしまい、しみじみ自分の経験のなさを自覚させられた。
「っ!」
ドドドン
発砲音とともに俺の真上を弾がかすめていく。さすがに重機関銃と同じ口径しかないとはいえ、この近さで被弾すれば無事では済まない。
ドカーン!ズガーン!
敵は手当たり次第に俺のいるあたりへミサイルを撃ち込んでくる。俺の近くにある装甲歩兵が爆発ととも吹っ飛んで土と一緒に俺の真上にガラガラと落ちる。レイチェルたちの無線が入るが、それが聞こえないぐらい攻撃が激しい。俺はなんといっているか聞こえないまま、レイチェルたちに問題ないと伝えるが、正面だけでなく側面からも攻撃が始まる。
「さすがにこれはまずいな。」




