<協同作戦>
協同隊初めての作戦は敵の国との国境付近に賭けられた橋を破壊することだった。数日前に別の隊が戦車とともに敵の要塞を破壊したたが、少なくともそれだけの要塞を作るための資材を運んだ橋があると推測されたのだ。
もともとこのあたりの地形はYを右に倒したような川が流れているため、このあたりは中洲のような場所に当たる。そのため、ここに資材を運ぶためには必ず川を越えなくてはならないため、これを破壊すれば一部の部隊は川を渡れても資材や物資を一時的に断てると判断したのだ。
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下流から回り込んだガルシア准尉は敵のかけた橋を見ていた。周囲には装甲歩兵を警戒してかマイクが仕掛けられており、装甲歩兵でここを偵察させなくて成功だったようだ。あとはデータを離れたところにいる味方に伝えるだけなのだが、問題はここからだ。橋を破壊することは自体は大して難しくはない、歩兵が見つけて装甲歩兵の奴らが敵から見えない位置から攻撃するだけだ。
だが、破壊した後逃げ切るのが問題なのだ。見つからないために戦車や車両を使わないで来ているのだが歩兵の移動速度は限られる。そのための装甲歩兵でもあるのだが、足の遅い普通の歩兵がいるうえに、追ってくる相手を振り切るというのも楽ではない。
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橋の破壊から二十分後。俺は弾の飛び交う中、敵に向かって銃を撃っていた。橋の防衛に当たっていた敵の兵士や装甲歩兵や追撃してきたのだ。敵の数を減らすことには成功しているが、敵の領土に近いこの場所に居続けるのもいいとは言えない。アレックスはそう考えるとレイチェルに無線で話しかける。
「いつまで持ちこたえればいいんですか」
「もうしばらくしたら応戦しながら後退する」
今回の作戦では俺たち装甲歩兵と橋の偵察に出る歩兵部隊、偵察に出た部隊と合流して撤退する歩兵部隊の三つに分かれた。すでに歩兵の撤退は始まっていて、俺たちはここで足止めして歩兵を逃がすことが目的だ。
「11時方向!」
アリアが叫ぶと同時にミサイルを担いでいる敵装甲歩兵を蜂の巣にする。口径と装甲はこちらの方が上であり、敵のミサイルに警戒するだけでいい。前は不安しか感じなかった弾をはじく音も今では頼もしくさえ感じる。
「迫撃砲撃ちます」
ルカとシルヴィアが迫撃砲を敵のいるところへ撃ち込んでいく。
「アレックス右側面を警戒しろ」
「了解」
その後、敵の攻撃は次第に弱まり撤退していった。こちらの被害は0、敵装甲歩兵を8体撃破した。銃や可動部に不具合が生じたがこちらの人的被害はなく、協同隊初の作戦は成功に終わった。
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作戦があった日の夜、俺は格納庫で修理後の調整を行っていた。すでに消灯時間を過ぎているが、入り口には立哨が警備に当たっている。
「だ、誰だ!」
「陸軍協同隊分隊長のガルシア准尉だ。もう少し楽にしろ、撃たれたらたまらん」
外で行われているやり取りが格納庫の開け放たれた通用口から聞こえてくる。
「よう」
「え?その恰好は」
ガルシアは完全武装のまま、昼間と同じ格好のままそこに立っていた。
「今帰ったんだ」
「はい?」
どうやらあの時、偵察に出たのはガルシアだけで合流せずにほとぼりが冷めるまで隠れていたのだという。確かに、予想では歩兵部隊も追いつかれるような危険な撤退になると考えられていたが、合流後の撤退が早いとは思ったがそういった理由だったのだ。
その後、今日のことをガルシアに話すと「そうか、ありがとう」といって格納庫を後にしたが、いつの日か聞いた生身の装甲歩兵もあながち適当なことを言ってるわけでもないのだろう。
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それから俺たち協同隊は様々な作戦に投入されていった。同じような破壊工作や要塞への威力偵察、国境際にパトロールに出て敵の動きを偵察することもあったが、いずれもこちらに大した被害が出ることもなく作戦を成功させることもできてきている。
そして今更ながらではあるがガルシア准尉の、というよりは軍隊で長年生きてきた人間のすごさというものを理解することができた。ガルシア准尉のような歩兵は軍隊にいた年数をやたらと気にするが、長く軍隊にいるというのはそれだけ生き抜いてきた証拠なのだ。戦闘でも軍隊の中でも生きることに長け、本当の実力者であるのだ。
しかしそんなことを理解したのもつかの間、ほどなくして協同隊は一時解散となった。もはや協同隊ではどうすることもできない事態に対処することになったからだ。




