<階級>
俺が少尉となってすでに数か月が経っていた。
俺たち六人を最初として行われるようになった装甲歩兵の教育は俺たちの成功を見て本国各地で行われるようになり、現在では八十ほどの小隊を編成するまでになっていた。これでも旧式の装甲歩兵と比べて半分もいかない規模ではあるが、全体としてみれば機体性能の差から新式は旧式を上回ると評価されている。
また、その八十ある小隊の中で俺たちの小隊はすこぶる成績がいい。それは教官であったレイチェル中尉の教え方がいいからなのだが、なんでもレイチェル中尉はもともとテストパイロットであり旧式と新式の両方に開発段階から関わっていたというのだ。一方でほかの小隊は教官も覚えながら教育していくというスタイルであり、どうしても俺たちのようにうまく教育が進まないのだそうだ。
・・・・・
その日は前日にほかの基地の小隊と模擬戦があったことから特別に休みとなっていた。しかし、俺はジュウゴの町にある守備隊から書類を受け取ってきてほしいといわれ、公用と書かれた腕章をつけて町に繰り出していた。
休日とは違いほかの軍人の姿はほとんど見られない、憲兵や守備隊の人間が巡回しているぐらいだ。そして俺は守備隊で書類を受け取るとある店に足を延ばした。そこは町では一番大きなレストランで持ち帰りもできる。めったにない公用外出で俺は女子軍団から町で売っているお菓子を買ってくるように頼まれていたのだ。
俺はしばらく店の中で待つことになったが昼前ということもあり店にはそれほどの客はいなかった。ほかの兵科の兵士が同じく公用と書かれた腕章をして酒を飲んでいるが、こういった時に口を出すのはただの野暮だ。しかし・・・。
「おい、おいそこの!」
俺はいきなり肩を掴まれた。相手は先ほどの席で酒を飲んでいた兵士たちである。
「てめえみたいなのがいっちょ前に少尉なんかになりやがって」
「なんだお前は」
俺たち装甲歩兵はほかの兵科からあまり好意的に見られていないのは知っているが、さすがにこれは黙っていられるものではない。俺も立ち上がって相手の手首を掴むが多勢に無勢、ましてや実際に生身で戦争している相手に勝てるとも思えない。
「何をしている!」
その声に俺や相手の兵士たちだけでなく、俺たちを見ていた店の中にいた全員が注目する。憲兵ではない、町の守備隊の兵士ようだ。その兵士は身長180㎝ほどあり兵長の階級章をつけている。その後、兵長は店に金を払わせて俺に絡んでいた兵士を返した。
「少尉殿大丈夫でしたか?」
「ああ、問題ない」
「少尉殿、兵士たちの中にはあなたたちの階級に不満を持つものたちもいるので言動には注意してください」
まるで俺が悪かったかのような言い方だが助けられた手前文句も言えない。実際装甲歩兵に搭乗するというだけで士官になったわけであり、兵長によればそれに対する反発が多いのだという。とはいってもすべて陸軍の制度のせいである。戦車という既存兵器の削減や装甲歩兵という新兵器の登場などに右往左往し、政治家によって軍上層部が更迭されたことも影響しているのだ。そして、俺は不機嫌になりながら品物を受け取って基地に戻ったのである。




