<プロローグ>
晴れ渡った空の下で数えきれないほどの銃声が響く。清々しい天気の下では、基地を守る数百人の人間の集団と原野に散らばった迷彩が施された人型のロボットによる戦闘が行われていた。
「おい、軍曹!なんなんだあれは!」
塹壕の中、銃声に負けないほど大きな声で一人の曹長が軍曹に大声で聞く。
「あれが敵の装甲歩兵です!曹長!」
「ああ、あれか!『歩兵万能論』だの『戦車不要論』だので開発された人型兵器ってのは!」
「そうです!」
時おり敵からの迫撃砲や無反動砲によって土の雨が降り、銃弾も頭上を飛んでいく。しかし、曹長にとっては慣れたことのように塹壕から顔を出す。そんな姿を見てひとりの若い憲兵が叫ぶ。
「危ないです!やつら全員重機関銃持ってますよ!」
「大丈夫だ!・・・まったく、工兵どころか憲兵まで実戦に出さなにゃならねえとはな」
こちらの小銃はもちろんのこと重機関銃まで弾かれる。戦車はすでに全滅したし、対戦車ミサイルや無反動砲を担いで姿を現せば蜂の巣どころかミンチである。爆発とともにこちらの重機関銃陣地が爆散する。曹長は引き付けるまで撃つなと命令を出して重機関銃を温存させるが、敵は攻撃目標を建物に変えただけで攻撃は激しくなるばかりだ。しかしこちらの攻撃は通らない距離なのでなすすべがない。そんな状況を見た曹長は再び塹壕の中へと戻り、つぶやく。
「なんで今頃、俺が生きてる時に戦争のやり方を変えるんだ」
・・・・・
著しい戦争技術の進歩は対戦車ミサイルや対空ミサイルを高性能化させ、どのような人間でも最新鋭の戦車や航空機を一撃で撃破することを可能にした。これは新たに『歩兵万能論』というものを生み出すほどのものになり、同時に『戦車不要論』の再燃や『航空機不要論』まで出ることになった。
これは、それぞれの兵器の性能を見れば容易に納得することができる。対戦車ミサイルは発射後に自動で戦車の種類を識別、ある程度の距離で上昇して車長席ハッチへ直撃。対空ミサイルはフレアやチャフ、デコイや電子妨害に惑わされることなく航空機を追い詰めるのだ。
また、それだけではない。対戦車対空二つのミサイルはそれぞれネットワークでつながれており、誰かが敵を探知すれば敵が見えない位置からでも攻撃することができるのだ。これは味方の歩兵が戦車を見つけただけでも、その位置情報をもとに対戦車ミサイルが誘導され敵戦車を撃破することが可能であり、対空ミサイルも本土や基地の対空レーダー、早期警戒機で探知した航空機などをまだ見つけていない歩兵が撃破することができるのだ。これの最大のメリットは、敵の一番近くにいる歩兵が敵に見つからずに攻撃できるということで、そもそも隠れていく歩兵を戦車や航空機から発見することは非常に難しい。
こういったこともあり一両数億円、一機数十億円という兵器がそれよりもはるかに安い兵器で撃破されるということになってしまった。また、これにその兵士の育成というものを考えれば金額以上に被害は大きい。徹底的に教育をした兵士が新兵にさえ負けてしまうのだ。政治家たちはこの事態を重く見て、『戦車不要論』や『航空機不要論』に反対する軍人たちを更迭し、押し切られる形で『歩兵万能論』に基づいた戦争が行われることになったのである。
しかし、この『歩兵万能論』には大きな欠点があった。歩兵というのは結局のところ人間なのだ。増加した歩兵装備による行軍距離の減少や車両一台に搭乗できる人数の減少を輸送車両によって補完できたとしても、装備が増えた以上同じようなことをできるわけがなかったのだ。それどころか、対戦車ミサイルや対空ミサイルといった装備の分、対歩兵戦闘の能力が落ちることにつながりすべての戦闘を行うことはできるが、どれも中途半端な戦闘しかできないという事態に陥ったのである。
そこで歩兵の負担軽減と装備の携行増加を目的としてある兵器の開発が行われることになった。幸い失敗を認めたくない政治家たちによって予算が多く確保され、装甲歩兵というというものが誕生したのである。これにより歩兵と同じように戦闘をすることが可能になり、迫撃砲や無反動砲なども搭載することができるようにもなった。装甲歩兵はまさに『歩兵万能論』完璧にこなす存在であり、新時代の兵器として登場したのだ。
もともとは月一で投稿しようと思っていたのですが、パソコンの調子がおかしい時もあり、データが消えたらという恐怖から出来次第投稿していこうと考えを改めました。また、書き溜めていても類似の作品が先に出た場合、まだ投稿していない自分が対応せざる負えずそうなる前に出しておこうという考えもあります。
そういった事情もあり、誤字や文章の確認がおろそかになっているとは思いますがご了承ください。